東北大の板谷謹悟・大学院工学研究科教授(表面科学)と庭野道夫・電気通信研究所教授(分子デバイス)の研究グループは、有機電界効果トランジスタ(OFET)の材料となる有機半導体のペンタセンで、ほぼ完全な単結晶を製造することに成功した。
電子材料分野では、液晶ディスプレーなどに広く使われるシリコンなどの無機半導体に代わり、有機半導体の開発が進む。有機半導体で最も代表的なペンタセンは、真空中で気化させて基板に付ける「真空蒸着法」で容易に薄膜化できるが、結晶の形がふぞろいで、性能向上が課題だった。
板谷教授は、固体と液体が接する「固液界面」で起こる吸着、還元などさまざまな化学反応を制御する研究を応用し、ペンタセンの再結晶化を試みた。酸素を完全に除去したトリクロロベンゼン溶液にペンタセンを溶かして約200度に加熱、時間をかけて冷却したところ、完全結晶に近いペンタセンの単結晶ができた(引用:河北新報)。
ペンタセンとは図のようにベンゼン環が5つ(ペンタ)つながった構造をしています。このベンゼン環の二重結合にあるπ電子が移動することによって電気が流れます。
ペンタセンのような有機半導体をp型有機半導体といいますが、ペンタセン以外にもベンゼン環が4つ(テトラ)のテトラセン、ポルフィリンと似た構造を有するフタロシアニン系の化合物が知られています。
- 関連リンク