「毒にも薬にもならない」という言葉があるが、今回は「毒にも薬にもなる」話をしてみたい。トリカブトは富山の山々に自生している薬草であり、附子(ぶ・し)とも呼ばれる。私が目にしたトリカブトの大群落は称名滝から大日岳登山道を上り、大日平を経て、最後の水場の付近である。紫の房状の花の形が毘沙門天がかぶっている兜(かぶと)に似ているので、小鳥のかぶと「トリカブト」と名付けられた。まことに粋な名前である。
この猛毒の附子を題材にした狂言「附子(ぶ・す)」は教科書にも採用されている有名な話である。つぼの中に砂糖を秘蔵している主(あるじ)が太郎冠者と次郎冠者に「このつぼの中には附子という猛毒が入っている。このにおいをかぐだけで命を落とす。近づいてはならない」と言い置いて外出する。留守居役の二人は扇子であおぎながらつぼに近づき砂糖であることを知り、すっかりなめてしまう。そして、主の大切にしていた掛け軸を故意に破り、「申し訳なさに、命を絶とうと、このつぼの中の附子を口にしました」と言い訳を考え出すというとんち・こっけい話である
ところが、この附子を私たち和漢診療科では毎日、関節リウマチや神経痛の患者さんに処方し、すばらしい効果を得ている。附子の猛毒成分はアコニチン系アルカロイドであるが、これを水でせんじると加水分解されて毒性が減弱し、痛みを止めたり、新陳代謝を高めたりする化学物質に変化するのである。。(引用:朝日新聞富山)
トリカブトってこんな由来だったんですね。アコニチン非常に入り組んだ構造ですね。トリカブトはこれらの類縁体が数種類含まれていて環境や種類によってそれぞれ異なるそうです。
アコニチンのようなアルカロイドにはストリキニーネなどの猛毒もあればよく知られているカフェイン、麻薬であるモルヒネ、マラリヤの特効薬であるキニーネがあり生物活性は多種多様です。合成の話になりますが、日本でアルカロイドの合成研究は東京大学の福山研が精力的に行っています。
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