少々遅くなりましたが5月上旬に出揃った製薬大手の2010年度決算を総括したいと思います。2010年問題で話題となった製薬業界の決算はどうだったのでしょう?
武田薬品のタケプロン、アステラスのプログラフとハルナール、第一三共のクラビット、エーザイのアリセプトといった現在の大手製薬メーカーを大手へとけん引した新薬達の特許が満了を迎え、後発品の侵食がいよいよ始まった。その影響は如実に現れ、武田薬品、アステラス、エーザイが売り上げを落とした。唯一増収の第一三共だったが、これは子会社のインドランバクシー社の貢献によるが大きい。それでは大手4社の決算を見ていきましょう。
武田薬品 減収減益
売上高は前期比3.2%減の1兆4194億円。営業利益は12.6%減の3671億円。純利益は16.8%減の2479億円で前の期に引き続き減収減益となった。それでもこの利益はすごいと思います。タケプロンは38.2%減の1336億円と大きく売り上げを落とした。武田の大黒柱アクトスは1.2%増の3879億円と堅調に伸びた。アクトスは2012年に後発品が参入してくることが予想されており2013年に武田の売り上げが極小を迎えることが想定されている。これに伴い(?)5月19日に大きなニュースが発表された。ヤフーニュースなどで見かけた人も多いかもですが、スイスの製薬Nycomed社の買収を発表しました。その額96億ユーロ(約1兆1000億円)。Nycomed社の年間売り上げが約3200億円で、これによってアクトスの特許切れを補うことになるでしょう。
第一三共 増収増益
売上高は前期比1.6%増の9674億円。営業利益は27.9%増の1221億円。純利益は67.5%増の701億円となった。震災の影響で約55億円の特別損失を計上したが、インドランバクシー社の売り上げがけん引し大幅増益を確保した。クラビットは20.7%減の691億円と大きく売り上げを落とした。第一三共の次期主力品の期待を背負うプラスグレルは通年で52億円とぱっとしない結果に。販売戦略の見直しが必要だ。モタモタしてる間に競合品やその後発品が出てきてしまいますよ。
アステラス 減収減益
売上高は前期比2.1%減の9539億円。営業利益は36.1%減の1192億円。純利益は44.7%減の677億円。大幅減益はアメリカOSI社の買収経費による一時的なものである。プログラフが12.9%減の1626億円、ハルナールが41.6%減の665億円と大幅に売り上げを落とした。一方で、ベシケアが5.3%増の867億円を売り上げるなどよいニュースもある。次年度はOSI社の寄与などにより2桁増益を見込む。
エーザイ 減収増益
売上高は前期比4.3%減の7689億円。営業利益は30.9%増の1131億円。純利益は67.1%増の674億円。減収だったものの販売管理費の効率化なので大幅増益を確保した。昨年11月にアメリカで特許満了を迎えた主力のアリセプトは10.1%減の2904億円に減少。次年度からはアメリカでの特許切れの影響が通年に響くので一気に売り上げを落とすことになるのは避けられない見通し。次年度総売り上げは9%減の7000億円を見込む。昨年末から販売を開始した乳がん治療薬ハラヴェンは22億円を売り上げた。