切手には、郵便サービスとの交換価値のほかに、見逃せない価値がある。美術的価値、そして歴史の鏡としての価値である。切手は何かを記念したり人物を顕彰したりと、機をとらえてはたくさん発行されてきたことで、年代に沿って並べれば立派な歴史絵巻になる▼実は、化学は切手と縁が深い。元素記号、構造式、化学式、分子模型、実験装置、プラント、有名化学者などを配した化学ものがとても多い▼化学式が初めて登場した切手は、アルコール専売制度10周年記念として1948年に発行されたもの。切手中央にアルコールの蒸留塔とC2H5OHの化学式、左右には原料となるサツマイモの葉を配している▼メンデレーエフやキュリー夫人、ケクレ、ハーバーなどビッグネームはもちろん、アラビア人の錬金術師たちも図柄になっている。最近では2011年の世界化学年に、20カ国以上から記念切手が発行された▼化学と切手の深い関係はこれだけではない。それは、切手の材料として使われた化学素材の多様性だ。東ドイツでは1963年にナイロン製の切手が登場した。他にアメリカ、フィンランドでPET、オーストリアでポリウレタン、ブータンでPVCなど変わり種は数多い▼これら化学切手、総まとめで復刻してくれたら、マニア垂涎の的になるだろう。(引用:化学工業日報 2015年2月18日)
タイトル通り本当に縁が深いかはわかりませんが、確かに多くの化学に関連する切手が今日までに発行されています。トップの図はベンゼンの構造の提唱者ケクレとベンゼンを描いた切手。1979年、彼の生誕150周年を記念して発行されました[1]。検索してみるとなかなかユニークな「化学切手」が公開されていましたので、少しだけ紹介させていただきたいと思います。
構造がおかしい!
この切手は、1947年のノーベル生理学・医学賞を受賞したゲルティー・コリとコリエステルと呼ばれる、グルコース-1-リン酸を描いた41セント切手[2]。2008年に彼女の業績を記念して作られたものですが、よくみるとちょっとおかしい。リン酸部分のOがPO3のOとつながっていることとなっています。化学に関係なければわからない細かい話ですが、かなり重要ですよね。ちなみに構造式をイラストに起こしてもらうとよくある話なので、仕方がないかもしれませんが、化学者にとっては構造式は正確かつ綺麗に書くことが重要です。
金属イオン内包フラーレン?
この切手は、ノーベル賞100周年を記念して発行された切手の1枚。ノーベル賞を受賞した分子、フラーレンを描いた切手ですが、まあノーベル賞の記念切手ならば一見普通ですよね。ただ、普通で終わらないのがこの切手のすごいところ。フラーレンの部分を指であたためると、なんと中に丸いものが(図右)。そう、金属内包フラーレンになるのです。とってもマニアックですがなかなかおもしろい工夫を凝らした切手ですね。
化学的手紙の出し方
化学者ならば化学的封筒にすべて化学切手を貼って手紙をだしたいところですよね!?上の画像は1977年に英国の王立化学会(Royal Society of Chemistry) の前身であるRoyal Institute of Chemistry設立100周年を祝って発行された4枚の切手と封筒です[3]。 切手はイギリスで中心になって研究が行われた4つの化学研究を表しています。左から、ステロイド(配座解析)、ビタミンC(合成)、でんぷん(クロマトグラフィー)、NaCl(結晶構造)をモチーフにしてデザインされた切手です。全部つかって、酢酸をイメージした封筒にいれて手紙を出したらあなたも真の化学者になれる??
以上、たった3点だけですが、工夫された化学切手に関するトピックを紹介させていただきました。検索すれば山ほど出てくるので、化学マニアの方はぜひ本物を集めてみては?
画像出典
- August Kekulé-wikipedia
- STAMP COLLECTING NEWS
- GB Stamps 1977-03-02 Chemistry Royal Institute London WC FDC (41605) – SG1029/32