政府は24日、今年のノーベル物理学賞の受賞が決まった名古屋大教授の天野浩氏(54)と米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の中村修二氏(60)、人形浄瑠璃文楽の人間国宝の竹本住大夫(すみたゆう)氏(89)=本名岸本欣一=ら7人に文化勲章を贈ることを決めた。文化功労者に、日本女子プロゴルフ協会相談役の樋口久子氏(69)や漫画家のちばてつや氏(75)ら17人を選んだ。天野、中村両氏は文化功労者にも選ばれた。文化勲章の親授式は11月3日に皇居で、文化功労者の顕彰式は同4日に東京・虎ノ門のホテルオークラ東京で行われる(引用:朝日新聞)。
少し遅くなりましたが、先月24日、今年の文化勲章・文化功労者が選出されました。今年のノーベル物理学賞を受賞した2氏(赤崎勇教授は2011年に既に文化勲章を受けている)の受賞が決定されています。文化勲章・文化功労者合わせて、今年は化学から国武豊喜(文化勲章)、山川民夫、山本明夫(文化功労者)の3名が選出されています。
文化勲章の受賞が決定した、国武氏は分子組織化学という一分野を築いた化学者。1977年に世界ではじめて人工の脂質二重膜形成を達成しました。[1]その後も精力的に研究を行い、分子組織化学、超分子化学の基礎を確立しました。文化功労者には2007年に既に選出されています。
文化功労者の山川氏は糖脂質関連研究の権威で1950年に生体内にシアル酸のもつ糖脂質が存在することを発見しました。糖脂質生化学のパイオニアの一人で、多くの糖鎖生化学者を排出したことでもしられています。
また、山本氏は有機金属化学者で、2010年のノーベル化学賞であるクロスカップリング反応機構における、酸化的付加機構を示唆する論文[2]を発表し、その後のカップリング反応の開発に大きな影響を与えています。
個人的な話になりますが、筆者がエステルと芳香環のC–Hカップリング反応[3]の開発をおこなった際、既に30年も前に山本らによって中間体が報告されていており[4]、有機金属化学研究の走りであったことが理解出来ました。有機金属を学んだ人のなかには名著である、黄色の書籍「有機金属化学ー基礎と応用」の著者としても思い出すことができるでしょう。
以上3名の化学者の方々を簡単に紹介しましたが、この度の選出、誠におめでとうございます!
関連文献
[1] Kunitake, T.; Okahata, Y. J. Am. Chem. Soc. 1977, 99, 3860. DOI: 10.1021/ja00453a066 [2] Uchino, M.; Yamamoto, A.; Ikeda, S. J. Organomet. Chem. 1970, 24, C63. DOI:10.1016/S0022-328X(00)84475-7 [3] Amaike, K.; Muto, K.; Yamaguchi, J.; Itami, K. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 13573. DOI:10.1021/ja306062c [4] Yamamoto, T.; Ishizu, J.; Kohara, T.; Komiya, S.; Yamamoto, A. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 3758. DOI: 10.1021/ja00531a016
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