[スポンサーリンク]

ケムステニュース

毒を持ったタコにご注意を

[スポンサーリンク]

 

先日は貝毒に関するニュースをお伝えしましたが、今度はタコです。

毒をもったタコが大阪をはじめ、島根や静岡、そして神奈川と関東近海でも目撃されています。

 

かまれると死に至る恐れのある「猛毒ダコ」が、神奈川、千葉両県などで相次いで見つかっている。主な生息地は九州以南。海面水温が上昇した影響で、生息域が北に広がってきた可能性がある。海のレジャーが本格化するのを前に、沿岸部の自治体は「見つけても絶対に触らないで」と呼びかけている。

このタコは、強い毒性を持つヒョウモンダコ(マダコ科)。水産無脊椎(むせきつい)動物研究所(東京都中央区)などによると、体長は大きくても15センチ程度。ふだんは褐色で地味だが、攻撃を受けると鮮やかな黄色になり、蛍光ブルーのヒョウ柄が全身に浮かび上がる。唾液(だえき)に、フグと同じ猛毒のテトロドトキシンを持つ。この毒の致死量は1~2ミリグラムとも言われる。

主に日本から豪州にかけての亜熱帯地域の岩礁に生息するが、近年は関東でもよく見つかっている。

 

朝日DIGITALより引用

 

体長数センチのヒョウモンダコは普段は茶色くておとなしい色ですが、危険を感じたりすると青をはじめ鮮やかな色になります。そんな小さなタコですが、唾液の中になんとテトロドトキシンを含んでいることがあるのです。テトロドトキシンといえばフグ毒で有名ですが、実はフグが作っているわけではなく、微生物が作り出しているものが生物濃縮によって蓄積されています。よって様々な生物から検出されるのです。ちなみに007シリーズのオクトパシーでは敵方の印にヒョウモンダコが使われています。

TTX.png

テトロドトキシン

Wikipediaのページではテトロドトキシンの他にハパロトキシン(hapalotoxin)という毒素が含まれているという記述がありますが、ハパロトキシンという物質は現在までに確認されていない化合物です。1977年に論文が報告されていますが、空気に対しても不安定で単離はうまくできなかったとのことです。その他にもマキュロトキシン(maculotoxin)が検出されたとの記載もありますが、マキュロトキシンというのは現在ではテトロドトキシンと同一化合物であることが分かっていることから、ハパロトキシンもテトロドトキシンと同一、もしくは構造が類似した化合物ではないでしょうか(テトロドトキシンは現在までに数種の類縁体が天然から単離されています)。

serotonin.png

セロトニン

ハパロトキシンの有無はともかくとして、ヒョウモンダコの唾液にはその他にもセロトニン、チラミン、ヒスタミンドーパミンなど様々な生理活性がある化合物が含まれていることがわかっています。

 

これから海水浴シーズンで、磯遊びなどをする機会も増えてきます。

ヒョウモンダコ一匹の唾液で死に至る量のテトロドトキシンが含まれているので、かわいいタコさんであったとしても決して触ってはいけません。お子さんたちにも十分に注意するように呼びかけましょう。

 

  • 関連書籍
[amazonjs asin=”4537252332″ locale=”JP” title=”面白いほどよくわかる毒と薬―天然毒、化学合成毒、細菌毒から創薬の歴史まで、毒と薬のすべてがわかる! (学校で教えない教科書)”][amazonjs asin=”4797346736″ locale=”JP” title=”猛毒動物 最恐50 コブラやタランチュラより強い 究極の毒を持つ生きものは? (サイエンス・アイ新書)”][amazonjs asin=”4816354093″ locale=”JP” title=”史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり”][amazonjs asin=”4486019415″ locale=”JP” title=”日本のタコ学”]
Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. H・ブラウン氏死去/米のノーベル化学賞受賞者
  2. 光触媒で抗菌・消臭 医療用制服、商品化へ 豊田通商 万博採用を機…
  3. 「ニコチンパッチ」6月1日から保険適用
  4. 世界の中分子医薬品市場について調査結果を発表
  5. 第二回触媒科学国際シンポジウム
  6. 超高性能プラスチック、微生物で原料を生産
  7. 「サンゴ礁に有害」な日焼け止め禁止法を施行、パラオ
  8. 液中でも観察OK 原子間力顕微鏡: 京大グループ開発

注目情報

ピックアップ記事

  1. 抗がん剤などの原料の新製造法
  2. CV書いてみた:ポスドク編
  3. 2次元分子の芳香族性を壊して、ホウ素やケイ素を含む3次元分子を作る
  4. 直線的な分子設計に革新、テトラフルオロスルファニル化合物―特許性の高い化学材料としての活躍に期待―
  5. 武田 新規ARB薬「アジルバR錠」発売
  6. Baird芳香族性、初のエネルギー論
  7. 2010年日本化学会各賞発表-学術賞-
  8. 有機合成化学協会誌2019年8月号:パラジウム-フェナントロリン触媒系・環状カーボネート・素粒子・分子ジャイロコマ・テトラベンゾフルオレン・海洋マクロリド
  9. 「医薬品クライシス」を読みました。
  10. ゲラニオール

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年6月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP