[スポンサーリンク]

ケムステニュース

新規作用機序の不眠症治療薬ベルソムラを発売-MSD

[スポンサーリンク]

MSD株式会社は11月26日、新規作用機序の不眠症治療薬「(R)錠15mg/20mg」(一般名:スボレキサント)を世界に先駆けて発売したと発表した。

日本の成人3人のうち1人が「寝つきが悪い」「睡眠中に何度も目が覚める」「朝早くに目が覚める」など何らかの不眠症状に悩んでいると言われ、MSDが最近実施した「不眠に関する意識と実態調査」でも、回答者の約4割に不眠症の疑いがあるという結果が出ているという。

また、不眠症は日中の生活の質を低下させ、うつ病の危険因子であることが明らかにされている。さらに、不眠症の患者は糖尿病や高血圧の有病率が高いことが報告されており、これらの発症を助長する危険因子としても注目されている(引用:医療ニュース 2014年12月1日)。

 

ついに発売されましたね。世界初のオレキシン受容体拮抗薬です。

オレキシンは1998年テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンタの柳澤正史教授と櫻井武(当時)らによって発見された神経ペプチド。オレキシンAとオレキシンBという2つのオレキシンが知られており「睡眠と覚醒をあやつる脳内物質」といわれてます。

 

体内時計や情動、栄養状態などの影響を受けると、オレキシンが覚醒中枢に供給される。すると覚醒中枢のはたらきが睡眠中枢のそれを上回り,大脳皮質を賦活(ふかつ)し、目が覚める。

オレキシンの助けが小さくなると、睡眠中枢のはたらきが覚醒中枢のそれを上回る。すると、覚醒中枢やオレキシンのはたらきを抑制する信号が睡眠中枢からおくられる。脳の活動は沈静化し,眠くなる(引用・出典:覚醒制御システムのコネクトミクス:睡眠・覚醒制御系の全解明|最先端・次世代研究開発支援プログラム – 金沢大学)。

オレキシンの作用機序

 

そのオレキシンを受け入れる部分、オレキシン1受容体およびオレキシン2受容体にオレキシンAおよびBが結合するのを阻害するのがオレキシン受容体拮抗薬です。今回のお薬、ベルソムラは米メルク(メルク・アンド・カンパニー MSD)によって開発されたオレキシン受容体選択的拮抗薬であり、アメリカでは2014年8月に、日本では2014年9月に医薬品として承認されていました。世界に先駆けて日本でこの不眠症治療薬が発売されたことは素晴らしいことですね。

 

また、オレキシンは突然睡魔に襲われ寝てしまう奇病「ナルコレプシー」とも密接な関係(オレキシンの欠乏が主原因)があることがわかっています。世界的には2000人〜1000人に一人、日本では更に多く600人に一人がこの病気をもっているといわれています。オレキシン研究によりこの病気も治療することができる「夢の新薬」の開發が現在、柳澤教授を中心とした世界トップレベル研究拠点「筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構」(IIIS )でおこなれています。日本が強い睡眠医科学分野。新薬が生まれることを期待したいですね!

 

関連文献

  1. Sakurai, T.; Amemiya, A.; Ishii, M.; Matsuzaki, I.; Chemelli, R.; Tanaka, H.; Williams, S. C.; Richardson, J.; Kozlowski, G.; Wilson, S.; Arch, J.; Buckingham, R.; Haynes, A.; Carr, S.; Annan, R.; McNulty, D.; Liu, W.-S.; Terrett, J.; Elshourbagy, N.; Bergsma, D.; Yanagisawa, M. Cell 1998, 20, 92, 573. DOI: 10.1016/S0092-8674(00)80949-6

 

関連動画

 

 

 

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 化学療法と抗がん剤の併用で進行期非扁平非小細胞肺癌の生存期間延長…
  2. 有機ELディスプレイ材料市場について調査結果を発表
  3. 分子積み木による新規ゼオライト合成に成功、産総研
  4. カーボンナノチューブ量産技術を国際会議で発表へ
  5. 理研の研究グループがアスパラガスの成分を分析、血圧降下作用がある…
  6. 旭化成ファーマ、北海道に「コエンザイムQ10」の生産拠点を新設
  7. 長井長義の日記など寄贈 明治の薬学者、徳島大へ
  8. Arena/エーザイ 抗肥満薬ロルカセリンがFDA承認取得

注目情報

ピックアップ記事

  1. 難溶性多糖の成形性を改善!新たな多糖材料の開発に期待!
  2. ポンコツ博士の海外奮闘録① 〜博士,米国に上陸す〜
  3. 有機合成化学協会誌2019年4月号:農薬・導電性電荷移動錯体・高原子価コバルト触媒・ヒドロシアノ化反応・含エキソメチレン高分子
  4. 第一回 人工分子マシンの合成に挑む-David Leigh教授-
  5. 東大キャリア教室で1年生に伝えている大切なこと: 変化を生きる13の流儀
  6. データケミカル株式会社ってどんな会社?
  7. ピーター・ジーバーガー Peter H. Seeberger
  8. 余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ
  9. 【書籍】化学における情報・AIの活用: 解析と合成を駆動する情報科学(CSJカレントレビュー: 50)
  10. 秋の褒章2013-化学

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年12月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー