[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

キース・ファニュー Keith Fagnou

[スポンサーリンク]

 キース・ファニュー (Keith Fagnou、1971年6月27日 –  2009年11月11日)は、カナダの有機化学者である。元オタワ大学准教授。故人(写真:Fagnou Group Homepage より)。

経歴

1995 Saskatchewan大学 卒業
1995-1996 高校教師として勤務
1998-2002 トロント大学 博士号取得 (Mark Lautens教授)
2002-2007 オタワ大学 助教授
2007-2009 オタワ大学 准教授

2009年11月11日 没。

 

受賞歴

2003 Premier’s Research Excellence Award
2003 John C. Polanyi Award in Chemistry
2005 Boehringer Ingelheim Young Investigator Award in Organic Chemistry
2005 Cottrell Scholar Award
2005 Ichikizaki Travel Grant Award
2006 University of Ottawa Young Researcher of the Year
2006 Ichikizaki Travel Grant Award
2007 Merck Process Research Award
2007-2012 University of Ottawa Research Chair in Novel Catalytic Transformations
2007 Amgen Young Investigator’s Award
2007 Astra Zeneca Award for Chemistry
2007-2009 NSERC Discovery Accelerator Supplement Award
2007-2009 Eli Lilly Grantee
2008 Merck Process Award
2008 Sloan Research Fellowship
2009 OMCOS Award

 

研究概要

触媒的C-H結合活性化型クロスカップリング反応の開発

特に配向性官能基の無い基質においても一般性高いC-H活性化を可能とする触媒系[2-6]の発見は、卓越した業績として知られる。Concerted Metallation-Deprotonation Pathway[7]機構を経由する触媒系を中心に開拓し、斬新な変換反応を多数開発した。

fagnou_2.gif彼によって報告された全く官能基化を必要としない基質間でのC-H/C-Hクロスカップリング[6] は極めて斬新な反応形式であり、合成化学界における一つのブレイクスルーでもある。
tubuyaki_arene.gif

コメント&その他

1. 2009年11月11日、H1N1インフルエンザの為に38歳で他界。カナダの有機化学界で有力視されている若手ライジングスターの突然の死に、化学界は衝撃を隠せなかった。
2. 師であるLautensは彼に対し”exceptionally bright and exceptionally down-to-earth, the most productive person, in the history of his research group”と激賞している。
3. 彼の死後、研究室のメンバーの手により、Keith Fagnou Organic Chemistry Symposiumという小さな追悼シンポジウムが開催された。
4. ユーモアあふれるFagnou研のメンバーによって、StarWarsのパロディFLASHムービー 、Keithを紹介するJACSパロディ文書(PDF) が製作されている。
5. 2010年12月に開催される環太平洋国際会議(PacifiChem)のC-H結合官能基化セッションは、Keith Fagnou追悼企画となっている。

 

名言集

関連動画

関連文献

[1] Lautens, M.; Fagnou, K.  J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 7170. DOI: 10.1021/ja010262g
[2] Campeau, L.-C.; Parisien, M.; Leblanc, M.; Fagnou, K. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 9186. DOI:10.1021/ja049017y
[3] Campeau, L.-C.; Rousseaux, S.; Fagnou, K. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 18020. DOI: 10.1021/ja056800x
[4] Lafrance, M.; Rowley, C.N.; Woo, T. K.; Fagnou, K. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 8754. DOI: 10.1021/ja062509l
[5] Lafrance, M.; Fagnou, K. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 16496. DOI:10.1021/ja067144j
[6] Stuart, D.R.; Fagnou, K. Science 2007, 316, 1172. doi:10.1126/science.1141956
[7] Lapointe, D..; Fagnou, K. Chem. Lett. 2010, 39, 1118.  doi:10.1246/cl.2010.1118

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3642123554″ locale=”JP” title=”C-H Activation (Topics in Current Chemistry)”]

 

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 渡邉 峻一郎 Shun Watanabe
  2. デイヴィッド・マクミラン David W. C. MacMill…
  3. ゲルハルト・エルトゥル Gerhard Ertl
  4. パオロ・メルキオーレ Paolo Melchiorre
  5. リチャード・ゼア Richard N. Zare
  6. クリスティーナ・ホワイト M. Christina White
  7. 平田 義正 Yoshimasa Hirata
  8. 平井 剛 Go Hirai

注目情報

ピックアップ記事

  1. バイオマス燃料・化学品の合成と触媒の技術動向【終了】
  2. 微生物細胞に優しいバイオマス溶媒 –カルボン酸系双性イオン液体の開発–
  3. 留学せずに英語をマスターできるかやってみた(5年目)(留学中編)
  4. Tattooと化学物質のはなし
  5. 細胞集め増やす化合物…京大化学研発見、再生医療活用に期待
  6. 光触媒で新型肺炎を防止  ノリタケが実証
  7. 電話番号のように文献を探すーRefPapers
  8. 鉄触媒での鈴木-宮浦クロスカップリングが実現!
  9. 高井・ロンバード反応 Takai-Lombardo Reaction
  10. 近くにラジカルがいるだけでベンゼンの芳香族性が崩れた!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年11月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー