アンジェスMG、アトピー性皮膚炎治療薬の第1相試験を開始
アンジェスMGは24日、アトピー性皮膚炎を適応対象とする経皮吸収型の核酸医薬品の第1相臨床試験を、塩野義製薬と共同で国内で始めたと発表した。メドレックスから導入した経皮吸収技術を応用することで、核酸医薬のように分子量が大きい医薬品の課題である皮膚への浸透性が、どこまで高まるかを実証する。
この医薬品は免疫反応に関係する遺伝子の発現を調節する転写因子「NF―κ(カッパ)B」の結合部位と同じDNA配列を持つ人工遺伝子(核酸)「NF―κBデコイオリゴ」を有効成分とする。炎症性サイトカインの産生を阻害し、過剰な炎症反応や免疫反応に起因する疾患を治療する効果があるという。NF―κBデコイオリゴの有効性自体は、軟こうタイプの製剤を使って別途行った臨床試験で確認済み。
今回は薬物をイオン液体化したり、イオン液体に薬物を溶解したりして皮膚透過性を高めるメドレックスの技術を応用した製剤の安全性を検証する。
日刊工業新聞2013年06月25日
NF-κBデコイオリゴを用いたアトピー性皮膚炎治療薬の第Ⅰ相臨床試験開始について
アンジェス MG株式会社(以下、当社)は、塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木功、以下、塩野義製薬)と共同で開発を進めているNF-κBデコイオリゴを使用したアトピー性皮膚炎治療薬の第Ⅰ相臨床試験を開始しましたのでお知らせします。
(中略)
NF-κB デコイオリゴ外用剤のアトピー性皮膚炎を対象とした試験については、既に旧製剤を用いて中等症以上の患者を対象にした臨床試験で有効性が確認されており、刺激性の少ない新しい作用機序を有した外用剤として期待されます。今回の治験では NF-κB デコイオリゴの皮膚浸透性を向上させた新製剤を用い、その安全性を確認いたします。
アンジェスMG株式会社2013.06.24ニュースリリース
アンジェス MG株式会社は、遺伝子医薬の開発を行う日本のバイオ製薬企業。 デコイ核酸をはじめとする大阪大学医学部助教授の森下竜一氏による研究成果を基盤に1999年発足。2002年に大学発の次世代創薬ベンチャー企業として初めて東証マザーズに上場しています。
アンジェス MG社にとっての肝煎りのひとつとも言えるデコイ型核酸医薬(ケムステ記事【核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」】参照)の開発本格化が発表されました。免疫応答の司令塔としてはたらく転写因子であるNF-κB(nuclear factor kappa light chain enhancer of activated B cells)タンパク質を標的[1]とし、アトピー性皮膚炎患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験では炎症を抑える有効性を確認しています。
核酸の特異配列を認識したNF-κB転写因子
今回はNF-κB転写因子を標的とした単なる軟膏ではなく、さらにイオン液体技術[2]を投入。まずは実際に安全性の確立に向けて治験を始めるとのこと。イオン液体(ionic liquid)は、融点が常温以下のイオン結晶のことです。課題であった薬物送達に新規材料を活用、今後の進展が気になります。
最近、ベンチャー企業が上場のニュース、またベンチャー企業が大手製薬会社と契約解消したニュースなど、動向の著しい次世代医薬業界。株の値動きだけではなく、技術を支える基礎の部分にも注目したいところでしょう。
参考文献
- “In vivo transfection of cis element decoy against nuclear factor-kappa B binding site prevents myocardial infarction” Ryuichi Morishita et al. Nature Medicine 1997 DOI: 10.1038/nm0897-894
- 転写因子デコイを有効成分とする外用剤組成物(特許公開番号WO 2009119836 A1)