[スポンサーリンク]

ケムステニュース

コケに注目!:薬や香料や食品としても

[スポンサーリンク]

◇徳島文理大薬学部・浅川義範教授
コケ植物の成分を、薬として医学利用する研究をしている徳島文理大薬学部、浅川義範教授(73)。これまで調べたコケは1000種以上で、その中から、がん細胞やインフルエンザウイルスを抑制する天然化合物を見つけ出した。欧州では既に利用され、中国でも臨床研究が進んでいるという。「日本でごく普通に生えている足元のコケに、実は驚くような成分が含まれている」と話す。

コケの研究者は世界に数少ない。そのほとんどがコケの種類や分布を調べる研究者で、成分を調べる研究は、更に珍しい。徳島大、広島大大学院で学んでいた頃は、根や茎がある植物を研究していた。コケに興味を持ち始めたのは、仏ルイ・パスツール大(現ストラスブール大)に研究員として勤めていた30代前半だ(以下省略)。(引用:毎日新聞 2014年11月11日)

 

徳島文理大学の浅川教授の話が毎日新聞にでていましたので紹介します。1972年に広島大学大学院で博士を取得された後、同大学助手、ルイ・パスツール大学に研究員として留学した際に、コケに興味をもち、それ以来一貫してコケに含まれる化合物を単離・構造決定されてきたそうです。単離・構造決定されたもので有名なものにシャクシゴケから単離されたカビクラリン(Cavicularin)というビスベンジル類があります。[1]この分子は生物活性でなく構造的に大変特徴がある分子です。不斉炭素を有していないのにも関わらず光学活性であり、かつ歪んだ環状化合物ですので平面であるはずのベンゼン環が曲がっていることで合成化学者の注目を集めました。[2]

 

Cavicularin-Wikipediaより

Cavicularin-Wikipediaより

最近でも東京工業大学の鈴木・大森らによって不斉全合成が達成されています。[3]

タイトルの本題にもどりますと、なんと、シソや松茸の香りがするコケもあるとのこと。天ぷらにして食べると美味しいらしい。そもそもコケって食べれるんだと驚きましたが、ミズゴケなどは天ぷらにすると美味しいということです。

 

ミズゴケの天ぷら

ミズゴケの天ぷら

(出典:◆別冊蟲日記◆

コケもなかなか奥深いですね。

 

関連文献

[1] Toyota, M.; Yoshida, T.; Kan, Y.; Takaoka, S.; Asakawa, Y. Tetrahedron Lett. 1996, 37, 4745. DOI: 10.1016/0040-4039(96)00956-2

[2] (a) Harrowven, D. C.; Woodcock, T.; Howes, P. D. Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 3899. DOI: 10.1002/anie.200500466 (b) Kostiuk, S. L.; Woodcock, T.; Dudin, L. F.; Howes, P. D.; Harrowven, D. C. ChemEur. J. 2011, 17, 10906. DOI: 10.1002/chem.201101550 (c)Dam, J. H., Ph.D. Thesis, Technical University of Denmark, 2009.

[3] Takiguchi, H.; Ohmori, K.; Suzuki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 10472. DOI: 10.1002/anie.201304929 

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4635202259″ locale=”JP” title=”ときめくコケ図鑑 (Book for Discovery)”][amazonjs asin=”4829973862″ locale=”JP” title=”コケに誘われコケ入門 (生きもの好きの自然ガイド このは No.7)”][amazonjs asin=”456723460X” locale=”JP” title=”天然有機化合物の400MHzNMRスペクトル集”]

 

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 大日本インキ、中国・上海に全額出資の物流会社
  2. 化学系プレプリントサーバー「ChemRxiv」のβ版が運用開始
  3. 世界初!うつ病が客観的に診断可能に!?
  4. 第12回化学遺産認定~新たに3件を認定しました~
  5. 1回飲むだけのインフル新薬、5月発売へ 塩野義製薬
  6. ソモライ教授2008年プリーストリー賞受賞
  7. 「田中さん惜しかった」--分解酵素「プロテアソーム」を精製
  8. 世界の中分子医薬品市場について調査結果を発表

注目情報

ピックアップ記事

  1. 今年は国際周期表年!
  2. 第9回 野依フォーラム若手育成塾
  3. 過塩素酸カリウム (potassium perchlorate)
  4. 相次ぐ化学品・廃液の漏洩・流出事故
  5. ハートウィグ ヒドロアミノ化反応 Hartwig Hydroamination
  6. 3日やったらやめられない:独自配位子開発と応用
  7. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎
  8. 第12回 DNAから人工ナノ構造体を作るーNed Seeman教授
  9. ニトログリセリン / nitroglycerin
  10. 金属を超えるダイヤモンド ーボロンドープダイヤモンドー

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー