2009年あと2日で終わり。私は、既に早めの冬休みを終え、すでに2010年に向けて全力で走っております。
ところで、2009年一般的な10大ニュースの1位といえば
「政権交代」
でした。我々を政治に関心を向けたと言えば、近年で一番の大事件であったかもしれません。さて、そんな2009年、「化学」の分野ではどんな出来事があったのでしょうか?「一般」と「化学」をミックスさせた内容をランダムですがいくつか紹介して今年を締めくくりたいと思います。
インフルエンザ大流行!縁の下にタミフルあり
2009年に世界中で猛威を振るった新型インフルエンザ。国内でも5月に大阪府の男子高校生らが成田空港での検疫で初の感染者と確認され、死者も100人を超えました。実際インフルエンザにかかって苦しんだ人もいるでしょう。そんな中「縁の下の力持ち」として頑張っていたのが、インフルエンザ治療薬であるタミフルです。おそらくインフルエンザと診断され処方されるのはこれか、もうひとつのインフルエンザ治療薬リレンザであったに違いません。病は気からといいますが、それだけではなくこれがなかなか効くのです。おそらくこの薬がなかったら、現在でも猛威を奮い、多くの人の命を奪ったことでしょう。来年も続くであろうインフルエンザの脅威にタミフルはさらに重要な医薬品の一つとなりました。また、グラクソスミスクラインのリレンザ、そして来年秋頃に承認発売されるであろう塩野義製薬のペラミビル、今後期待される第一三共のCS-8958、富山化学T-705にも注目です。
MJ急死、そして化学界のライジングスターも
「キング・オブ・ポップス」といわれたマイケル・ジャクソンの急死には多くの世代の方が驚いたことでしょう。日本でも俳優森繁久彌さんなど多くの著名人がお亡くなりになられました。人には生まれそして死が必ず訪れます。化学界でも多くの有名な化学者がこの世を去りました。なかでもカナダオタワ大学のFagnou教授は前述のニュースとも関連するのですが、新型インフルエンザが原因で39歳という短い生涯を終えました。カナダ化学会のホープ、ライジングスターといわれていただけにその衝撃は大きなものでした。後日もう一度ご冥福をお祈りいたしまして追悼特集を書きたいと思っています。
また、化学とコンピュータの境界領域ではオープンソースの分子グラフィックスツールであるPyMOLの開発者ウォーレン・デラノも37歳という若さで亡くなりました。t-ブチルリチウム発火によるUCLA研究員の死亡事故も今年でした。皆さん実験事故にも気を付けましょう。
その他2009年の訃報は次の通り(一部抜粋)
1月16日 村橋俊介(101歳、大阪大学名誉教授、高分子化学)
2月2日 神谷功(85歳、名古屋大学名誉教授)
3月18日 古川淳二 (96歳、京都大学名誉教授、高分子化学)
4月1日 大田正樹(96歳、東京工業大学名誉教授、有機化学)
5月16日 Roger E. Koeppe(87歳、オクラハマ大学名誉教授、生化学)
5月19日 Robert F. Furchgott (92歳、ニューヨーク州立大学、生化学、1998年ノーベル生理学・医学賞)
12月14日 横川 親雄(87歳、関西大学名誉教授、石炭化学)
12月15日 松田治和(80歳、大阪大名誉教授、有機工業化学)
12月21日 Edwin G. Krebs (91歳、ワシントン大学名誉教授、生化学、1992年ノーベル生理学・医学賞)
オバマ「核なき世界」でノーベル平和賞、化学賞は生化学
2009年のノーベル平和賞はバラク・オバマ米大統領に授与されました。就任して1年にも満たない首脳への授賞は異例でしたが、同委員会は「人びとによりよき未来への希望を与えた」と称賛しました。国際平和や地球環境などの問題に対話と協調を行動原則として取り組む意志を明確に表明したオバマ氏に、大きな期待を寄せています。
というわけで、今後に”期待”を寄せてといった意味も含めるノーベル平和賞であったわけですが、一方で、ノーベル化学賞は英MRC分子生物学研究所のベンカトラマン・ラマクリシュナン博士と米 エール大のトーマス・スタイツ教授、イスラエルのワイツマン科学研究所のエイダ・ヨナス博士の3氏に授与されました。
今年こそは有機化学だろう!と思っていた、我々には拍子抜けした内容で有りましたが、細胞内でたんぱく質を合成する小器官リボソームの構造と機能の解明はノーベル賞に十分に値するものでした。「化学」の範囲が広がっていると考え、来年の有機化学からの受賞を”期待”します。ちなみに恒例のイグ・ノーベル賞の化学部門は「テキーラからダイヤモンドを作り上げたことに対して」送られました。これもある意味”期待”した通りの面白い研究だったと思います。
GM破綻、トヨタ赤字、化学・製薬業界は?
2009年連結決算での日本を代表する企業トヨタの赤字、6月の米国GMの破たんと自動車業界は散々な内容で、その影響も含めてさらに不況に陥っていった2009年でしたが、化学業界と製薬業界はどうだったのでしょうか。
化学産業の原料であるナフサ価格は年始46.34ドルから10月には80ドルを超えました。昨年(2008年)と比較すれば安定していたものの、値幅が激しいものとなりました。バルク製品をつくる石油化学の赤字が大きく、続ける意味自体が問われています。また、総合化学大手の今年の業績もすべて減益となり、他の産業と同じように不況の影響を大きく受けています。合併、統合では、
三菱化学と旭化成の水嶋コンビナートエチレン部門の統合
三井化学フィルムシート部門子会社合併
三菱化学・チッソ・旭化成ケミカルズ、肥料事業統合
三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンを買収
身近なところでは新日鉱HDのJOMOブランドは廃止され新日石のENEOSに統一されることでしょうか。
それに対して、製薬業界は、業績は「不況に強いお薬業界」であったもののまたいくつか合併が有りました。
1月 米ファイザーによるワイス買収
1月 米メルクによるシェリング・プラウ買収
7月 久光製薬、米ノーベンを約400億円で買収
8月 ゼリア新薬、スイスのティロッツを約120億円で買収
9月 大日本住友製薬、米セプラコールを約2400億円で買収
2010年問題(2010年前後に大型医薬品の特許切れが始まる)に突入の2010年、一体どうなっていくのでしょうか。
特許切れ予定医薬品一覧
2009年 タケプロン、ハルナール
2010年 アリセプト、クラビット、パキシル、コザール
2011年 リピトール、アクトス
2012年 ブロプレス、シングレア、バイアグラ
2013年 パリエット
CO2日本25%削減目標、と科学者の「影」をみた
鳩山総理が二酸化炭素排出量の25%削減目標をかかげて望んだCOP15が行われました。その反面、真意の程はわかりかねますが、一部の科学者の「捏造問題」(ClimateGate事件)が話題となりました。全体の方向性が変わるとはおもいませんが、科学者の倫理がもう一度問われる内容でした。
というわけで、10大化学ニュースをまずは5つ上げてみました。続きはPartIIへ!