2011年3月30日、富士フイルムグループの富山化学工業株式会社が経口の抗インフルエンザウイルス薬「T-705」(一般名:ファビピラビル)について厚生労働省に製造販売承認の申請を行いました。
抗インフルエンザ薬タミフルが登場して以降、同じ作用メカニズムを持つCS-8958(第一三共)やペラミビル(塩野義製薬)が次々と承認を取得してきました。これらの薬剤はいずれもノイラミニダーゼ阻害を作用メカニズムとする抗インフルエンザ薬です。ウイルスは細胞に侵入・複製・増殖した後、感染を拡大するために細胞外に一度放出され、次の細胞へ侵入・・・これを繰り返し感染細胞を増やしていきます。ノイラミニダーゼはウイルスが細胞から放出される瞬間、ウイルスと細胞表面との架け橋をちょん切って、ウイルスと細胞とを切り離す役割を果たします。その作用を阻害すれば、ウイルスの放出(感染拡大)が抑制され、あとは人間の免疫細胞の力で病気が治っていくというわけです。
一方、今回富山化学が開発したT-705はRNAポリメラーゼ阻害という新規の作用メカニズムを持つ抗インフルエンザ薬です。これにはウイルス複製の段階を阻害し薬効を発揮します。
新型インフルエンザや薬物耐性ウイルスの登場などウイルスが進化を続ける中、
これまでと異なった作用メカニズムを有する薬剤が登場することは、患者にとって新たな薬剤の選択肢を与えることになります。
いいことですね!