[スポンサーリンク]

ケムステニュース

杏林製薬 耳鳴り治療薬「ネラメキサン」の開発継続

[スポンサーリンク]

 杏林製薬は、耳鳴り治療薬候補「KRP-209」(一般名・ネラメキサン)の国内開発を継続する。第2相臨床試験(P2試験)で主要評価項目を達成できなかったが、POC(創薬概念の実証)を再確認する臨床試験を特定の患者集団に絞って実施し、製品化を目指す。また、産学連携で開発を始める遺伝子治療薬は、改正薬事法で導入される早期承認制度を活用し、5年後にも実用化したい考え(引用:化学工業日報 2014年11月10日)。

 

耳鳴り。一度は体験したことはあるひとが多いのではないでしょうか。米国では900万人ほど(人口に対して約3%)が慢性の耳鳴りを抱えてるといるらしいです。それにも関わらず、効果的な治療法が存在しないということで、治療薬の開発は研究者にとっては大変意義のあるものになります。現在のところ、アデノシン三リン酸(アデホス)などの代謝改善薬かビタミンB12およびビタミンEなどのビタミン剤の他に、ストミンAというニコチン酸アミドどパペベリン塩酸塩の2つの成分が入ったお薬が知られているようです(参考:耳鳴りの治療薬)。

2014-11-11_00-38-33

 

耳鳴り治療薬の候補「ネラメキサン」

今回のニュースにあるネラメキサン(Neramexane)は耳鳴りの新しいお薬候補のひとつ。まだ薬になるにはもう少し効能を確かめる臨床試験を行わなければなりません。ネラメキサンはグルタミン酸受容体であるNMDA型(N-methyl-D-aspartate)受容体阻害剤(アンタゴニスト)として働きます。NMDA受容体はカルシウムイオンを透過させるカルシウムチャネルのひとつであり、グリシンとグルタミン酸が結合することによって活性化されチャネルの開口を補助しています。簡単にいえば、耳鳴りの状態はNMDA受容体が活発に働き過ぎであり、それを阻害するNermexaneが働くことによって抑える、すなわち耳鳴りが楽になるというわけです。

活性化されたNMDA受容体

活性化されたNMDA受容体

似たような構造と作用機序のものにアルツハイマー治療薬のメマンチン(商品名:メマリー@第一三共)がありますが、これもNMDA受容体のアンタゴニストです。

効能に関しても色々とまだ課題があるようなのでもう少し時間がかかりそうですが、新しい治療薬の登場により少しでも耳鳴りに悩む人々が減ったらよいですね。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4861443016″ locale=”JP” title=”耳鳴りなんかもうこわくない! (ヤエスメディアムック398)”]

 

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 光で分子の結合状態を変えることに成功
  2. 日本最大の化学物質データーベース無料公開へ
  3. 2010年10大化学ニュース
  4. 米FDA立て続けに抗肥満薬承認:Qsymia承認取得
  5. 原油高騰 日本企業直撃の恐れ
  6. ALSの新薬「ラジカット」試してます
  7. 液中でも観察OK 原子間力顕微鏡: 京大グループ開発
  8. NEC、デスクトップパソコンのデータバックアップが可能な有機ラジ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 多種多様な酸化リン脂質を網羅的に捉える解析・可視化技術を開発
  2. ダニを食べ毒蓄積 観賞人気のヤドクガエル
  3. オッペナウアー酸化 Oppenauer Oxidation
  4. 元素のふるさと図鑑
  5. ケミカルバイオロジーがもたらす創薬イノベーション ~ グローバルヘルスに貢献する天然物化学の新潮流 ~
  6. トムソン:2005年ノーベル賞の有力候補者を発表
  7. ソラノエクレピンA (solanoeclepin A)
  8. 南 安規 Yasunori Minami
  9. Chem-Stationついに7周年!
  10. ワークアップの悪夢 反応後の後処理で困った場合の解決策

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

2024年の化学企業グローバル・トップ50

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表…

早稲田大学各務記念材料技術研究所「材研オープンセミナー」

早稲田大学各務記念材料技術研究所(以下材研)では、12月13日(金)に材研オープンセミナーを実施しま…

カーボンナノベルトを結晶溶媒で一直線に整列! – 超分子2層カーボンナノチューブの新しいボトムアップ合成へ –

第633回のスポットライトリサーチは、名古屋大学理学研究科有機化学グループで行われた成果で、井本 大…

第67回「1分子レベルの酵素活性を網羅的に解析し,疾患と関わる異常を見つける」小松徹 准教授

第67回目の研究者インタビューです! 今回は第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化す…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP