玉尾皓平(たまお こうへい, 1942年10月31日(香川県)- )は日本の有機化学者である(写真:日本化学会)。公益財団法人豊田理化学研究所所長。京都大学名誉教授。
一貫して有機ケイ素化学に関する研究を行い、世界的に有名なカップリング反応および酸化反応を開発した。2007年日本学士院賞。2011年文化功労者。
経歴
1965年京都大学工学部合成化学科を卒業、同大学大学院工学研究科に進学、1970年に博士課程を修了した。1970年京都大学工学部助手,1986年に助教授となり,1993年に京都大学化学研究所教授に昇任後、研究所所長などを経て、2005年京都大学退官。その後は理化学研究所のフロンティア研究システムセンター長、基幹研究所所長として活躍。
1965 京都大学工学部合成化学科 卒業
1970 京都大学大学院工学研究科合成化学専攻 博士課程修了
1971 京都大学 工学博士(熊田 誠 教授)
1970 京都大学工学部合成化学科 助手
1986 京都大学工学部合成化学科 助教授
1993 京都大学化学研究所 教授
2000 京都大学化学研究所 所長
2004 附属元素科学国際研究センター長
2005 理化学研究所 フロンティア研究システムセンター長
2008 理化学研究所 基幹研究所 所長
2013 理化学研究所 研究顧問、グローバル研究クラスタ長
2016 豊田理化学研究所所長
その間、2012年日本化学会会長に就任。
受賞歴
1977 日本化学会進歩賞
1999 日本化学会賞
2002 東レ化学技術賞
2002 Kipping賞
2003 朝日賞
2003 向井賞
2004 紫綬褒章
2007 日本学士院賞
2008 ケイ素化学協会賞
2011 文化功労者
2014 有機合成化学協会特別賞・名誉会員
2016 瑞宝重光章
研究概要
一貫して「元素の本質的特性に着目した物質創製」を基本概念とした元素科学研究をおこなってきた。
京都大学・熊田 誠教授(当時)とアリールハライド・アリールトリフラートとGrignard試薬間のニッケル触媒によるクロスカップリング反応(熊田・玉尾・コリュークロスカップリング)を開発した[1]。本手法は触媒的クロスカップリング反応という一大分野の礎となるものであり,今日の物質創製に不可欠な手法として広く応用されている。
その後、炭素-ケイ素結合の過酸化水素酸化による穏和なアルコール合成法の開発(玉尾・フレミング酸化)[2]を開発した。ともに人名反応として世界的に定着している実用的反応である。
また、官能性ケイ素アニオン化学の開拓・確立,ケイ素を含む環状化合物(シロール類)の簡便合成法の開発とエレクトロルミネッセンス(EL)素子への応用[3]など、有機合成化学を基盤として機能性物質科学の発展に貢献した。
関連論文
- (a) Tamao, K.; Sumitani, K.; Kumada, M. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 4374. DOI: 10.1021/ja00767a075 (b) Corriu, R. J. P.; Massse, J. P. J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1972, 144. DOI: 10.1039/C3972000144a
- Tamao, K.; Akita, M.; Kumada, M. Organometallics 1983, 2, 1694. DOI: 10.1021/om50005a041
- Tamao, K.; Uchida, M.; Izumizawa, T.; Furukawa, K.; Yamaguchi, S. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 11974. DOI: 10.1021/ja962829c
- Suzuki, K.; Matsuo, T.; Hashizume, D.; Fueno, H.; Tanaka, K.; Tamao, K. Science 331, 1306, 2011. doi:10.1126/science.1199906
コメント&その他
- 研究以外にも、元素の用途などについての写真やイラストを盛り込んだユニークな元素周期表(一家に一枚周期表)を作成するなど、化学を広めるため活動しています。
- 「クロスカップリング反応」開発の立役者の一人としてノーベル化学賞候補とされていましたが、2010年化学賞では惜しくも選外となってしまいました。
- ケムステイブニングミキサーの発案者である。
- 元素ネイルの発案者でもある。
名言集
- 「新しい研究領域を切り拓く勇気を持ち続けること。新発見の扉を開く緊張感はいつも心地よい」
- 「流行を追わず、逆転思考を心がける」
- 「”Something New”よりも、”What’s unknown” + “Simple is best”を思考の原点に」
(『化学者たちの感動の瞬間―興奮に満ちた51の発見物語』より引用) - 「若手研究者は論文1報より100人の友を得ることを心掛けてほしい」
関連動画
関連書籍
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