「2009年10大化学ニュース」に引き続きPart 2です。あと5つ!2009年の化学を「一般」ネタとかけつつまとめます。
Twitter大流行!「化学者のつぶやき」にも注目!
2009年に国内でブレイクした”つぶやき”Twitter。1月の時点で利用者数が20万人であったのが2009年11月時点で200万人を超え、実に10倍の利用者数となりました。最近では鳩山首相Twitter」の使用に対し意欲を示していることがわかり来年度も益々人気になると思われます。ただし、本家アメリカでは利用者数2300万人前後で頭打ちし、若干ながら減少しているということです。実は日本でもここ3ヶ月は利用者数が頭打ちしているということで、如何にネットの世界では栄華盛衰が早いかが、みてとることができます。
ところで、本サイトでも今年5月からTwitterを始めております ( @chemstation)。フォローワもこんな化学ネタしか発信しない、マニアックなTwitterであるにもかかわらず、おかげさまでもうすぐ500を超えるところです。記事にするには時間、内容的に書けないものや、更新情報、ちょっとした化学のネタの発信やメモに大いに役立っています。まさに本当の「化学者のつぶやき」といったところです。
それでは、その「化学者のつぶやき」はどのくらい今Twitterにあるのでしょうか。
以下いくつか抜粋したいと思います。
@chem-station : 我々のツイッターです。
@NatureChemistry: Nature Chemistryのツイッター。
@ChemistryWorld :イギリス化学会の雑誌ChemistryWorldのツイッター。
@ACSpressroom :アメリカ化学会出版のツイッター。
@J_A_C_S :Jurnal of American Chemical Societyのツイッター。
@angew_chem :Angewandte Chem のツイッター
@sigmaaldrich; アルドリッチのツイッター
@Wiley_Chemistry: 出版社ワイリーのツイッター
@Nobelprize_org :ノーベル賞のツイッター。
@kasoken :サイエンスライター内田さんのツイッター
@5goukan:有名ブログ5号館のつぶやきの管理人のツイッター
@NatureNews :ネイチャーのニュース
@ChemistryNews:化学関連のニュースに関して
@totsyn :有名ブログTotallysynthetic.comのツイッター
@SCCJ :日本コンピューター化学会のツイッター
@OrgChemMuse :有名ブログ有機化学美術館佐藤さんのツイッター。
@ecochem :生活環境化学の部屋の本間さんのツイッター。
@drug_discovery :製薬会社につとめる研究者のツイッター。
@CSJPR : 日本化学会のツイッター。
今年はノーベル化学賞の速報や、アメリカ化学会年会などの実況中継、論文ASAPのオンライン公開前のタイトル発信、昨年亡くなったFagnou教授の速報、事業仕分けについての議論など様々な話題が飛び交いました。現在は「今年の10大分子」についての投票を行っています(#sci_on)。
来年はどのようにこのTwitterが使われていくでしょうか。
米アカデミー賞に「おくりびと」「つみきのいえ」、今年の化学関連賞は?
2009年のアカデミー賞では外国語映画賞に「おくりびと」(滝田洋二郎監督、本木雅弘主演)、短編アニメーション賞には日本初となる「つみきのいえ」(加藤久仁生監督)がそれぞれ選ばれ、日本作品がダブル受賞しました。邦画の2冠獲得は、1955年に「地獄門」が名誉賞(現・外国語映画賞)と衣装賞を受賞して以来だそうです。
ところで、化学界の受賞関連の話題はというと、今年も多くの日本人化学者たちが賞を受賞いたしました。以下に一部抜粋致します。
・ロレアル-ユネスコ女性科学賞 小林昭子(日大・東京大名誉教授)
・日本学士院賞 竜田邦明 (早稲田大学教授)
・京都賞 赤﨑勇(名大学特別教授・名城大教授)
・紫綬褒章 齋藤軍治(京大)、筒井哲夫(九大)、細野秀雄教授(東工大)、福山透教授(東大)、上村大輔教授(慶応大)、中村栄一教授
・ACS Award in Polymer Chemistry 相田卓三(東大教授)
・ACS Award for Creative Work in Synthetic Organic Chemistry 山本尚(シカゴ大教授)
来年はノーベル化学賞が来ることを願っています。
世界天文年、それに因んだ?112番目の”星”
1609年イタリアの化学者ガリレオ・ガリレイが初めて空に望遠鏡を向けて星を観測しました。それから400年後が2009年にあたり、そういうわけで今年は世界天文年と呼ばれ、様々な記念の催し物が行われました。
一方で、周期表112番目の”星”であるウンウンビウムが今年正式に元素として認定されました。初めて発見したのはドイツ西部ダルムシュタットの重イオン研究所のホフマン教授と研究員達でなんと13年も前の1996年のことでした。それから再現を取り、もう一度この新元素が確認したのが2007年。ようやく今年になって認定されたわけです。この勢いですと、ニホンで発見された113番目の元素もまだまだ命名には時間がかかりそうです。
新元素の発見者に命名権が与えられることから、どんな名前でもつけることができます。ホフマンらはこの112番目の元素を”コペルニシウム(Copernicium)“と名づけました。この名は地動説を唱えたコペルニクスからとったものです。すなわち地動説を証明したガリレオが星を望遠鏡で観察してから400年後、コペルニクスの名はついに元素にもなりました。
2009年には114番目の元素の追試が成功したという報道もありました。あと5年くらいすれば113番目、114番目の”星”にも名前がついているかもしれません。
事業仕分け、化学も例外ではない
今更解説するまでもない民主党による事業仕分け。蓮舫さんが国会議員であったこといやむしろ存在をこれで知った人も多いことでしょう。きっかけの内容は別としてこれで有名になったことは間違いありません。「化学」と銘打って減額されたものはありませんでしたが、SPring-8などは一部の化学研究にも必須であります。さらに驚愕であったのは「若手」の減額です。お金とかなにより「若手」=「社会に出れない学生の延長」と思われていたことが一番の驚愕なことでした。アメリカでは同じ年齢で第一戦のPIとして活躍しているひとがほとんどです。日本の講座システムには素晴らしいところがたくさんありますが、それをうまく使えるヒトがどれだけいるのかは疑問です。
もちろん全力で研究しなければならないのは今更いうまでもないです。しかし、結果、実用的という方向性だけなのはおかしいと思いますが、研究者にも「研究の面白さを表現する能力」が必須であるということを実感された方は多かったのではないでしょうか。そういう馬としてインターネットをうまく活用することは重要であり、「若手」の皆さんの参入を望んでいます。
P.S.内容は別として、個人的に野依良治理化学研究所理事長の
「不用意に事業の廃止、凍結を主張する方には将来、歴史の法廷に立つ覚悟ができているのか問いたい」
というフレーズが今年の流行語大賞です。というわけで最後のニュースに続きます。
2009年「キーワード」「分子」
今年の流行語大賞は10大ニュース1位と同様にPartIに示した通り「政権交代」でした。それでは化学界、特に学術関係の流行語大賞もしくは注目キーワードや分子(化合物)はなんであったのでしょうか。これはすべての分野を総じてみていなければセレクションが大変難しいので、筆者の専門である有機化学分野に限ります。今年は
「有機薄膜太陽電池」「CーH結合活性化(官能基化)」「Nーヘテロ環状カルベン(NHC)」
であった気がします(完全に独断です)。しかしながら、今年にぱっと出てきたキーワードでなく数年前から加速度的に露出が増えてきた分野です。そういうわけで、すでに第一の壁が見えており、これらのブレイクスルーに必要となる「創造」、「反応」、「ヒト」が必要です。これを乗り越えた研究者が分野の真の第一人者となっていくことでしょう。
また今年注目であった「分子」に関しては上述したようにツイッター(#sci_on)で話題になっておりますので、割愛しますが、私も以下の通り「候補」をいくつか投票しました(11個、順不同)。みなさんもぜひ投票してみてください。
CPP(Cyccloparaphenylene) :Bertozzi、伊丹、山子らが合成
N-ヘテロ環状カルベン(NHC):論文で毎週おみかけしました。
ビニグロール(Vinigrol) : Coreyも作れなかった超複雑天然物の全合成 #sci_on
oseltamivir :今年も大変お世話になりました。
CO2 : 皆を”悩ませた”分子ですね
Haplophytine :福山先生の日本での仕事の集大成とも言えます。
リボソーム :超巨大分子。2009年ノーベル化学賞。
febuxostat :大人の皆さんに必要かもしれません
E7839 :上村、岸両教授とエーザイの汗と涙の結晶です。
Adhesamine :細胞を集めて増やすユニークな化合物。
2-シクロプロペンカルボン酸 : きのこの毒、極めてシンプルしかし面白い。
来年もよろしくお願いいたします!
いかがであったでしょうか?かなり強引な「一般」と「化学」つなげ方もあったかもしれませんがご容赦を。
この他にも10大ニュースには含めませんでしたが、大きな話題として来年2010年末までにACSが冊子体を取りやめWebのみにするという発表がありました(正しくはそこまでではなくて主要3誌以外の冊子体を縮小させる)。筆者の分野でも学会誌がWeb版と冊子体の共存に移行しようとしていますし、一般的にも「科学と学習」や「小学○年生」が休刊になりました。これに関してはまた来年お話したいと思いますが、ついに化学業界にも「Web戦国時代」が始まることとなります。これまで以上にWebでの情報発信が必要不可欠になると思います。
来年は筆者個人的な話で恐縮ですがこれまでで「最高の年」としたいと思っております。研究もWebもがんばりますので今後とも宜しくお願い致します。それでは良いお年を!