[スポンサーリンク]

ケムステニュース

秋の褒章2014ー化学分野からは準結晶研究の蔡安邦教授に

[スポンサーリンク]

学術や芸術、社会福祉など、様々な分野で功績のあった人をたたえる秋の褒章の受章者が決まった。政府が2日付で発表した。受章するのは734人と21団体。3日に発令する。

最年少受章者は紅綬(こうじゅ)褒章を受ける東京都のネパール国籍の男性、カルキ・アヌージュ・ラジャさん(21)。東京のJR四ツ谷駅で、ホームから落ちた女性を電車が接近する中で救出した。

すし店「すきやばし次郎」のすし職人で、海外での日本食の普及に努めた小野二郎さん(89)は黄綬(おうじゅ)褒章を、サザンオールスターズの桑田佳祐さん(58)は紫綬(しじゅ)褒章を受章する。(引用:朝日新聞

 

昨日2014年の日秋の褒章発表となりました。毎年様々な分野で活躍していた著名人の受章が報道されますが、ケムステとしては気になるのは紫綬褒章。今年の化学分野からは東北大学多元物質科学研究所の蔡安邦教授の受章が決定しました(上図左が蔡教授)。

蔡教授は台湾生まれの台湾人。大学卒業後、来日し 秋田大学鉱山学部冶金学科を卒業、現在の東北大学で博士を取得し、2004年から同大学多元物質研究所の教授となりました。研究は準結晶に関する研究。化学なの?と言われる方も多いと思いますが、ノーベル化学賞(2011年のノーベル化学賞)が準結晶であった(上図右がノーベル化学賞受賞者のダン・シェヒトマン教授)だけに、一応化学分野としました。

準結晶の最初の発見はシェヒトマン教授[1]でしたが、これまで発見された準結晶のほとんどが蔡教授が見つけたものであり、同時受賞の可能性があったともいわれています。この度は紫綬褒章受賞大変おめでとうございます。

 

関連文献

[1] Shechtman, D.;  Blech, I.; Gratias, D.; Cahn, J. W. Phys. Rev. Lett. 198453, 1951. DOI: 10.1103/PhysRevLett.53.1951

[2] (a)  Tsai, A.P.; Inoue A.; Masumoto, T.  Jpn. J. Appl. Phys. 198726, L1505. (b) Steinhardt, P.J.; Jeong, H.-C.; Saitoh, K.; Tanaka, M.; Abe, E.; Tsai, A.P. , Nature 1998396, 55. (c) de Boissieu, M.; Francoual, S.; Mihalkovič, M.; Shibata, K.; Baron, A. Q. R.; Sidis, Y.; Ishimasa, T.; Wu, D.; Lograsso, T.; Regnault, L.-P.; Gähler, F.; Tsutsui, S.; Hennion, B.; Bastie, P.; Sato, T. J.; Takakura, H.; Currat, R.; Tsai, A.-P. Nature Materials 2007, 6, 977. DOI: 10.1038/nmat2044

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4254131097″ locale=”JP” title=”準結晶の物理”][amazonjs asin=”4753659038″ locale=”JP” title=”結晶・準結晶・アモルファス (材料学シリーズ)”]

 

外部リンク

 

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 三井化学、DXによる企業変革の成果を動画で公開
  2. 光触媒で新型肺炎を防止  ノリタケが実証
  3. 相原静大教授に日本化学会賞 芳香族の安定性解明
  4. 米のヒ素を除きつつ最大限に栄養を維持する炊き方が解明
  5. 家庭での食品保存を簡単にする新製品「Deliéa」
  6. 「化学の日」はイベント盛り沢山
  7. ダイセルよりサステナブルな素材に関する開発成果と包括的連携が発表…
  8. 京大融合研、産学連携で有機発光トランジスタを開発

注目情報

ピックアップ記事

  1. トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミンを用いた原子移動ラジカル重合
  2. 安積徹 Tohru Azumi
  3. テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルシリカート:Tetrabutylammonium Difluorotriphenylsilicate
  4. 化学ゆるキャラ大集合
  5. リンだ!リンだ!ホスフィン触媒を用いたメチルアミノ化だ!
  6. d8 Cu(III) の謎 –配位子場逆転–
  7. 谷野 圭持 Keiji Tanino
  8. ウクライナ危機と創薬ビルディングブロック –エナミン社のケースより–
  9. 研究者のためのCG作成術④(レンダリング編)
  10. 秋の味覚「ぎんなん」に含まれる化合物

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP