5月9日、Pfizer社は、JAK阻害薬 Tofacitinib が米国FDAの査問委員会から「成人における中等度から重度関節リウマチ」に対して承認勧告を受けたと発表しました。この承認勧告により、Tofacitinib が関節リウマチ治療薬として承認・発売される見通しとなりました。
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は、免疫異常により手や足の関節に重い関節炎が生じ、関節痛・関節の変形を起こす病気です。現在の主な治療は、メトトレキサート(MTX)のような抗リウマチ薬(DMARDs)や抗体医薬(生物製剤)が主に用いられています。MTXについては、効果を示さない人がある、重い副作用(間質性肺炎、肝障害、骨髄抑制など)が起こり うることが問題視されています。また、抗体医薬は注射剤であること、製造コストが大きく高価であることが課題です。 JAK(Janus Kinase)阻害薬は、高い治療効果をもつ経口薬であり、既存薬の欠点を克服した優れた新薬と期待されています。
ファイザー社は、当初、選択的JAK3阻害薬の創成を目指し研究を行いました。40万化合物のスクリーニングで得たhit CP-352,664から誘導合成を行い、開発化合物CP-690,550を見出しました。後にこの化合物は非選択的JAK阻害剤である事が解りましたが、結果的にJAK1,2の阻害がRA治療には効果的に働いてると考えられています。まさに、セレンディピティをものにした成功例です。
最近、「低分子創薬の時代は終わった。これからはバイオ医薬だ」という論調が多いのですが、抗体医薬全盛のリウマチ治療に低分子医薬が切り込んで行ったこのニュースは、創薬化学者を大いに勇気づけることでしょう。
外部リンク
薬作り職人のブログ:関節リウマチ治療に新しい風ーFDA査問委員会によるTofacitinib承認勧告
関連文献
Discovery of CP-690,550: A Potent and Selective Janus Kinase (JAK) Inhibitor for the Treatment of Autoimmune Diseases and Organ Transplant Rejection DOI: 10.1021/jm100428