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野々山 貴行 Takayuki NONOYAMA

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野々山 貴行 (NONOYAMA Takayuki)は、高分子材料科学、ゲル、ソフトマテリアル、ソフトバイオセラミックスを専門とする日本の化学者である。ソフトマテリアルとバイオセラミックスの融合によるソフトバイオセラミックス、温度応答性ハイドロゲル、非平衡相分離ゲルなどに取り組み、最近ではバイオセラミックスを用いた高分子網目の実空間可視化技術にも取り組んでいる。2025年現在、北海道大学大学院先端生命科学研究院 准教授。第52回ケムステVシンポ講師。

経歴

2013年4月 – 2020年3月北海道大学, 先端生命科学研究院, 特任助教
2016年4月 – 2020年3月北海道大学国際連携研究教育局(GI-CoRE)ソフトマターステーション, 特任助教
2017年1月 – 2021年3月北海道大学産学・地域協働推進機構, 高靱性ゲルの軟骨応用部門
2020年4月 – 2021年3月北海道大学, 国際連携研究教育局(GI-CoRE)ソフトマターステーション, 特任准教授
2020年4月 – 2021年5月北海道大学, 大学院先端生命科学研究院, 特任准教授
2021年6月 – 現在北海道大学, 大学院先端生命科学研究院, 准教授

受賞歴

2022年6月進歩賞, 生体無機-高分子ゲル融合体による骨形成機序と骨再生誘導の研究, 公益社団法人日本セラミックス協会
2020年9月秋季シンポジウム若手優秀発表賞(先進セラミックバイオマテリアルの新展開と次世代型材料機能設計指針の構築), バイオミネラルをエネルギー散逸項とするハイドロゲルの強靭化, 公益社団法人日本セラミックス協会
2019年5月高分子研究奨励賞, 高靱性ゲル・バイオセラミックスの複合と骨形成誘導に関する研究, 高分子学会
2018年9月パブリシティ賞, 高温で瞬時に1000倍以上硬くなる温度応答性アクティブソフトマテリアル, 高分子学会
2017年9月特定セッション若手優秀発表賞, 天然骨組織と合成ハイドロゲルとの相互侵入構造の解析, 公益社団法人日本セラミックス協会
2014年10月International Union of Materials Research Societies- International Conference in Asia, The Award for Encouragement of Research in IUMRS-ICA2014, International Union of Materials Research Societies
2013年3月学生基金奨励賞 学長賞, 名古屋工業大学
2012年5月2012年セラミックス協会年会 最優秀賞, 日本セラミックス協会
2012年3月学生基金奨励賞 学長賞, 名古屋工業大学
2011年12月平成23年度日本セラミックス協会東海支部学術発表会 最優秀講演賞, 日本セラミックス協会東海支部
2011年11月中化連秋季大会 東海高分子優秀学生発表賞, 中部化学関係学協会支部連合(中化連)
2011年9月第137回東海高分子研究会講演会 優秀発表賞, 高分子学会東海支部
2011年7月第41回東海若手セラミスト懇話会 ベスト質問賞, 日本セラミックス協会東海支部
2011年7月第41回東海若手セラミスト懇話会 優秀発表賞, 日本セラミックス協会東海支部
2011年3月学生基金奨励賞 副学長賞, 名古屋工業大学
2011年1月第49回セラミックス基礎科学討論会 World young fellow meeting 2011 Presentation award, 日本セラミックス協会
2010年7月第40回東海若手セラミスト懇話会 最優秀発表賞, 日本セラミックス協会東海支部

研究業績
骨形成誘導ハイドロゲルの創製と骨接着機構解明

2000年初頭から既存の力学物性を凌駕する高強度・高靱性ハイドロゲルが報告されており、水性表面による低摩擦性も相まって人工軟骨としての臨床応用が現実味を帯びてきている。この治療では、軟骨欠損部のみにゲルを補填する格段に低い侵襲性だけでなく、軟骨組織の再生を促すことも発見され、患者の正常組織を可能な限り活かすQOLの高い治療法である。一方でこのゲルを埋植する際、埋植部位下骨へ強固に固定する必要があるが、縫合では容易に裂けてしまい、医療用接着剤ではゲルの水性表面に対して全く機能せず、ゲルの接着・固定化技術が臨床応用における大きな課題となっていた。骨芽細胞は骨形成に関わる生体高分子の分泌やpHの調整など、骨ができる環境を整えるに過ぎず、骨そのものは細胞外において化学的平衡により形成されることに注目し、ゲルの高い物質拡散能と骨の無機主成分であるハイドロキシアパタイト(HAp)の骨伝導性を組み合わせ、ゲルへのHAp複合化技術及び動物埋植実験を行い、ゲル材料の生体内接着技術を確立した。骨芽細胞へのシグナルとなる、カルシウム(Ca)イオンを徐放する低結晶性HApをゲルに複合させる際、既存の方法ではHAp形成水溶液の高い浸透圧により、ゲルが大きく収縮・崩壊してしまう問題があった。そこで浸透圧増強を担う構造支持網目をゲル内部に導入することでHAp形成溶液の浸透圧を相殺することに成功し、収縮を回避しつつHApの均一な複合化に成功した。このHAp複合ゲルをウサギの大腿骨滑車部に作製した軟骨欠損に埋植したところ、2週でゲルが骨に接着し、4週でゲル母材の強度を超える高い接着力を達成した。この機構を明らかにするため、ゲル‐骨界面を電子顕微鏡で観察したところ、細胞が生産するコラーゲンがゲル内部へ拡散し、経時的に新生骨がゲル内部へ進展してゲル‐骨融合層からなる傾斜構造を形成することを見出した。

図 1 ゲル―HAp複合化技術と骨接着構造の観察.

バイオセラミックスと二重網目化による高分子網目の実空間観察
上記の研究過程でゲルへの無機物の複合技術が洗練され、ゲルの化学構造や組成によって無機粒子の形態を制御できるようになった。逆に言えば、無機物の形態観察からゲルの構造を推定することが可能ではないか、という考えに至った。一般的な高分子ゲルの構造解析として、X線・光散乱などによる平均的な構造の解析が主流であり、CNOHなどの軽元素から構成されることから電子顕微鏡などによる直接観察は原理的に困難であった。ここで「高分子ゲルへの無機複合化」を「高分子鎖の電子密度を向上させる染色法」と捉え、無機粒子を介したゲル網目構造の電子顕微鏡観察を行った。上記の構造支持網目技術に加え、アニオン性高分子には酸化鉄を、カチオン性高分子には二酸化チタンを形成させることで、網目選択的に無機粒子が形成され、ゲル網目構造を反映した無機粒子のネットワーク構造を電子顕微鏡下でイメージングすることに成功した。組成や膨潤度などのパラメータを変化させたゲルにおいても予想された構造が観察され、世界で初めてゲル網目の実空間直接観察手法を確立した。

図2 無機物による高分子鎖の電子密度向上と電子顕微鏡による実空間直接観察.

 

非平衡相分離を示す高分子クラウディングゲルに関する研究
一般的なゲルの含水率は90%以上で高分子鎖は互い十分離れており独立に揺らいでいる。弱電解質高分子ゲルと多価金属塩を組み合わせることで、分子内イオン架橋を積極的に形成させることでゲルは大きく収縮し、含水率が50%を下回る平衡状態を作り出すことができる。このとき高分子鎖間に多数の相互作用が形成され、高分子クラウディング状態となり、一般的なゲルとは異なる物性・ダイナミクスを示す。比較的疎水的な酢酸カルシウム塩を用いると、臨界温度以上で相分離し、より高温ではガラス状態となる特異な熱物性を示す。また、この相分離は遅いダイナミクスによって長時間掛けて消失する非平衡な相分離であることを発見した。また、平衡状態で高分子鎖が既に密に接近していることから、延伸すると高分子鎖がパッキングし、靭性が向上する性質を発見している。

図3 高分子クラウディングゲルによる高温相分離・ガラス化現象

関連文献

  1. Watanabe, D. Shi, R. Kiyama, K. Maruyama, Y. Nishizawa, T. Uchihashi, J. P. Gong, T. Nonoyama*, “Phase separation-induced glass transition under critical miscible conditions”, Materials Advances, 2024, 5, 7140-7146.
  2. Noguchi, R. Kiyama, M. Yoshida, M. A. Marsudi, N. Kashimura, K. Tadanaga, J. P. Gong, T. Nonoyama*, “Real-Space Visualization of Charged Polymer Network of Hydrogel by Double Network Strategy and Mineral Staining”, Nano Letters, 2024, 24(29), 9088-9095.
  3. Kashimura, Y. Suzuki, T. Nonoyama*, J. P. Gong*, “Tough Hydroxyapatite Hydrogels Based on Bone-like Self-Regulatory Sacrificial Bond Formation”, Chem. Mater., 2024, 36(6), 2944-2952.
  4. Kiyama, M. Yoshida, T. Nonoyama*, T. Sedlačík, H. Jinnai, T. Kurokawa, T. Nakajima, J. P. Gong*, “Nanoscale TEM Imaging of Hydrogel Network Architecture”, Advanced Materials, 2023, 35(1), 2208902.
  5. Kaibara, L.Wang, M. Tsuda, T. Nonoyama, T. Kurokawa, N. Iwasaki, J. P. Gong, S. Tanaka, K. Yasuda*, “Hydroxyapatite-hybridized Double-Network Hydrogel Surface Enhances Differentiation of Bone Marrow-derived Mesenchymal Stem Cells to Osteogenic Cells”, Journal of Biomedical Materials Research: Part A, 2022, 110(4), 747-760.
  6. Nonoyama*, Lei Wang, Ryuji Kiyama, Naohiro Kashimura, Kazunori Yasuda, Shinya Tanaka, Takayuki Kurokawa, Jian Ping Gong*, “Fast In Vivo Fixation of Double Network Hydrogel to Bone by Monetite Surface Hybridization”, Journal of the Ceramic Society of Japan, 2021, 129(9), 584-589.
  7. Nonoyama*, L. Wang, M. Tsuda, Y. Suzuki, R. Kiyama, K. Yasuda, S. Tanaka, K. Nagata, R. Fujita, N. Sakamoto, N. Kawasaki, H. Yurimoto, J. P. Gong*, “Isotope Microscopic Observation of Osteogenesis Process Forming Robust Bonding of Double Network Hydrogel to Bone”, Adv. Healthcare Mater., 2021, 10, 2001731.
  8. Nonoyama*, Y. W. Lee, K. Ota, K. Fujioka, W. Hong, J. P. Gong, “Instant Thermal Switching from Soft Hydrogel to Rigid Plastics Inspired by Thermophile Proteins”, Adv. Mater., 2020, 32, 1905878.
  9. Fukao, K. Tanaka, R. Kiyama, T. Nonoyama*, J. P. Gong, “Hydrogels toughened by biominerals providing energy-dissipative bonds”, J. Mater. Chem. B., 2020, 8, 5184-5188.
  10. T. I. Mredha, Y. Z. Guo, T. Nonoyama, T. Nakajima, T. Kurokawa, J. P. Gong, “A Facile Method to Fabricate Anisotropic Hydrogels with Perfectly Aligned Hierarchical Fibrous Structures”, Adv. Mater. 2018, 30, 1704937.
  11. Kiyama, T. Nonoyama*, S. Wada, S. Semba, N. Kitamura, T. Nakajima, T. Kurokawa, K. Yasuda, S. Tanaka, J. P. Gong, “Micro patterning of hydroxyapatite by soft lithography on hydrogels for selective osteoconduction”, Acta Biomater. 2018, 81, 60-69.
  12. T. I. Mredha, N. Kitamura, T. Nonoyama, S. Wada, K. Goto, X. Zhang, T. Nakajima, T. Kurokawa, Y. Takagi, K. Yasuda, J. P. Gong, “Anisotropic tough double network hydrogel from fish collagen and its spontaneous in vivo bonding to bone”, Biomaterials 2017, 132, 85-95.
  13. Fukao, T. Nonoyama*, R. Kiyama, K. Furusawa, T. Kurokawa, T. Nakajima, J. P. Gong, “Anisotropic Growth of Hydroxyapatite in Stretched Double Network Hydrogel”, ACS Nano 2017, 11, 12103-12110.
  14. Wada, N. Kitamura, T. Nonoyama, R. Kiyama, T. Kurokawa, J. P. Gong, K. Yasuda, “Hydroxyapatite-coated double network hydrogel directly bondable to the bone: Biological and biomechanical evaluations of the bonding property in an osteochondral defect”, Acta Biomater. 2016, 44, 125-134.
  15. Nonoyama, S. Wada, R. Kiyama, N. Kitamura, M. T. I. Mredha, X. Zhang, T. Kurokawa, T. Nakajima, Y. Takagi, K. Yasuda, J. P. Gong, “Double-Network Hydrogels Strongly Bondable to Bones by Spontaneous Osteogenesis Penetration”, Adv. Mater. 2016, 28, 6740-6745.

コメント&その他
趣味:登山・トレッキング、スノーボード、釣り、キャンプ、山菜採り、キノコ狩り
最近はカヤックツーリングやカイトサーフィンに興味があります。
好きな食べ物:ウニ、馬刺し、貝全般
好きな本:サピエンス全史
好きな映画:マトリックス
もし研究者になっていなかったら:探検家、冒険家
これまで経験した最高にexcitingな発見:単純な高分子と塩の組み合わせで、高温でガラス化するゲルを発見したこと

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ニューヨークでポスドクやってました。今は旧帝大JKJ。専門は超高速レーザー分光で、分子集合体の電子ダイナミクスや、有機固体と無機固体の境界、化学反応の実時間観測に特に興味を持っています。

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