三星化学工業(東京)の福井工場(福井市)で複数の従業員らが膀胱がんを発症した問題で、厚生労働省は1日、発がん性物質「オルト―トルイジン」を取り扱っていたとされる76事業所のうち、9事業所で計20人が膀胱がんを発症していたとする調査結果を発表した。 (引用:読売新聞6月2日)
厚生労働省の調査結果を確認したところ、作業者は、防毒マスクと耐薬品製のゴム手袋を装備していても、尿中からオルト-トルイジンが検出されている一方で、手袋を二重にして作業にした作業者からはオルト-トルイジンが検出されなかったことから短期間、少量の皮膚接触でもオルト-トルイジンが吸収されている可能性あります。
膀胱がんを発症しているのは工場での作業員の方々ですが、研究室で使っている場合にも、他人事だと思わずに対策を講じるべきです。
オルト-トルイジン誘導体を使わないことが最も安全な対策ですが、やむおえず使わなければならない場合には、使い捨てのニトリル手袋の上に厚手のゴム手袋を使用し、作業後はしっかりと手首を洗うことが必要があると考えられます。さらに、溶液が白衣などについてしまった場合にはすぐに着替え、汚染された服は、専門のクリーニング業者にオルト-トルイジンが付着していることを伝えた上でクリーニングを依頼すべきだと考えられます。
さらに汚染されている可能性があるすべての場所を掃除する際にも実験中と同じ保護器具をつけて掃除をする必要があると言えます。
オルト-トルイジンについては、以前にもケムステニュースで紹介しましたのでそちらも御覧ください。
関連リンク
- 災害調査報告書: 労働安全衛生総合研究所による膀胱がんに関する災害調査
- 化学工場における膀胱がん発症に係る調査結果:厚生労働省による調査結果のまとめ