[スポンサーリンク]

ケムステニュース

大阪近海のアサリから麻痺性貝毒が検出される

[スポンサーリンク]

大阪近郊にお住まいの方への注意情報です。

ゴールデンウィークにお出かけをお考えの方は特に注意して下さい。

大阪府は16日、阪南市の男里川河口で採取したアサリから、国の規制値の約6・7倍のまひ性貝毒を検出したと発表した。約1週間前の8日の調査に比べ、約4・3倍に増えているという。

前回調査で規制値以下だった貝塚市の二色の浜のアサリからも約2・9倍の貝毒が検出された。いずれも15日の定期調査で判明した。

府は安全性が確認されるまで、府沿岸で採取したアサリを食べないよう、呼び掛けている。

4/16付け記事

 

大阪府は9日、阪南市の男里川河口で採取したアサリから国の規制値の約1・5倍のまひ性貝 毒が検出されたと発表した。潮干狩りシーズンを前に実施した8日の定期検査で判明した。安全性が確認されるまで、大阪府沿岸で採取したアサリのほか、トリガイやシジミなどの二枚貝を食べないよう、呼び掛けている。

大阪府内では、20日に貝塚、阪南両市、岬町の3カ所で潮干狩り場がオープンする予定。大阪府と2市1町はアサリを持ち帰らないよう来場者に周知徹底する。

4/10付け記事

いずれもmsn産経westより引用

今回検出されたとされる貝毒はサキシトキシンゴニオトキシンという化合物です。最高で4月15日に男里川河口のサンプルから27.1 MU/gが検出されています。麻痺性貝毒の場合、1 MUは体重20 gのマウスを15分で死に至らしめる量です。規制値は貝のむき身1 gあたり4 MUですので大幅に超過しています。

貝毒と言っても貝自身が作っているわけではありませんので、全ての二枚貝がいけないという訳ではありません。毒はプランクトンなどの小さな生物が生産者ですが、それを食べ、またその食べた生物をより大きな生物が食べ、といわゆる食物連鎖の過程で毒が濃縮される生物濃縮が起こることがあります。逆にそこが厄介なところでして、どの貝が毒化してるかは見分けがつかないのです。

我が国では古来より海産物の毒と接してきており、フグ毒のテトロドトキシンや、シガテラ毒のシガトキシンなどは全て生物濃縮で魚などに蓄積されています。

TTX.png

CTX.gif

 

そんな事情も手伝って、我が国では海産毒の研究が盛んに行われており、毒の構造決定や、全合成で世界をリードしてきました。

これらの毒は麻痺を引き起こすのですが、作用機構も明らかとなっています。細胞はナトリウムやカルシウムなどのイオンを取り込んだり、放出したりして様々な機能を調節しています。細胞の内外を自由に行き来されては困りますので、チャネルと呼ばれる特定の出口(入り口)を用意しています。細胞膜にちくわが埋まっていて、ちくわの穴をイオンが行ったり来たりしているとイメージしてもらえればわかりやすいかと思います。

これらの麻痺性毒はそのチャネル(ちくわの穴)にはまってふさいでしまったり、逆に開きっぱなしにしてしまったりすることで、イオンの流れを異常にしてしまうのです。その結果麻痺のような様々な症状が現れます。
では対策として何ができるでしょうか?これらの毒素を無力化できればいいのですが、残念ながらこれらの毒素は加熱しても分解がなかなか進みません。猛毒のフグの肝を漬物にしてテトロドトキシンを分解して食べるというのもあるようですが、それは例外的ですので、毒化した海産物の情報が出た場合は食べないことしか対策のしようが無いのが現状です。

皆さんも決して食べないように注意して下さい。ゴールデンウィークに向けて潮干狩りのシーズンですが、汚染の危険があると行政から告知されているところで採取した貝は決して持ち帰らないで下さい。潮干狩りに行く際は最新の情報を仕入れていきましょう。麻痺性毒は死に至る恐ろしい毒です。

  • 外部リンク

大阪市の貝毒に関する情報その1

大阪市の貝毒に関する情報その2

  • 関連動画


Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. メルク、主力薬販売停止で15%減益
  2. 半導体で水から水素 クリーンエネルギーに利用
  3. 三菱ケミカル「レイヨン」買収へ
  4. リピトールの特許が切れました
  5. 素材・化学で「どう作るか」を高度化する共同研究拠点、産総研が3カ…
  6. 世界最高速で試料回転を行う固体NMRプローブを開発 -超微量の生…
  7. 理研の研究グループがアスパラガスの成分を分析、血圧降下作用がある…
  8. クラリベイト・アナリティクスが「引用栄誉賞2019」を発表

注目情報

ピックアップ記事

  1. エーザイ、医療用の処方を基にした去たん剤
  2. オンライン授業を受ける/するってどんな感じ? 【アメリカで Ph. D. を取る: コロナ対応の巻】
  3. 知られざる法科学技術の世界
  4. 【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2026卒)
  5. 第19回次世代を担う有機化学シンポジウム
  6. エッシェンモーザーメチレン化 Eschenmoser Methylenation
  7. 反応化学と生命科学の融合で新たなチャレンジへ【ケムステ×Hey!Laboインタビュー】
  8. 宇宙に輝く「鄒承魯星」、中国の生物化学の先駆者が小惑星の名前に
  9. 元素川柳コンテスト募集中!
  10. UBEの新TVCM『ストーリーを変える、ケミストリー』篇、放映開始

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

先端の質量分析:GC-MSおよびLC-MSデータ処理における機械学習の応用

キャラクタライゼーションの機械学習応用は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)およびラボオートメ…

原子半径・電気陰性度・中間体の安定性に起因する課題を打破〜担持Niナノ粒子触媒の協奏的触媒作用〜

第648回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科(山口研究室)博士課程後期2年の松山…

リビングラジカル重合ガイドブック -材料設計のための反応制御-

概要高機能高分子材料の合成法として必須となったリビングラジカル重合を、ラジカル重合の基礎から、各…

高硬度なのに高速に生分解する超分子バイオプラスチックのはなし

Tshozoです。これまでプラスチックの選別の話やマイクロプラスチックの話、およびナノプラスチッ…

新発想の分子モーター ―分子機械の新たなパラダイム―

第646回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機反応論研究室 助教の …

大人気の超純水製造装置を組み立ててみた

化学・生物系の研究室に欠かせない超純水装置。その中でも最も知名度が高いのは、やはりメルクの Mill…

Carl Boschの人生 その11

Tshozoです。間が空きましたが前回の続きです。時系列が前後しますが窒素固定の開発を始めたころ、B…

PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

概要ケモメトリクスと機械学習によるスペクトル解析を、Pythonの使い方と数学の基礎から実践…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー