[スポンサーリンク]

ケムステニュース

夏:今年もスズメバチ防護服の製造ピーク

[スポンサーリンク]

スズメバチ対策ばっちり 小樽の会社、防護服製造ピーク

スズメバチが巣作りなどで活動期を迎える中、小樽市奥沢のゴム長靴製造会社「ミツウマ」(小舘昭一社長)は、蜂用の防護服の製造に追われている。

1919年(大正8年)創業のミツウマは40年ほど前から防護服を製造。外部業者に製造委託したヘルメットや上下服、手袋などを隙間がないように組み立てる。蜂が防護服に取り付いて針を刺せないよう、ポリエステル製の生地表面を滑りやすく特殊加工する。

道内外の自治体や駆除業者向けに、年間約200着を出荷する。価格は1式で15万円。
 
北海道新聞7月5日夕刊(http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/477743.html) 

 

 

スズメバチの季節、いかがお過ごしでしょうか。

わたしは幸運にもスズメバチに刺されたことはないのですが、わたしが子どもの頃、父親とクワガタ取りに出掛けたとき、クヌギの木に止まっていた1匹に気づかず、近づきすぎたため2人で襲われかけたことがありました。そして、父がちょうど手に持っていた2メートルほどの棒切れをふりまわして、三塁打とおぼしきあたりのヒットをかまし、事なきを得た思い出があります。集団攻撃を恐れて、その場を速やかに退散しましたが、どうも父のカッコいい姿ベストスリーにあれは入るだろうというのが、わたしの雑感です。二度とごめんですが。

GREEN2013bee09.png

論文[1]より

閑話休題。

ハチのなかまのうち、オオスズメバチ(Vespa mandaria )はとりわけ巨大で気性も荒く、国内では例年50人以上が襲われて亡くなっています。世界でも指折りの危険昆虫です。

ひとたび怒らせてしまうとスズメバチは本能のままに襲いかかってきます。このとき、放出される揮発成分が警報フェロモンです。この匂いをスズメバチがかぐと、怒りのスイッチが入ってしまうわけです。近くに仲間がいれば、怒り倍増、集団で襲ってきます。

警報フェロモンの実態はというと、主たる成分は2-ペンタノール(2-pentanol)と判明しています[1]。とても単純な構造のアルコールです。

GREEN2013bee01.png

このペンタノール単独でもスズメバチをいわゆる激おこぷんぷん丸状態にできるのですが、ここに追加で3-メチル-1-ブタノール(3-methyl-1-butanol)と3-メチルブタン酸-1-メチルブチル(1-methylbutyl 3-methylbutanoate)が混ざっていると、さらに怒りのスイッチが入りやすくなります[1]。ええっと、ものすごく怒っている場合の形容は、ムカ着火ファイヤーでしたっけ、カムチャッカインフェルノオォォゥでしたっけ。

 

株式会社ミツウマ製の防護服の生地は厚手のポリエステルでできており、摩擦を減らしハチを取りつきにくくするテフロン加工が表面にほどこされているとのことです。防護服もなく、素人でのスズメバチ退治は危険なので、駆除が必要な巣を見つけた場合は地方自治体への問い合わせ含め、安全を確保しなるべく慎重に対応しましょう。

 

  • 参考論文

[1] "Components of giant hornet alarm pheromone." Masato Ono et al. Nature 2003 DOI: 10.1038/424637a 

Avatar photo

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2018年版】
  2. 天然物化学談話会
  3. バイエルワークショップ Bayer Synthetic Orga…
  4. メルク、主力薬販売停止で15%減益
  5. イグノーベル賞2020が発表 ただし化学賞は無し!
  6. ヘリウム不足再び?
  7. 「日本化学連合」が発足、化学系学協会18団体加盟
  8. 第13回化学遺産認定~新たに3件を認定しました~

注目情報

ピックアップ記事

  1. 高純度化学研究所が実物周期標本を発売開始
  2. 個性あふれるTOC大集合!
  3. ナノ孔に吸い込まれていく分子の様子をスナップショット撮影!
  4. 分子積み木による新規ゼオライト合成に成功、産総研
  5. ベンゼンスルホヒドロキサム酸を用いるアルデヒドとケトンの温和な条件下でのアセタール保護反応
  6. 実用的なリチウム空気電池の サイクル寿命を決定する主要因を特定
  7. Reaxys Prize 2011発表!
  8. 富士写、化学材料を事業化
  9. 超微細な「ナノ粒子」、健康や毒性の調査に着手…文科省
  10. 不斉触媒研究論文引用回数、東大柴崎教授が世界1位

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年7月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

第57回若手ペプチド夏の勉強会

日時2025年8月3日(日)~8月5日(火) 合宿型勉強会会場三…

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー