厚労省 『希少病用』に指定
薬害を引き起こした睡眠・鎮静剤サリドマイドについて、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は二十一日、血液のがんの一種・多発性骨髄腫治療のための「希少疾病用医薬品」(オーファンドラッグ)に指定することを承認した。指定申請していた藤本製薬(大阪府)は、国から開発費用の助成や製造承認申請の審査が優先的に受けられるようになる。
希少疾病用医薬品は対象患者が五万人未満で、ほかに治療法がなく、十分な効果が期待できることなどが指定要件。
サリドマイドはドイツで開発され、一九五〇-六〇年代に世界数十カ国で睡眠・鎮静剤として販売された。
しかし、服用した妊婦から手足の一部がない障害児が多数生まれ、内臓障害により死亡するケースも出た。日本でも三百人以上が被害者として認定されるなど深刻な薬害に発展。製薬会社は六二年に製造を中止し、承認も返上した。
ところが、その後、サリドマイドが多発性骨髄腫の病状改善に有効であることが判明。医師の責任のもとメキシコなどから個人輸入し、患者に対する投与が行われるようになった。同薬の二〇〇三年の輸入量は、約五十三万錠に上っている。
しかし、薬事法の枠外のため、医療保険がきかず、製薬会社から提供されるはずの危険性に関する情報が患者に十分に伝わらない。安定供給や品質も保証されていないなど、多くの問題を抱えていた。
このため、多発性骨髄腫の患者団体は、厚労省に対し、サリドマイドの早期承認を要望。患者は国内に約一万人おり、毎年四千人前後が新たに診断されている(引用:東京新聞)
サリドマイド。化学物質の悲劇としてよく知られている化合物です。不斉合成の重要性の例として語られ、片方の光学活性体のみが催奇性があると報告されていて、ラセミ体で供給されたことが原因とされていますがそうでもないようです。構造式を見てわかる方はいると思いますが構造がα-アミノアミドであるためα位のプロトンの酸性度が高くプロトンが引き抜かれやすいため、数時間でエノール化してラセミ化してしまうということです。ですので、妊娠されている方やこれから子供を作る夫婦などは絶対使ってはいけないことは確かなようです。
今回の、サリドマイドの抗がん作用は血管新生阻害という性質からだそうです。血管新生を阻害するとは簡単に説明すると癌などの腫瘍細胞は血管を有していないため血管がほしいと血管新生をうながします。その血管新生を阻害すれば、癌細胞に栄養はいかないため勝手に死滅するというわけです。大学の研究室等では多くの血管新生阻害作用を有するリード化合物の研究や合成が行われています。
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先天性奇形・サリドマイド胎芽病事件の全貌とは。サリドマイド児はいかにその厳しい障害を克服し、いまなおどのような困難に直面しているのか。そしてサリドマイドの現状とは。薬害問題を原点から考える。
1950年代後半、鎮静剤として発売され、世界中で先天異常を持つ大勢の子どもを生み出した悲劇の薬サリドマイド。しかし1998年、この薬は米国食品医薬品局により認可された。今度はハンセン病の合併症の特効薬として。
速やかな承認申請目指す」サリドマイド指定で会見 藤本製薬
薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が、サリドマイドを多発性骨髄腫の治療薬として、希少疾病用医薬品に指定することを認めたのを受けて、申請者の藤本製薬が同日会見し、「速やかに承認申請まで漕ぎ着けたい」との考えを明らかにした。
多発性骨髄腫の患者は日本で約1万4000人と推定されているが、同社によると、サリドマイドが対象となる「既存の治療薬で効果不十分な患者」は、3000~5000人と見られる。既存の化学療法剤には約4割が抵抗性を持ち、初期治療に抵抗性を示した患者の生存期間は1年未満(中央値)とされるため、同社は医療上の有用性が高いと判断し、希少疾病薬への指定を申請していた。 (引用:薬事日報)