先月4月27日にMerck (MSD)の2012第1四半期の業績報告が行われ、その中で新規不眠症治療薬SUVOREXANTについて「2つのPhaseIII臨床試験で有効性を示し、2012年中に米国FDAへ新薬承認申請を行う計画」と発表されました。
現在使用されている不眠症治療薬の多くは、主にGABAA受容体の作用する「鎮静型」睡眠薬です。抑制性の神経伝達物質であるGABAの受容体であるGABAA受 容体に作用して、その作用を強めます。この受容体は脳内に広く分布しているため、脳の活動全体を低下させます。そのため運動障害、記憶障害、依存性、リバ ウンドといった副作用、あるいは翌朝まで作用が残り目覚めが悪くなる「持ち越し」といった課題があります。従って、「鎮静型」ではなく、「生理的睡眠を誘発」する新しい作用機序の不眠症治療薬の開発が期待されています。
Merck社のSUVOREXANT (MK-4305)は「オレキシン受容体拮抗薬」です。オレキシン(orexin) は覚醒を制御するペプチドであり、この受容体をブロックすると覚醒状態が保てなって睡眠が誘発されます。SUVOREXANT はオレキシン受容体拮抗薬として最も臨床ステージの進んだ化合物(first in class)であり、その治療効果に期待が集まっています。SUVOREXANT の創薬は興味深い話題があるので、いずれ「つぶやき」で紹介したいと思います。