[スポンサーリンク]

ケムステニュース

2009年ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞発表

[スポンサーリンク]

loreal_unesco2009.jpg

優れた研究成果を挙げた若手の女性科学者をたたえる「ロレアル・ユネスコ女性科学者日本奨励賞」の今年の受賞者に東北大の海老根真琴さん(28)ら4人が決まり、7日、都内で、それぞれに賞状と奨学金100万円が授与された。(写真・文章引用:47NEWS)

少し前のニュースですが、今年四回目となるロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞が発表となりました。

化粧品メーカーの日本ロレアルと日本ユネスコがスポンサーとなって、世界最先端の研究に携わる優れた女性科学者の卵(博士課程の大学院生)を対象として授賞しています。

このたび、物質科学分野から2名、生命化学分野から2名が選出されました。ここは化学ニュースブログなので、物質化学領域の受賞者にスポットをあてて、紹介したいと思います。


海老根真琴 (東北大学大学院 理学研究科・写真左端)
受賞理由:「天然由来の新規薬剤開発を目指して: 海洋天然有機化合物ブレベナールの効率的化学合成」

海産ポリエーテル系天然物の一種である、ブレベナール(brevenal)の化学全合成研究にて受賞しています。ブレベナールはフロリダの赤潮にいる渦鞭毛虫、Karenia brevisから単離された化合物です。

brevenal.gifブレベナール自体は類縁化合物のブレベトキシンと違い、毒性はありません。

その一方で動物実験に依れば、気管粘膜の機能障害をピコモル濃度レベルで改善する働きをもつそうです。メディアではこの作用を眺めてでしょう、「ぜんそく治療薬の材料に期待される」として報道されていました。

法整備に頼って雇用の場を強制的に設けなくてはならない、産休などで長期休養になってしまうと研究の第一線から早々にドロップアウトせざるを得ない・・・日本社会での、女性科学者に対するサポートや態度は、未だお世辞にも良いものとは思えません。

このような女性科学者を奨励する営みこそは、もっと増えてしかるべきですし、女性科学者に対する社会的理解も、より改善されたものに・・・というよりは、より”素直なもの”になって欲しいと、筆者は願うばかりですね。

  • 関連書籍
  • 定価 : ¥ 81
  • 出版社/メーカー : 講談社
  • おすすめ度 : (2 reviews)
    女性科学者を知る
    科学を支えた女性たち
  • 猿橋 勝子
  • 定価 : ¥ 1,890
  • 発売日 : 2002/05
  • 出版社/メーカー : 東京図書
  • おすすめ度 : (1 review)
    まだまだまだまだがんばる気にさせられます
  • 松下 祥子
  • 定価 : ¥ 893
  • 発売日 : 2008/12
  • 出版社/メーカー : 日本経済新聞出版社
  • おすすめ度 : (4 reviews)
    かつてないカテゴリーの本です。
    研究者生活の現在を知るための本、そして何かを変えるための本
    理系に進む人にお勧めの1冊
    科学者の素敵な日常が垣間見られます。

  • 関連論文

“Total Synthesis, Structure Revision, and Absolute Configuration of (-)-Brevenal”
Fuwa, H.; Ebine, M.; Bourdelais, A. J.; Baden, D. G.; Sasaki, M. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 16989. DOI: 10.1021/ja066772y

“Total Synthesis of (-)-Brevenal: A Concise Synthetic Entry to the Pentacyclic Polyether Core”
Ebine, M.; Fuwa H.; Sasaki, M. Org. Lett. 2008, 10, 2275. DOI: 10.1021/ol800685c

“Synthesis of Enzymatically-gellable Carboxymethylcellulose for Biomedical Applications”
Ogushi, Y.; Sakai, S.; Kawakami, K. J. Biosci. Bioeng. 2007, 104, 30.

“Enzymatically Crosslinked Carboxymethylcellulose-tyramine Conjugate Hydrogel: Cellular Adhesiveness and Feasibility for Cell Sheet Technology”
Sakai, S.; Ogushi, Y.; Kawakami, K. Acta Biomater. 2009, 5, 554,

“Phenolic Hydroxy Groups Incorporated for Peroxidase-catalyzed Gelation of Carboxymethylcellulose Support Cellular Adhesion and Proliferation”
Ogushi, Y.; Sakai, S.; Kawakami, K. Macromol. Biosci. 2009, 9, 262. doi:10.1002/mabi.200800263

  • 関連リンク

ロレアル・ユネスコ女性科学者
日本奨励賞 – Wikipedia

日本ロレアル

東北大学 佐々木研究室

九州大学 川上研究室

Pseudo-Brevenal (TotallySynthetic.com)

ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞2009(PDF)

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 肩こりにはラベンダーを
  2. 偽造ウイスキーをボトルに入れたまま判別する手法が開発される
  3. 富士フイルムのインフルエンザ治療薬、エボラ治療に
  4. アムロジンのデータ資料返還でファイザーが住友化学に仮処分命令申立…
  5. 細胞集め増やす化合物…京大化学研発見、再生医療活用に…
  6. カラス不審死シアノホス検出:鳥インフルではなし
  7. 理研、119番以降の「新元素」実験開始へ 露と再び対決 ニホニウ…
  8. 原油高騰 日本企業直撃の恐れ

注目情報

ピックアップ記事

  1. カチオンキャッピングにより平面π系オリゴマーの電子物性調査を実現!
  2. サイエンスアゴラの魅力を聞くー「日本蛋白質構造データバンク」工藤先生
  3. Al=Al二重結合化合物
  4. DNAに人工塩基対を組み入れる
  5. 鉄触媒での鈴木-宮浦クロスカップリングが実現!
  6. カプサイシンβ-D-グルコピラノシド : Capsaicin beta-D-Glucopyranoside
  7. スピノシン spinosyn
  8. 富士フイルム、英社を245億円で買収 産業用の印刷事業拡大
  9. ウィリアムソンエーテル合成 Williamson ether synthesis
  10. 2つのグリニャールからスルホンジイミンを作る

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

モータータンパク質に匹敵する性能の人工分子モーターをつくる

第640回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所・総合研究大学院大学(飯野グループ)原島崇徳さん…

マーフィー試薬 Marfey reagent

概要Marfey試薬(1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-アラニンアミド、略称:FD…

UC Berkeley と Baker Hughes が提携して脱炭素材料研究所を設立

ポイント 今回新たに設立される研究所 Baker Hughes Institute for…

メトキシ基で転位をコントロール!Niduterpenoid Bの全合成

ナザロフ環化に続く二度の環拡大というカスケード反応により、多環式複雑天然物niduterpenoid…

金属酸化物ナノ粒子触媒の「水の酸化反応に対する駆動力」の実験的観測

第639回のスポットライトリサーチは、東京科学大学理学院化学系(前田研究室)の岡崎 めぐみ 助教にお…

【無料ウェビナー】粒子分散の最前線~評価法から処理技術まで徹底解説~(三洋貿易株式会社)

1.ウェビナー概要2025年2月26日から28日までの3日間にわたり開催される三…

第18回日本化学連合シンポジウム「社会実装を実現する化学人材創出における新たな視点」

日本化学連合ではシンポジウムを毎年2回開催しています。そのうち2025年3月4日開催のシンポジウムで…

理研の一般公開に参加してみた

bergです。去る2024年11月16日(土)、横浜市鶴見区にある、理化学研究所横浜キャンパスの一般…

ツルツルアミノ酸にオレフィンを!脂肪族アミノ酸の脱水素化反応

脂肪族アミノ酸側鎖の脱水素化反応が報告された。本反応で得られるデヒドロアミノ酸は多様な非標準アミノ酸…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー