アルコール依存症に苦しむ方への福音となるかもしれないニュースです。
日本新薬は5月27日、アルコール依存症患者に対する断酒補助薬レグテクト錠333mg(一般名:アカンプロサートカルシウム)を発売したと発表し た。中枢神経系に作用し、アルコール依存により亢進したグルタミン酸作動性神経活動を抑制することで飲酒に対する欲求を抑える日本で初めての作用を持つ薬 剤。カウンセリングなどの精神療法や、自助グループへの参加など心理社会的治療と併用することで、プラセボ群に対して有意に高い断酒成功率を確認した。
1回2錠を1日3回投与する。薬価は1錠50.10円。同剤は、欧米など海外24カ国で販売されている。日本では、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が指摘され、10年5月に同省から開発要請されていた。
アルコール依存症に対する薬剤としては、飲酒後に不快な症状が現れる「抗酒薬」が使われている。今回承認された薬剤は、異なる作用で、飲酒に対する欲求を抑える仕組み。
ミクスONLINEより引用
レグテクトの成分はアカンプロサートカルシウムという化合物です。医薬品としては非常に単純な構造ですね。よく栄養ドリンク剤に成分として入っているタウリンの炭素が一つ長いもののアミノ基を酢酸とのアミドにした化合物といったら分かりづらいでしょうか?
アカンプロサートカルシウム(左)、タウリン(右)
従来のアルコール依存症治療薬は主にアルコールが駄目な人、いわゆる下戸と同じような状態、すなわちアルコールを摂取すると気持ち悪くなるようにする薬剤でした。一方アカンプロサートは脳内のグルタミン酸受容体の一つNMDA受容体が標的になっており[1]、アルコールを欲しようとする症状(離脱症状)を抑える働きがあります。
アカンプロサートは数十年前からヨーロッパで使用されており、安全性は高いものと考えられています。肝臓での代謝もありませんので、アルコールを過剰に摂取して肝臓を痛めている患者でも使用できます。今回の日本新薬からの発売はある意味待ち望まれていたものだったのかもしれません。
薬があるからといっても、お酒の飲み過ぎには十分ご注意下さい。
関連文献
[1] Witkiewitz, K.; Saville, K.; Hamreus, K. Ther. Clin. Risk Manag. 8, 45-53 (2012). doi: 10.2147/TCRM.S23184