5月21日、J&Jグループのヤンセンファーマ株式会社は、抗HIV薬 「エジュラント錠」(一般名:リルピビリン塩酸塩)の日本における製造販売承認を18日に取得したと発表した。同剤はNNRTIと呼ばれるカテゴリーに属し、2011年から米国で販売されている。同社は現在、抗HIV薬として他に プロテアーゼ阻害剤 Darunavir 「ブリジスタ」 及び逆転写酵素阻害剤 Etravirine 「インテレンス」を販売している。
抗HIV薬は逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤 (PI)、インテグレース阻害剤 (INSTI)の3つのカテゴリーがあり、逆転写酵素阻害剤はヌクレオチド/ヌクレオシドを模倣した核酸系阻害剤 (NRTI = Nucleoside Reverse Transcriptase Inhibitor) と、異なる骨格を有する非核酸系阻害剤 (NNRTI = Non-Nucleoside RTI) とに2分類される。国内ではNRTI 7剤、NNRTI 4剤、PI 8剤、INSTI 1剤、その他1剤が認可されている。
HIVは変異しやすい特性を持つため、不十分な治療は薬剤耐性ウイルスの選択と増殖を許すこととなる。現在のHIV治療は通常3剤を用いる多剤併用療法 (HAART : highly active antiretroviral therapy)が行われる。多剤併用療法は大変優れた治療効果を示し、HIV/AIDS患者の予後を大きく改善した。多剤併用療法はNNRTI, PI, INSTIのうち1剤をキードラッグ、NRTIのうち2剤をバックボーンとして用いる。
最初に登場したHIV治療薬のカテゴリーは、Zidovudine (AZT) をはじめとするNRTIである。NRTIはnucleosideのDNA伸長部位である2’-deoxyribose 3’位のOH基が欠損または置換されている。ウイルスが逆転写する際に、薬剤がDNAに取り込まれ伸長反応を停止することで抗ウイルス作用を示す。NRTIは治療上重要な薬剤であるが、以前から用いられてきたため耐性ウイルスが出現し易い。
一方、NNRTIは逆転写酵素の活性中心部近傍に結合し、酵素活性中心のアミノ酸残基の位置をずらして歪を生むことで逆転写活性を失活させる。日本では Efavirenz (EFV) が群を抜いて多く使用されているが、やはり耐性ウイルスの出現 (K103N, Y181C変異体など) が問題となる。そこで、種々の耐性ウイルスに対して幅広く阻害活性をもつ第二世代NNTRIの開発が求められている。
第二世代NNTRIとしてdiarylpyrimidine (DAPY) 骨格を持つ Etravirine が発売済みであり、K103NまたはY181C変異ウイルスにも有効であり、旧世代NNRTIで治療に失敗した症例にも効果的だと考えられている。 Rilpivirine は Etravirine と同じDAPYであるがより強力な作用を示すため、有効投与量が低く中枢神経系の副作用が少ない利点がある。
関連文献
- “In Search of a Novel Anti-HIV Drug: Multidisciplinary Coordination in the Discovery of 4-[[4-[[4-[(1E)-2-Cyanoethenyl]-2,6-dimethylphenyl]amino]-2- pyrimidinyl]amino]benzonitrile (R278474, Rilpivirine)” J. Med. Chem., (6), pp 1901–1909 DOI: 10.1021/jm040840e
Ideally, an anti-HIV drug should (1) be highly active against wild-type and mutant HIV without allowing breakthrough; (2) have high oral bioavailability and long elimination half-life, allowing once-daily oral treatment at low doses; (3) have minimal adverse effects; and (4) be easy to synthesize and formulate. R278474, a new diarylpyrimidine (DAPY) non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor (NNRTI), appears to meet these criteria and to be suitable for high compliance oral treatment of HIV-1 infection. The discovery of R278474 was the result of a coordinated multidisciplinary effort involving medicinal chemists, virologists, crystallographers, molecular modelers, toxicologists, analytical chemists, pharmacists, and many others.
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