[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

吉田善一 Zen-ichi Yoshida

[スポンサーリンク]

 

吉田善一(よしだぜんいち、1925年8月19日-2023年5月4日 )は、日本の有機化学者、分子機能化学者である。京都大学名誉教授(写真:日本化学会)。

 

経歴

1949 京都大学工学部工業化学科卒業

1951 京都大学工学部工業化学科助手

1961 京都大学工学部工業化学科助教授

1963 京都大学工学部工業化学科教授

1989 京都大学名誉教授

1990 近畿大学理工学部特任教授

1974 スイス連邦工科大学招聘教授

 

受賞歴

1976 日本化学会賞

1977 Bergman Lecture賞

1990 紫綬褒章

1996 勲二等瑞宝章

2001 有機合成化学特別賞

 

研究概要

分子機能化学の開拓

用語もコンセプトも皆無の1949年、分子機能化学の開拓に取組み、自ら創出した数々 の新しいπ電子系の活用により本分野を確立した。分子機能化学とは、構造-分子機能に 関する研究に基づき、重要な機能分子・分子集団を設計、合成、評価し、目的の機能物質を創出すると共に、必要な合成法を開発する学問分野である[1]

 

機能性4nπ芳香族の化学

炭素がエンドレスポリマーと考えられていた1970年、球面のような対称性の高い立体的 分子軌道上をπ電子が3次元的に非局在化することにより安定化(超芳香族性)が起こると考え、サッカーボール構造をもつ球状60π炭素分子(C60)を大沢英二と共に世界で初めて予言した[1]KrotoらのC60発見の15年も前である。ただしこの論文は日本語で書かれていたことからKrotoらのC60の論文には引用されていない。

c60.png

平面4nπ系炭化水素、環状ポリカリセンを創製し、その芳香族性を実証すると共に、基底状態の高い極性に基づくユニークな 物性、機能を明らかにした[2]

bicalicene.png

 

光・電気・磁気に関連する機能物質の創製

安定高歪系という新概念に基づき、(1)光エネルギーを効率良く変換・貯蔵し、 (2) 触媒(cat)により熱エネルギーとして取り出しうる、繰り返し利用可能な機能物質対に関し優れた可逆型太陽エネルギー化学変換貯蔵物質 (DA-ノルボナジエン/ DA-クワドリシクラン等)固定化Co(II)サルフェン系触媒の創製に成功した[3]

DONAC.png

 

コメント&その他

  1. 国際有機化学京都会議(IKCOC)を中心となって開催した。以来3年ごとに開催され多くの参加者と著名な化学者が参加している。
  2. 、2015年に有機化学の分野で国際的に学術的発展に貢献する業績をあげた研究者を表彰するため「吉田賞(Yoshida Prize)」が設立された、IKCOC非開催年に1名授与される。

名言集

 

関連動画

 

関連文献

[1] 吉田善一, 大沢英二. 芳香族性, 化学モノグラフシリーズ 22 化学同人.

[2] Yonedo, S.; Shibata, M.; Yoshida, Z.; Kai, Y.; Miki, K.; Kasai, N. Angew. Chem. 1984, 23, 63. DOI: 10.1002/anie.198400631

[3] Kobayashi, T.; Yoshida, Z.; Asako, Y.; Miki, S.; Kato, S. J. Am. Chem. Soc. 1987, 109, 5103. DOI: 10.1021/ja00251a009

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4061536834″ locale=”JP” title=”芳香族ヘテロ環化合物の化学-反応性と環合成- (KS医学・薬学専門書)”]

 

Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. アンディ・マイヤース Andrew G. Myers
  2. Junfeng Zhao
  3. 中村 修二 Shuji Nakamura
  4. 香月 勗 Tsutomu Katsuki
  5. ウィリアム L ジョーゲンセン William L. Jorge…
  6. ティム・ジャミソン Timothy F. Jamison
  7. デヴィッド・ナギブ David A. Nagib
  8. 水島 公一 Koichi Mizushima

注目情報

ピックアップ記事

  1. 群ってなに?【化学者だって数学するっつーの!】
  2. 分⼦のわずかな⾮対称性の偏りが増幅される現象を発⾒
  3. ケーニッヒ・クノール グリコシド化反応 Koenigs-Knorr Glycosidation
  4. C–S結合を切って芳香族を非芳香族へ
  5. ケムステニュース 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2019年版】
  6. バートン脱カルボキシル化 Barton Decarboxylation
  7. 夏のお肌に。ファンデーションの化学
  8. ノルゾアンタミンの全合成
  9. ハーバード大Whitesides教授がWelch Awardを受賞
  10. フラーレン〜ケージを拡張、時々、内包〜

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー