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2010年10大化学ニュース

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ミレニアムから10年を迎えた2010年ももう終わり。年々早くなっているなあと思うのは歳のせいでしょうか。この2010年を振り返ってみると、様々なことがありました。日本では尖閣諸島沖での中国船との衝突、そしてビデオ流出問題が各ニュースでも大きく取り上げられました。宮崎での口蹄疫の発生、鳩山首相の退陣、菅内閣の発足、100歳以上の方々の所定不明事件、JALの破綻…。海外を見てみるとメキシコ湾のオイル流出事件、ソブリン危機、iPhone4、iPadなどのApple社の躍進が注目ニュースの一部ですが、やはり中国の躍進ということが肌でも感じられました。全体的にあまりポジティブなニュースがなくネガティブなスパイラルに陥っている感が中国以外で感じられたように思います。【2010年ニュースin 日本】【2010年世界の10大ニュース
さて、それでは科学、特に化学の世界ではどうであったでしょうか。今回「これ!」というものは皆様共通であると思っています。というわけで、年末恒例の10大ニュース、2010年を振り返ってみましょう。

アルゴリズム?いや医薬品2010年問題の始まり

2010年問題、金融、情報分野でも「暗号アルゴリズムの2010年問題」というのがあったらしいですが、ここでいう2010年問題はやはり製薬会社の特許切れ問題の話でしょう。

日本でも、2010年11月に年間3200億円以上を売り上げたアリセプトの米国特許切れ、12月に第一三共の抗菌剤クラビット(約800億円)、そして、来年1月には武田薬品工業の糖尿病治療薬アクトス(3800億円)の米国特許が失効します。2010年問題といっても2010年に突然はじまるというわけでものなくこの前後の2年間に切れる製薬特許のことですが、上記の3つは主力品としてそれぞれの企業の躍進を担ってきたわけですから、これらがなくなると考えると今後数年間の各企業の状況によっては存続も危ぶまれる状況もあるかもしれません。

そんな暗い状況のなか、エーザイがアリセプト特許切れ前に放った抗ガン剤エリブリン。会社の飛躍をかけた製品であると同時に、天然物化学者、有機合成化学者の夢がかなった医薬品でありました。

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南アフリカではサッカーW杯、日本では国際化学オリンピック

2010年の夏は4年に一度のサッカーの祭典、FIFAワールドカップが南アフリカで行われました。これを視聴するために寝不足となった人も多かったと思われます。日本も決勝トーナメントまで進み新たなスターがうまれました。

一方で、化学の世界では、同時期に全世界の化学好き高校生の力を問う国際化学オリンピックが行われました。今年ははじめて日本で行われたこともあり、出場高校生にとっては海外に行けなくて残念であったと思いますが、大いに盛り上がったと思います。そのためか、金メダル2枚、銀メダル2枚という過去最高の成績で大会を締めくくることができました【関連ニュース】。実はこの国際化学オリンピック、40年以上の歴史があるのです。日本が参加したのは7年前からですが、今後も高校生の諸君はこの化学オリンピックに参加することを目指して、化学を学んで欲しいと思います。このなかから新たな化学会のスターが生まれることを祈って。

日本科学を盛り上げたはやぶさとカップリング反応

 

科学研究費関連に関する仕分け、昨年に続いて今年も続きました。最終的に大学や研究所が中心となって利用する研究費である科学研究費補助金の大幅増額が決定しました。この理由はやはり仕分けを受けた衛星「はやぶさ」のがんばりと、今年最も科学界で注目された、日本人化学者のノーベル化学賞の受賞出会ったと思われます。

皆さんご存知のように、長年最有力候補として知られていた「クロスカップリング反応」がついに2010年ノーベル化学賞を受賞しました。受賞者は、根岸英一パデュー大教授、鈴木章北海道大学名誉教授、そしてリチャード・ヘック元デラウェア大学教授でした。素晴らしい盛り上がりを見せ、化学界、日本の合成化学の力を示した反面、やはり日本の報道の仕方にいくつか問題が上がりました。問題になるということは世間を動かす力がメディアにあるということですから、過度の報道や極論は避けていただきたいと思います。なにはともあれ、前述したように来年には科研費が大幅増額され、さらなる「結果」の創出が求められる時代となってきているように感じます。

 

次世代スパコンとXFEL

昨年同時に事業仕分けの槍玉に挙げられたスパコンことスーパーコンピューター。皆さんこれが国家基幹技術と言われる、「国家的な大規模プロジェクトとして基本計画期間中に集中的に投資すべき基幹技術」であるということをご存知であったでしょうか。その国家基幹技術は5つあり、そのなかに「X線自由電子レーザー」(XFEL)というものがあります。これは低分子はもちろんタンパク質など結晶化が困難な大きなものまで「結晶化せずに原子レベルの構造を見る」ということが可能になると言われています。2010年ついにこの施設が完成し、現在試験稼働であり、来年の運用を目標に動いています。大きな国家プロジェクト、この施設にも建設費だけで400億円以上かかっています。それに対する対価がどの程度なのか計り知れませんが、この完成により世界最先端の研究が可能になる施設になることは間違いありません。来年の稼働がいまから楽しみですね。

 

功労者多数!化学の褒章2010

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海外まで取り上げると話がややこしくなるので、ここでは2010年に化学の世界で大きな賞を受賞した、つまり素晴らしい化学研究の展開で化学に貢献した人を羅列したいと思います。

ノーベル化学賞:根岸英一、鈴木章
文化勲章:根岸
英一、鈴木章
文化功労者:藤嶋昭
紫綬褒章:(春)林民生岩本正和 (秋)相田卓三、鈴木啓介

バートン・ゴールドメダル:野依良治

おめでとうございます!来年も多数の受賞者が出ることを期待して!
まだまだ後半に続きます!

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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