[スポンサーリンク]

ケムステニュース

2010年日本化学会各賞発表-学会賞-

[スポンサーリンク]

 先日22日に平成21年度の日本化学会各賞の発表がありました。毎年行われている春季年会で各受賞者の表彰式が行われます。各世代で活躍している第一線の研究者が受賞しているので、この機会に簡単ですが、紹介したいと思います。まずは日本の化学界の頂点!学会賞(The Chemical Society of Japan (CSJ) Award)編です。

第62回日本化学会学会賞
  • 碇屋 隆雄 (東工大院理工) 「協奏機能分子触媒の開拓と応用」

Dr.遷移金属触媒ーー
金属と配位子の結合性に由来する協奏機能を有する遷移金属錯体(協奏機能触媒)に注目し、それらが高性能分子触媒として不斉還元や不斉炭素- 炭素結合および炭素- 窒素結合形成反応を効率よく促進することを見いだしました。
最近では、協奏機能分子触媒によるアルコール類の空気酸化を課題とし、Ru、Ir触媒を用いて、温和な中性条件下アルコールの空気酸化が進行することを見出しています。
【略歴】1976年東京工業大学博士課程修了(山本明夫教授)。東京大学助手、NKK中央研究所研究員を経て(その間1979年から2年間カリフォルニア工科大学博士研究員(Grubbs教授))、1991年ERATO分子触媒プロジェクト(野依良治教授)チームリーダーとなる。その後1997年東京工業大学教授となり、現在に至る。
  • 池田 富樹 (東工大資源研) 「協同現象を利用した新しい光機能材料の創出」

Dr.光機能材料ーー
アゾベンゼンを規則正しく配列させて組み込んだ、光応答性ポリマーを開発しました。光を当てることでマクロスコピックな構造変化を引き起こす事が可能です。
(画像:池田・宍戸研究室HPより)
【略歴】1973年京都大学高分子化学科卒業。1978年同大学院博士課程を修了し、英国リバプール大学博士研究員となる。その後、東京工業大学資源化学研究所助手、助教授を経て1994年より現職。
・池田・宍戸研究室
  • 魚崎 浩平 氏(北大院理) 固液界面におけるナノ構造のその場決定と機能性物質相の構築」

Dr.固体表面化学ーーー
界面、表面化学は近年興隆しているナノテクノロジーを理解するために非常に重要な分野です。受賞タイトル通り、これまで固液界面におけるナノ構造のその場決定と機能性物質相の構築を行ってきました。
最近では、多核錯体を固体表面に固定し、メタノール酸化や二酸化炭素還元反応など多核錯体の特性を生かした電極触媒への応用も試みています。
【略歴】1969年大阪大学工学部応用化学科卒業、同大学院に進み修士課程を修了した後、三菱油化に就職。3年後、南カリフォルニア大学へ留学、1976年同博士課程修了。 1978年よりオックスフォード大学無機化学研究所研究員となる。1980年帰国し、北海道大学講師、助教授を経て、1990年同大教授となり現在に至る。
  • 大須賀篤弘 氏(京大院理) 「構造的・電子的に新規なポルフィリノイドの開発と展開」


Dr.ポルフィリンーー
光合成系や生体内にもよく見られるポルフィリンを骨格とした「ポルフィノイド」の開発を行いました。例えば、ポルフィリンの環を拡大した環拡張ポルフィリンや独自に開発した銀塩酸化法によってメゾ位で直接ポルフィリン同士が結合した「メゾ-メゾ結合ポルフィリン多量体」などシンプルな発想ながら誰も達成していなかったポルフィノイドを合成し、その特徴的な”機能”を生かし、様々な反応や材料として応用しています。
(画像:大須賀研HPより)
最近では環拡張ポルフィリンであるヘキサフィリン、オクタフィリンの金属錯体が 4nπ電子共役系とねじれた環状構造によりメビウス芳香族性を持つことを見出してます。
【略歴】1977年京都大学理学部卒業、同修士課程、博士課程に進み、1979年に同大学院を中退し愛媛大学助手となる。1984年京都大学助手となり、1987年助教授、1996年教授となり現在に至る。
  • 篠原 久典 氏(名大院理) 「金属内包フラーレンとナノピーポッドの創製と評価」

Dr.ナノカーボンーー
一貫してナノカーボンケミストリーに従事し、フラーレンに金属を挿入した金属内包フラーレンの合成と単離に初めて成功しました。さらに、フラーレンを内包したカーボンナノチューブであるナノピーポット(ナノさやえんどう)を創成しました。これらの見た目にも興味深い材料を使って、多くの応用研究を行っています。
金属内包フラーレン
ナノピーポット
【略歴】1977年信州大学理学部化学科卒業。京都大学大学院に進学し、博士課程中退した後、1979年岡崎分子科学研究所助手となる。1988年三重大学工学部分子素材工学科助教授となった後、1993年より名古屋大学理学研究科教授となり現在に至る。
  • 春田 正毅 氏(首都大学東京院都市環境) 「金ナノ粒子の新しい触媒作用」

Dr.ゴールドーー
 昔から金は化学的に不活性であるとされてきましたが、直径10 nm以下のナノ粒子として 卑金属酸化物や活性炭に担持することで、特に低温で白金やパラジウムより優れた触媒活性を発現することを明らかとしました。現在の金触媒研究に多大な貢献を与えています。
【略歴】1970年名古屋工業大学卒業。1976年京都大学大学院博士課程を修了した後、大阪工業技術研究所研究員となる。1994年首席研究官、1999年部長となる。2005年より首都大学東京教授となり現在に至る。
春田研究室
以上、日本化学会学会賞の紹介でした。日本化学会春季年会(近畿大学)にて受賞講演がありますので是非是非皆様足を運んでみてはどうでしょうか。ちなみにツイッターではハッシュタグ#CSJ90で今年の年会についての情報交換が行われています。
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. やせ薬「塩酸フェンフルラミン」サヨウナラ
  2. 米FDA立て続けに抗肥満薬承認:Qsymia承認取得
  3. 日本で発展する化学向けAIと量子コンピューターテクノロジー
  4. ドイツのマックス・プランク研究所をご存じですか
  5. ブドウ糖で聴くウォークマン? バイオ電池をソニーが開発
  6. モンサント、住友化学 雑草防除で協力強化
  7. 発展が続く新型コロナウィルス対応
  8. お茶の水女子大学と奈良女子大学がタッグを組む!

注目情報

ピックアップ記事

  1. マイクロ波加熱を用いた省エネ・CO2削減精製技術によりベリリウム鉱石の溶解に成功
  2. 海洋生物の接着メカニズムにヒントを得て超強力な水中接着剤を開発
  3. 光速の文献管理ソフト「Paperpile」
  4. 「不斉化学」の研究でイタリア化学会主催の国際賞を受賞-東理大硤合教授-
  5. どっちをつかう?:adequateとappropriate
  6. 金属容器いろいろ
  7. 第四回 ケムステVシンポ「持続可能社会をつくるバイオプラスチック」
  8. スローン賞って知っていますか?
  9. 化学五輪、「金」の高3連続出場 7月に東京開催
  10. 嫌気性コリン代謝阻害剤の開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年1月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP