がんの治療薬として研究されていた化合物に、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)につながる骨の破壊を止める作用があることが、理化学研究所と中部大学などの研究で分かった。まだ動物実験の段階だが、骨密度の低下を大幅に抑えることが確認された。今週の米科学アカデミー紀要電子版に発表する。
健康な骨では絶えず、骨を分解する「破骨細胞」と、骨を作る「骨芽細胞」がバランスよく、働いている。骨粗鬆症の場合は、「破骨細胞」の働きが勝ってしまい、骨がスカスカになると考えられている。
理研の長田裕之主任研究員らは、「放線菌」という微生物がつくる化合物「リベロマイシンA」に、破骨細胞を選んで細胞死させる作用があることを突き止めた。卵巣を摘出して骨粗鬆症の状態にしたマウスに1カ月間、与えたところ、与えないマウスに比べて、大腿骨(だいたいこつ)の骨密度の低下が約60%抑え込まれた。(引用:朝日新聞)
リベロマイシンA(reveromycin A)は理化学研究所の長田らにより、放線菌Streptomyces sp. SN-593株から単離されたポリケチド化合物です。もともと癌細胞の増殖抑制活性のある、新規構造の天然物として報告されていましたが、今回、骨粗鬆症に効果があることがわかりました。ビボ(in vivo)でも効果があるそうです。
構造的特徴として、スピロアセタール部位と、多くの不斉点、トリカルボン酸を有しており、合成化学的にも興味深い化合物です。実際、多くの有機化学者により化学合成が報告されており、同じく当時理研の中田忠主任研究員らにより初の全合成が達成されています。
ちなみに今年日本化学会賞を受賞した名古屋大上村教授らによって単離・構造決定されたノルゾアンタミンも骨粗鬆症に非常に効果的な化合物です。
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