[スポンサーリンク]

ケムステニュース

Natureが査読無しの科学論文サイトを公開

[スポンサーリンク]

 

研究論文をジャーナルに投稿した場合、掲載水準に値する論文かどうか、複数の匿名審査員(Referee)によって査読(Peer Review)が行われ、掲載許可/不許可の判定がなされます。論文はそのような評価プロセスを経てから世に出るのが普通であり、インパクトファクターの高い(みんなが読んで引用する)ジャーナルほどPeer Reviewも厳しく、敷居が高くなっています。

 

Peer Reviewは現実的信頼性がもっとも高い審査法であるとされていますが、時間がかかる、捏造などの不正を完全に見抜くことはできない、競争相手の審査にバイアスがかかるなどの問題点が指摘されることもままあります。

 

そのような中、科学論文界でもっとも権威ある雑誌を発行するNature Publishing Groupが、査読要らずで科学記事を公開可能なサイト、Nature Precedingsを立ち上げました。

掲載前に編集者の手によってあまりにどうしようもない内容のものは除かれるようですが、基本的にはサイト読者の投票・評価システムによってその質が保証されるべき、という趣旨のようです。Web2.0的な考え方に基づき、査読を一般読者にゆだねるという試みは勿論世界初です。かなり専門性の高い内容に、このような試みが成功するのかどうか、行く末に大変興味が持たれます。

 

筆者の専門であるChemistryカテゴリにも既にいくつかの科学資料が掲載されているようです。一つ面白いと思ったものがあったので、「化学者のつぶやき」でいずれ紹介したいと思います。

 

追記

Open Accessなどの普及による科学出版界の激変・よりsustainableなモデルが出始めたことから、このNature Precedingsは2012年4月に廃止となったようです。

 

関連リンク

Nature Precedings

Nature Precedings:査読のないオープンソースシステム(ハーバード大医学部留学・独立日記)

Natureがピアレビューのない科学論文サイトを開始(Slashdot.jp)

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ノーベル化学賞、米・イスラエルの3氏に授与
  2. 有機合成反応で乳がん手術を改革
  3. 理研、放射性同位体アスタチンの大量製造法を開発
  4. 三共と第一製薬が正式に合併契約締結
  5. 分子積み木による新規ゼオライト合成に成功、産総研
  6. 春の褒章2011-化学
  7. 理化学研究所、植物の「硫黄代謝」を調節する転写因子を発見
  8. アルコール依存症患者の救世主現る?

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「高校化学グランドコンテスト」が 芝浦工業大学の主催で2年ぶりに開催
  2. 第99回日本化学会年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part I
  3. Nature Chemistry誌のインパクトファクターが公開!
  4. ちょっとキレイにサンプル撮影
  5. 可逆的に解離・会合を制御可能なサッカーボール型タンパク質ナノ粒子 TIP60の開発
  6. 第100回―「超分子包接による化学センシング」Yun-Bao Jiang教授
  7. デヴィッド・ミルステイン David Milstein
  8. 水が決め手!構造が変わる超分子ケージ
  9. 有機反応機構の書き方
  10. 「話すのが得意」でも面接が通らない人の特徴

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年6月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー