[スポンサーリンク]

ケムステニュース

2011年日本化学会各賞発表-学会賞-

[スポンサーリンク]

 

本日2011年、平成22年度の日本化学会各賞の発表がありました。今年も毎年行われている春季年会で各受賞者の表彰式が行われます。各世代で活躍している第一線の研究者が受賞しています。昨年もここケムステでいち早く詳細の発表をおこないましたが、今回も早速行ないたいと思います。

まずは日本の化学界の頂点!学会賞(The Chemical Society of Japan (CSJ) Award)編です。一般的に各分野の第一人者としてよく知られている先生方ですので、簡単な研究紹介と略歴のみを紹介します。

  • 相本 三郎 氏 (阪大蛋白研)「ペプチドチオエステルを合成ブロックとするタンパク質合成法の開発」
Dr. ペプチド合成ーー
1991年 ネイティブ・ケミカル・ライゲーション(NCL)の元となった、ペプチドチオエステルを合成ブロックとするタンパク質合成法を開発した。1994年にKentらによりNCLが発表された後も、一貫してペプチド合成法の開発に取り組みました。それ以外にも、膜蛋白質の機能発現メカニズムの解明やヒストンの修飾と遺伝子発現制御機構の解明などのタンパク質の作用機序に関する研究も行っています。
【略歴】
 1972年大阪大学大学院理学研究科有機化学専攻博士課程入学、1972年大阪大学たんぱく質研究所助手その後、1978年Roswell Park記念研究所博士研究員、1979年Yale大学分子生物物理・生化学科 博士研究員を経て、1987年大阪大学たんぱく質研究所助教授、1994年大阪大学たんぱく質研究所教授、現在に至る。ペプチド化学会会長。
大阪大学 蛋白質有機化学研究室
・関連書籍
  • 榎  敏明 氏 (東工大院理工)「ナノグラフェンのエッジ状態とその電子的及び磁気的機能の開拓
Dr. ナノカーボン物性ーー
「原子・分子集合体の物理化学」をキーワードとして、主にグラフェンなどのナノカーボン物質の伝導と磁性研究を行って来ました。また、1分子にトランジスタなどの素子機能を持たせるという分子エレクトロニクスが注目されていますが、その単分子の電子伝導特性と物性は意外と知られていません。それらの物性解明研究も行っています。
2011-01-24_2127.png
【略歴】
 1974年京都大学大学院理学研究科博士課程修了。1987年東京工業大学助教授。1998年東京工業大学大学院理工学研究科教授、現在に至る。
東京工業大学 理工学研究科 化学専攻 榎・木口研究室
・関連書籍

 

  • 小宮山 眞 氏 (東大先端科学技術セ)「化学ツールを活用したゲノム工学の創成」
Dr.人工酵素設計ーー
 セリウム(IV)/EDTAを用いたDNAの切断が代表的なお仕事。その手法とペプチド核酸(PNA)を用いて、DNAを望みの部位で切断するARCUT法を開発しました。筆者の知り合いにも小宮山研出身の方が何人かいるので喜んでいると思います。
2011-01-24_2210.png
【略歴】
1970年東京大学工学部工業化学科卒業、1975年東京大学工学系大学院博士課程修了、1975-79年の間、米国ノースウエスタン大学博士研究員を経て1979年東京大学 助手(工学部)となる。1987年筑波大学 助教授(物質工学系)、1991年東京大学 教授(工学部)、2000年より東京大学先端科学技術研究センター教授 (兼任)
小宮山研究室
 
  • 関根 光雄 氏 (東工大院生命理工)「生体関連核酸誘導体の効率的合成法に関する研究」
Dr. 人工核酸ーー
高性能をもつ革新的新機能人工核酸を創出することを目的として研究を行っています。最近、超精密塩基対形成認識能を有する、もしくは二重分子識 別法に基づく高精度遺伝子診断用DNA・RNAチップの開拓を行いました。
【略歴】
1977年 東京工業大学理工学研究科博士課程修了、1977年東京工業大学総合理工学研究科助 手、1988年同 講師、1989年 同理学部助教授、1990年 同生命理工学部 助教授を経て,1999年 から同教授
Sekine and Seio Laboratory
・関連書籍
  • 硤合 憲三 氏 (東理大理)「キラル有機化合物の不斉の起源とホモキラリティーの研究」
Dr. キラリティーーー
 不斉増幅という鏡像体過剰率が用いた触媒のものを上回る反応を研究。その研究の過程で、ある触媒が圧倒的な不斉増幅能を有することを発見しました。それは硤合不斉自己触媒反応とよばれ合成的な有用点は少ないが、ほぼ唯一の不斉の起源(Homochirality)を理解する為のモデル反応とみなされています。その反応の発見に伴い不斉の起源を探る研究を様々な観点から推し進めました。

2011-01-24_2221.png

【略歴】
1974年 東京大学 理学部 化学 卒業、1979年 東京大学 理学研究科 化学 博士課程 修了、1979年日本学術振興会奨励研究員、1979-1981ノースカロライナ大学 博士研究員、1981-1986 東京理科大学理学部 講師、1986-1991東京理科大学助教授 1991年東京理科大学教授現在に至る。
東京理科大学理学部第一部応用化学科  硤合研究室
  • 堂免 一成 氏 (東大院工)「水を分解するエネルギー変換型光触媒の開発」
 
 Dr. 分子光触媒ーー
 
 光エネルギーを化学エネルギーへ変換することを目的とした水分解光触媒を中心に、高い機能を持った新しい触媒の開発を行いました。理想的には太陽光と水から水素を作ることができれば、真にクリーンで再生可能なエネルギー源となります。そのような人工光合成型反応を実現するための光触媒の開発を目指し研究を行い、様々な触媒を開発することに成功しました。
2011-01-24_2225.png
【略歴】
1976年東京大学理学部化学科卒、1982年東京大学大学院理学系研究科博士後期課程修了後、
東京工業大学資源化学研究所助手となる。1985-1986年IBM Almaden Res. Cent. 博士研究員
を経て、1990年東京工業大学資源化学研究所助教授、1996年東京工業大学資源化学研究所教授となり、2004年より東京大学大学院工学系研究科教授、現在に至る。
DOMEN-KUBOTA LAB
以上、日本化学会学会賞の紹介でした。日本化学会春季年会(神奈川大学)にて受賞講演がありますので是非是非皆様足を運んでみてはどうでしょうか。ちなみにツイッターではハッシュタグ#csj91で今年の年会についての情報交換が行われる予定です。
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ノーベル化学賞田中さん 富山2大学の特任教授に
  2. 素材・化学で「どう作るか」を高度化する共同研究拠点、産総研が3カ…
  3. 後発医薬品、相次ぎ発売・特許切れ好機に
  4. 硫黄化合物で新めっき 岩手大工学部
  5. 分子情報・バイオ2研究センター 九大開設
  6. 富士フイルム、英社を245億円で買収 産業用の印刷事業拡大
  7. 第二回触媒科学国際シンポジウム
  8. 米FDA、塩野義の高脂血症薬で副作用警告

注目情報

ピックアップ記事

  1. クライン・プレログ表記法 Klyne-Prelog Nomenclature System
  2. クリーンなラジカル反応で官能基化する
  3. エッシェンモーザーメチレン化 Eschenmoser Methylenation
  4. Pure science
  5. 電子ノートSignals Notebookを紹介します!④
  6. 2021年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!
  7. リモートワークで結果を出す人、出せない人
  8. 研究者・開発者に必要なマーケティング技術と活用方法【終了】
  9. 化学者のためのエレクトロニクス講座~有機半導体編
  10. 隣接基関与 Neighboring Group Participation

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年1月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー