今日は点滴について書こうと思います。
薬の名前は「ラジカット」。
ALSの病気の進行を遅らせる効果があると言われています。
残念ながら病気を治す薬ではありません。昨年の7月に日本で使用認可がおりました。
私は早速、7月2日から投与を開始しました。岐阜県第一号かも知れません (引用:Blogos 2016年2月3日)。
ふらっと医薬系のニュースをみていたら、聞いたことがある薬が出ていました。Blogosは個人ブロガーが情報を発信しているウェブサイトなのでニュース性は低いですが、なかなかおもしろい記事が掲載されています。
上記の引用はサッカー「FC岐阜」の恩田聖敬全社長の記事から。
夢の扉+で放送されていたので知っている方はいると思いますが、2年前にFC岐阜の社長になったとたん、ALS(筋委縮性側索硬化症)を発症され、現在では療養中であるとのこと。個人的にこの番組が好きで丁度みていたことと、たまたまみつけた記事が恩田さんの記事かつ、知っている医薬品の名前があったので記事にした次第です(化学者のつぶやきの方はおかげさまで公開待ち記事が一杯なのも1つの理由)
ALSとはどんな病気?
さて、ALSについては最近多くの報道がされているのでご存じの方が多いと思いますが、以下の様な病気。
筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、英語:amyotrophic lateral sclerosis、略称:ALS)は、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、運動ニューロン病の一種。極めて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡する(人工呼吸器の装着による延命は可能)。治癒のための有効な治療法は現在確立されていない。治療薬としては1999年から「リルゾール」がALS治療薬として日本では保険収載されている。
2015年6月、急性脳梗塞などの治療薬として使われてきたエダラボン(商品名:ラジカット)が「筋萎縮性側索硬化症における機能障害の進行抑制」として効能・効果の承認をうけた。
MLBの国民的人気選手であったルー・ゲーリッグ(1941年に死亡)がこの病気に罹患したことから別名「ルー・ゲーリッグ病 (Lou Gehrig’s disease) 」とも呼ばれ、彼の死後に公開された映画『打撃王』(原題:The Pride of the Yankees)などによって、主にアメリカ合衆国で一気に知られるようになった。ゲーリッグの死は「Chronic traumatic encephalomyopathy 」(CTEM)という頭部外傷による別の疾患であったとの説も唱えられているが、こうした説に対してもCTEMは特殊な状態の組み合わせでしか発症しない極めて稀な病気であるためにその可能性は低いという反論がされている。この病気は2014年のアイス・バケツ・チャレンジの広まりによって再注目されることになった。
ICD-10ではG12.21。日本国内では1974年に特定疾患に認定された指定難病である。
1年間に人口10万人当たり1〜2人程度が発症する。好発年齢は40代から60代で、男性が女性の2倍ほどを占める(引用:Wikipedia)。
この記事を書いている恩田さんもたった一年で声が出せない、車椅子生活になってしまったのです。では、記事中にあるALSのお薬「ラジカット」とはなんでしょう?
古くて新しいお薬「ラジカット」
「ラジカット」(一般名:エダラボン)はALSの薬としては、昨年7月に承認された新薬です。記事にもありますが、治療薬でなく進行を遅らせる薬です。「ALSの薬としては」と限定したのは、既にかなり前から「脳細胞を保護する薬」として承認され販売されているものだからです。
エダラボンの開発は三菱化学(現在の田辺三菱製薬)。2001年に承認・認可されました。しかし2011年に特許も切れ、多くの後発医薬品も出現しています。作用機序は抗酸化剤。脳の血流が少なくなると生成されるフリーラジカルを補足しています。
細かい作用機構は次のとおり。エダラボンから生理的条件下でカルボニルのα位のプロトンが引きぬかれ、エダラボンアニオンが生成します。それががフリーラジカル(XOO・)と反応し、エダラボンラジカルとなりますが、これは共鳴構造を書けるため安定です。つまりラジカル捕捉剤(ラジカルスカベンジャー)として働きます。その後、酸素と反応して、4,5-ジオンさらに水による加水分解によりOPB(2-oxo-3-( phenylhydrazono) -butanoic acid)になります。
ラジカル(radical)をカット(cut)でラジカット(radicat)。この直感的な医薬品名からも日本の代表するお薬のひとつとなっています。今回ALSにこの古くて新しい薬が適用されたのも、ALSの発症原因の一つとして、フリーラジカルによる酸化ストレス傷害が考えられているからです。
他のブログのALS患者はラジカットについて次のように述べています。
ALS患者にとって、ラジカットの出現は
「溺れているところに投げ込まれた、一束の藁」
のようなものです。治療の選択肢がほとんどないALS患者にとっては、まさに「藁をも掴む」心境で投与をする方が多いと思いますが、最低限の知識と、効用の限界を把握しておく必要があるかと思います。
患者もがんなどの主要な疾病に比べると非常に少なく、未だ効果的な治療薬が少ないALS。こういうところに大学での基礎研究や、国の研究費支援が必要なところだと思います。
関連書籍
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