[スポンサーリンク]

ケムステニュース

ESI-MSの開発者、John B. Fenn氏 逝去

[スポンサーリンク]

 

(写真:Welt Online)

ジョン・フェン氏(02年ノーベル化学賞受賞者、米バージニア・コモンウェルス大教授)米バージニア・コモンウェルス大のウェブサイトによると10日死去、93歳。タンパク質のような生体高分子の同定、構造解析の手法を開発し、02年のノーベル化学賞を田中耕一・島津製作所フェローと共同受賞した。(引用:47NEWS

 

エレクトロスプレーイオン化質量分析法の開発で有名な、ジョン・B・フェン氏が2010年12月10日、お亡くなりになりました。


化合物の質量分析を行うには、試料をイオン化してやる必要があります。しかし従来法ではその条件が厳しく、試料の開裂(フラグメンテーション)が起きてしまうなどの問題があり、測定できる分子の大きさが限られていました。

フェン氏が開発したエレクトロスプレーイオン化法(ESI)は溶液中の試料を、大変ソフトな条件でイオン化することができます。測定可能な分子量上限を大幅に(100万程度にまで)引き上げ、今ではたんぱく質や生体高分子などをはじめとする、複雑物質の構造解析に欠かせない分析技術のひとつとなっています。

この功績が高く評価され、氏は田中耕一氏、クルト・ヴュートリヒ氏とともに2002年のノーベル化学賞を共同受賞しています。

驚くべきことですが、ノーベル賞の評価対象となった論文は、彼が70歳を超えてから発表されたものだとか。研究者はいくつになっても創造的な仕事をすることができる、というよい例かもしれませんね。

ESI-MSはわれわれ有機化学者にとっても日常的に使える、馴染み深い測定技術でもあります。このような優れた技術の開発者に敬意を表し、ご冥福をお祈りいたします。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4621061631″ locale=”JP” title=”マススペクトロメトリー”][amazonjs asin=”4758101868″ locale=”JP” title=”見つける、量る、可視化する! 質量分析実験ガイド〜ライフサイエンス・医学研究で役立つ機器選択、サンプル調製、分析プロトコールのポイント (実験医学別冊 最強のステップUPシリーズ)”]

 

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 科学的発見を加速する新研究ツール「SciFinder n」を発表…
  2. 肺がん治療薬イレッサ「使用制限の必要なし」 厚労省検討会
  3. 光熱変換材料を使った自己修復ポリマーの車体コーティングへの活用
  4. 化学系プレプリントサーバー「ChemRxiv」のβ版が運用開始
  5. picoSpin世界最小NMRシステムの販売開始
  6. 旭化成ファーマ、北海道に「コエンザイムQ10」の生産拠点を新設
  7. Advanced Real‐Time Process Analy…
  8. 植物性油の再加熱によって毒物が発生

注目情報

ピックアップ記事

  1. 佐藤しのぶ ShinobuSato
  2. 基底三重項炭化水素トリアンギュレンの単離に世界で初めて成功
  3. 創薬化学における「フッ素のダークサイド」
  4. 有機合成化学協会誌2019年8月号:パラジウム-フェナントロリン触媒系・環状カーボネート・素粒子・分子ジャイロコマ・テトラベンゾフルオレン・海洋マクロリド
  5. 炭素をつなげる王道反応:アルドール反応 (2)
  6. メンデレーエフ空港
  7. 無保護カルボン酸のラジカル機構による触媒的酸化反応の開発
  8. 【日産化学 24卒/Zoomウェビナー配信!】START your chemi-story あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE
  9. 世界最高の耐久性を示すプロパン脱水素触媒
  10. 多角的英語勉強法~オンライン英会話だけで満足していませんか~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年12月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP