[スポンサーリンク]

ケムステニュース

炭素ボールに穴、水素入れ閉じ込め 「分子手術」成功

[スポンサーリンク]

炭素原子60個がサッカーボール状につながった分子「フラーレン」に穴を開け、中に水素分子を入れ、穴を元通り閉じることに、京都大化学研究所の小松紘一教授らが世界で初めて成功した。狙い通りに段階を踏んで化学反応を進める「分子手術」と呼ばれる手法で、ナノテクの基盤技術として役立ちそうだ。14日付の米科学誌「サイエンス」で発表する。  フラーレンは直径約1ナノメートル(ナノは10億分の1)で、代表的なナノテク素材のひとつ。特に内部に金属原子などを閉じこめたフラーレンは、独特の性質を示し、半導体材料や医療用試薬などへの応用が期待されている。ただ、これまで原子や分子を効率よく閉じ込める方法がなかった。  小松さんらはまず、3段階の化学反応でフラーレンに13角形の穴を開けて、かご状にした。この「かご」を高温高圧の水素タンクに入れると、水素分子が中に入った。3段階の化学反応で穴を8角形に狭め、最後に真空中で加熱して穴を完全に閉じて「水素入りフラーレン」を完成させた。小松さんは「次は金属を入れたい」と話している。(引用:朝日新聞)(図出典:サイエンス

 

面白いですね。もうちょっと合成的に簡単に話しますと2のかご型フラーレンを作った後にSをm-CPBAで酸化してスルホンとします。次に光反応でSをとばして、四塩化チタンと亜鉛でマクマリーカップリングをして環を縮小させ最後に熱して、フェニル基と 2-pyridyl基を飛ばしてつまりふたを閉めて完了というところですか。

収率は4段階で22%ですが、今まではこのような例はあったものの0.1%以下でしたのでそれまでにくらべれば非常に良い方法といえます。もう少し改良すれば、金属入りフラーレンも大量合成できるのではないでしょうか。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4062571684″ locale=”JP” title=”サッカーボール型分子C60―フラーレンから五色の炭素まで (ブルーバックス)”][amazonjs asin=”4815806691″ locale=”JP” title=”フラーレンとナノチューブの科学”]

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 房総半島沖350キロに希少金属 広範囲に
  2. 「高校化学グランドコンテスト」が 芝浦工業大学の主催で2年ぶりに…
  3. ノーベル化学賞受賞者が講演 3月1日、徳島文理大学
  4. 窒化ガリウムの低コスト結晶製造装置を開発
  5. AIを搭載した化学物質毒性評価サービス「Chemical Ana…
  6. 理研、放射性同位体アスタチンの大量製造法を開発
  7. BASF、新規のキラル中間体生産プロセスを開発!
  8. 大気中のメタン量、横ばいに/温暖化防止に朗報か

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「架橋ナノゲル」を応用したがんワクチンDDS
  2. ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド : Bis(tricyclohexylphosphine)nickel(II) Dichloride
  3. アミロイド線維を触媒に応用する
  4. 高橋 雅英 Takahashi Masahide
  5. 「非晶質ニッケルナノ粒子」のユニークな触媒特性
  6. Cu(I) の構造制御による π 逆供与の調節【低圧室温水素貯蔵への一歩】
  7. 抽出精製型AJIPHASE法の開発
  8. 有機合成化学協会誌2022年10月号:トリフルオロメチル基・気体分子等価体・蛍光性天然物・n型有機材料・交互共重合法
  9. 理研も一般公開するよ!!
  10. 【追悼企画】不斉酸化反応のフロンティアー香月 勗

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2005年1月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

新発想の分子モーター ―分子機械の新たなパラダイム―

第646回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機反応論研究室 助教の …

大人気の超純水製造装置を組み立ててみた

化学・生物系の研究室に欠かせない超純水装置。その中でも最も知名度が高いのは、やはりメルクの Mill…

Carl Boschの人生 その11

Tshozoです。間が空きましたが前回の続きです。時系列が前後しますが窒素固定の開発を始めたころ、B…

PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

概要ケモメトリクスと機械学習によるスペクトル解析を、Pythonの使い方と数学の基礎から実践…

一塩基違いの DNA の迅速な単離: 対照実験がどのように Nature への出版につながったか

第645回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科相田研究室の龚浩 (Gong Hao…

アキラル色素分子にキラル光学特性を付与するミセルを開発

第644回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 総合研究院 応用化学系 化学生命科学研究所 吉沢…

有機合成化学協会誌2025年2月号:C–H結合変換反応・脱炭酸・ベンゾジアゼピン系医薬品・ベンザイン・超分子ポリマー

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年2月号がオンライン公開されています。…

草津温泉の強酸性硫黄泉で痺れてきました【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい!  というわけで、硫黄系の温泉であり、日本でも最大の自然温泉湧出量を誇る草津温泉…

ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法

第643回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の木之下 拓海(きのした …

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP