[スポンサーリンク]

ケムステニュース

人の鼻の細菌が抗菌作用がある化合物をつくっていたーMRSAに効果

[スポンサーリンク]

人の鼻の中にいる細菌が作り出す化合物に既存の抗生物質が効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌作用があることを独チュービンゲン大のチームが発見した。新たな抗生物質として利用できる可能性があるという。英科学誌ネイチャーに28日発表する(引用:朝日新聞 2016年7月28日)。

 

面白いニュースです。抗生物質(抗菌剤)はペニシリンなどに代表されるように通常土壌や海などの微生物が産生する物質です。

ところが、今回の研究によってなんと「人の鼻にいる細菌が抗菌作用のある化合物を作っていた」とのこと。ええー!灯台下暗しですか。

発見したのはドイツのチュービンゲン大Andreas Peschel教授らの研究チーム。

Peschel_Andreas

Andreas Peschel教授

研究チームが、「黄色ブドウ球菌が鼻のなかに常在する人は全体の3割で、7割の人には存在しないのはなぜか?」ということについて調査していたところからの発見だそうです。その過程で鼻の中にあるブドウ球菌属の細菌(S. lugdunensis)を調べたところ、黄色ブドウ球菌を寄せ付けない効果のある化合物を生産していたとのこと。

その化合物は、細菌の名前からLugduninと名付けられました。化合物は比較的単純な環状オリゴペプチドであり、1つのL-トリプトファン、D-ロイシン、L-バリン、2つのDバリンとチアゾリジンから構成されています。

 

2016-07-28_10-14-01

鼻の細菌から単離された化合物Lugduninと抗菌効果

 

人には1000種類以上の細菌がいるといわれています。今後このような抗菌剤が人体から単離されることがあるのでしょうか。

 

関連文献

Zipperer, A.; Konnerth, M. C.; Laux, C.; Berscheid, A.; Janek, D.; Weidenmaier, C.; Burian, M.; Schilling, N. A.; Slavetinsky, C.; Marschal, M.; Willmann, M.; Kalbacher, H.; Schittek, B.; Brötz-Oesterhelt, H.; Grond, S.; Peschel, A.; Krismer, B.;Nature 2016, 535, 511. DOI: 10.1038/nature18634

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4860921224″ locale=”JP” title=”抗菌薬パーフェクトガイド: ~基礎から臨床まで~”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. L・スターンバック氏死去 精神安定剤開発者
  2. エーザイ、抗てんかん剤「イノベロン」、ドイツなどで発売を開始
  3. 世界初 もみ殻からLEDを開発!~オレンジ色に発光するシリコン量…
  4. 5歳児の唾液でイグ・ノーベル化学賞=日本人、13年連続
  5. 米メルク、業績低迷長期化へ
  6. 光で分子の結合状態を変えることに成功
  7. 超合金粉末の製造方法の改善に機械学習が試行される
  8. COX2阻害薬 リウマチ鎮痛薬に副作用

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第41回―「クロム錯体のユニークな触媒活性と反応性を解明する」Klaus Theopold教授
  2. 界面活性剤のWEB検索サービスがスタート
  3. マクコーマック反応 McCormack Reaction
  4. フロインターベルク・シェーンベルク チオフェノール合成 Freunderberg-Schonberg Thiophenol Synthesis
  5. 炭素ボールに穴、水素入れ閉じ込め 「分子手術」成功
  6. DFMS:ビス(ジフルオロメチルスルホニル)亜鉛
  7. 私がケムステスタッフになったワケ(3)
  8. ラリー・オーヴァーマン Larry E. Overman
  9. 個性あふれるTOC大集合!
  10. 細胞集め増やす化合物…京大化学研発見、再生医療活用に期待

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年7月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法

第643回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の木之下 拓海(きのした …

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー