本研究では、室温付近でこの有機結晶に超短パルスレーザーを照射すると、0.2ピコ秒以内という極めて短時間で、光の反射率が50%以上も変化することを見出した(1ピコ秒=1兆分の1秒であり、0.2ピコ秒は高速電子デバイスの典型的な応答速度(約10億分の1秒)の約5000倍という高速応答に相当する)。この現象では、1つの構成分子の変化がドミノ倒し的に他の変化を引き起こすため、光子1粒という極微弱な励起光によって、約500分子の変化が誘起されるという超高感度のものである。
この(EDO-TTF)2PF6結晶(構造は図1参照)は、もともとは有機超伝導体を目的として合成されたものであるが、超伝導特性は示さないため今日まであまり注目されてこなかった。本プロジェクトではこの物質の特殊な電子構造と結晶構造、それに起因する特殊な相転移に着目し、光による相変化が誘起される可能性を探索していたところ、今回の意外ともいえる成果につながった。(科学技術振興機構)
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とが 規則正しく配列した分子性結晶である。
■有機超伝導体
有機合成と電子物性をつなぐ有機電子機能材料について、基礎解説に重点をおいて詳述。その結合、構造、機能・物性の関係を原則原理から理解し、新しい材料の開発や新機能開拓のための基礎知識を獲得できる。