イタリアの弦楽器製作者アントニオ・ストラディバリ(Antonio Stradivari、1644~1737)が作った弦楽器の名品ストラディバリウス(Stradivarius)。
その特別な音色の秘密として木材や接着剤、防虫剤としての鉱液、バイオリンの形状など、専門家の間でさまざまな議論がかわされてきたが、有力視されてきたのは表面の塗装に使われた「ニス」だった。
しかしフランスとドイツの専門家チームが、4年にわたる研究の結果、ニスはごく普通のものだったと発表した。(引用:AFPBBNews)
なぜ他のバイオリンとちがった美麗な音色が生み出されてくるのか―その秘密は、バイオリンに塗られている「ニス」にあるというのが有力な説とされてきました。
しかしこのたびドイツ・フランスの研究者がニスの分析を行い、別段特殊なレシピを用いているわけではない、ということを示してしまいました。
Angewandte Chemie誌に報告された論文によれば、ニス自体はよくある「油」と「松やに」だけでできているシンプルなもので、かつて言われていた琥珀、蜂蝋などの特殊な物質は含まれなかったとのこと。
「ストラディバリは特別な秘密の材料を使わなかったのかもしれない。弦楽器製作、特に木材の仕上げに秀でた工芸家だったのだろう」(引用:AFP BBNews)
筆者自身、この辺の話を以前ギャラリーフェイク (14巻)で面白く読んでたのですが、うーん、なんか一つ夢がなくなったなぁと言う感じではありますね・・・
以前「化学者のつぶやき」で紹介した美術品修復研究などもそうなのですが、こういう趣のある仕事が一流ジャーナルに載るというのも、やはり科学が文化に根付いているヨーロッパならでは、なんでしょうね。
関連文献
“The Nature of the Extraordinary Finish of Stradivari’s Instruments”
Echard, J.-P.; Bertrand, L. et al. Angew. Chem. Int. Ed. Early View. DOI : 10.1002/anie.200905131
関連書籍
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外部リンク
- アントニオ・ストラディバリ – Wikipedia
- バイオリンの名器『ストラディバリウス』は小氷期の賜物か:CTスキャン分析(WIRED VISION)
- 菌類にかもされた木材を使い、名器「ストラディバリウス」を超える音色を作りだす(slashdot.jp)
- ストラディバリウスの音色の秘密は「ニス」にあらず、仏独研究(AFP BBNews)
- What Exalts Stradivarius? Not Varnish, Study Says (NYTimes)
- Stradivari’s Violin Secret? His Talent (Scientific American)