研究論文をジャーナルに投稿した場合、掲載水準に値する論文かどうか、複数の匿名審査員(Referee)によって査読(Peer Review)が行われ、掲載許可/不許可の判定がなされます。論文はそのような評価プロセスを経てから世に出るのが普通であり、インパクトファクターの高い(みんなが読んで引用する)ジャーナルほどPeer Reviewも厳しく、敷居が高くなっています。
Peer Reviewは現実的信頼性がもっとも高い審査法であるとされていますが、時間がかかる、捏造などの不正を完全に見抜くことはできない、競争相手の審査にバイアスがかかるなどの問題点が指摘されることもままあります。
そのような中、科学論文界でもっとも権威ある雑誌を発行するNature Publishing Groupが、査読要らずで科学記事を公開可能なサイト、Nature Precedingsを立ち上げました。
掲載前に編集者の手によってあまりにどうしようもない内容のものは除かれるようですが、基本的にはサイト読者の投票・評価システムによってその質が保証されるべき、という趣旨のようです。Web2.0的な考え方に基づき、査読を一般読者にゆだねるという試みは勿論世界初です。かなり専門性の高い内容に、このような試みが成功するのかどうか、行く末に大変興味が持たれます。
筆者の専門であるChemistryカテゴリにも既にいくつかの科学資料が掲載されているようです。一つ面白いと思ったものがあったので、「化学者のつぶやき」でいずれ紹介したいと思います。
追記
Open Accessなどの普及による科学出版界の激変・よりsustainableなモデルが出始めたことから、このNature Precedingsは2012年4月に廃止となったようです。
関連リンク
Nature Precedings:査読のないオープンソースシステム(ハーバード大医学部留学・独立日記)
Natureがピアレビューのない科学論文サイトを開始(Slashdot.jp)