スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2004年のノーベル化学賞をイスラエル工科大学のアーロン・チェハノバ教授(57)、同アブラム・ヘルシュコ教授(67)、カリフォルニア大学アーバイン校のアーウィン・ローズ博士(78)に授与すると発表した。細胞内で特殊な酵素の働きにより、不要なたんぱく質が分解される仕組みを解明した。(引用: 日本経済新聞)
授賞理由は「ユビキチンの仲介でたんぱく質が分解される仕組みの発見」です。
ユビキチン(Ubiquitin)とははあらゆる細胞に存在するタンパク質ということで,英語のubiquitousにちなんで名付けられました。この小さなタンパク質は76個のアミノ酸から構成され,進化をとおしてその一次構造(アミノ酸配列)はよく保存されており,ヒトと酵母でも96%のホモロジーがある)。ユビキチンはヒストンの翻訳後修飾分子として発見されていたが,脚光を浴びたのはそのタンパク質分解での主要な役割による。
1970年代後半から,Hershkoらは網状赤血球系を対象に一連の独創的な研究を行い,その集積としてユビキチン仮説を提出した。この仮説はエネルギーを要求するタンパク質分解系という意外性のために当時は疑いの目で見られ,発表後4年もの間競争相手が全く出現しなかったといいます。
さて、今回のノーベル賞は残念ながら日本人はいませんでした。有力候補は、カーボンナノチューブを発見した信州大学の遠藤教授(化学賞)、物性物理学で「近藤効果」として有名な論文を40年前に発表した産業技術総合研究所の近藤淳さん(物理学賞)、分子が自然に集まる自己組織化現象の研究で、九州大の新海教授(化学賞)、細胞シグナル伝達に関する画期的貢献で神戸大学の西塚名誉教授(医学賞)、超伝導化合物の発見などで東大の十倉教授などなど他にもたくさんいましたが、残念でした。
関連書籍
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外部リンク
チェハノバ教授と同時期に米国でタンパク質分解の研究をしていた東京大学の石浦章一教授は「ユビキチンが特に注目され始めたのは最近。東大で六年前、チェハノバ教授の講演会を開いたが十数人しか集まらなかった」と話す。
傷んだタンパク質の目印だけではなく、細胞の代謝やDNA修復、免疫の働きなどに重要な役割を担い、うまく働かないとがんや神経変性疾患などにつながると分かってきたからだ。多くの病気の治療につながる可能性があるとして研究が広がっている。
チェハノバ教授と共同研究を進める大阪市立大学の岩井一宏教授は「食べ物でも建築でも何にでも興味を持つ人。興味が多く時間がないのか新幹線みたいな早口。学生と話すのも好き」と話す。
チェハノバ教授とその恩師のヘルシュコ教授は、イスラエル工科大から教育の義務を免除される終身教授の身分を与えられているが「しっかり教育をしたい」と自ら学生の指導にも当たっているという。(引用: 東京新聞)