[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

デミス・ハサビス Demis Hassabis

[スポンサーリンク]

デミス・ハサビス(Demis Hassabis 1976年7月27日 北ロンドン生まれ) はイギリスの人工知能研究者である。Google DeepMindのCEO(2024年10月現在)。

略歴

1976年7月27日 – イギリス・ロンドンで誕生
1993年 – ブルフロッグ・プロダクションでキャリアを開始
1994年 – 17歳で『テーマパーク』のデザイン補助とリードプログラミングを担当
1997年 – ケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジに入学
2000年 – ライオンヘッド・スタジオで『ブラック&ホワイト』のリードAIプログラマーとして勤務
2009年 – ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で認知神経科学の博士号を取得
2010年 – DeepMindを共同設立
2014年 – GoogleがDeepMindを買収、ハサビスはエンジニアリング担当副社長に就任

受賞歴

2017年 – Time誌の「最も影響力のある100人」に選出される
2018年 – CBE(大英帝国勲章コマンダー)
2020年 – ダン・デイビッド賞未来部門
2023年 – ガードナー国際賞、アルバート・ラスカー基礎医学研究賞
2024年慶應医学賞
2024年クラリベイト引用栄誉賞
2024年 – ノーベル化学賞

その他

1989年頃 – 13歳でチェスのイロレーティングが2300に達する
1992年 – 16歳でAレベルとSレベル試験を終了
1994年 – 17歳で『テーマパーク』のデザイン補助とリードプログラミングを担当
2003年 – マインドスポーツオリンピアードで5回目の優勝を果たし、競技から引退
2015年 – DeepMindのAlphaGoがヨーロッパ囲碁チャンピオンに勝利
2016年 – AlphaGoが李世乭に勝利
2017年 – Time誌の「最も影響力のある100人」に選出される
2018年 – AlphaFoldを発表
2020年 – AlphaFold2を発表

研究(化学に関係する範囲に絞って)

人工知能を活用したタンパク質構造予測

デミス・ハサビスとそのチームが開発したAIモデル「AlphaFold」は、たんぱく質の立体構造を予測する分野において大きな進展をもたらした。AlphaFold2は既知のアミノ酸配列とたんぱく質構造を学習したAIモデルで、未知のたんぱく質構造を予測するために使用される。AlphaFold2は以下のような4つのステップで予測を行う。

1.データ入力とデータベース検索

アミノ酸配列(未知の構造を持つもの)がAlphaFold2に入力され、データベースで類似したアミノ酸配列や既知のたんぱく質構造を検索する。

2.配列解析

異なる種からの類似したアミノ酸配列を解析し、進化の過程でどの部分が保存されているかを調べる。その後、相互作用するアミノ酸が3次元構造内でどのように関わるかを調べる。例えば、あるアミノ酸が荷電している場合、反対の電荷を持つアミノ酸に引き寄せられたり、水分子に置き換えられることで疎水性になることが考えられる。
これに基づき、アミノ酸同士の距離を推定した「Distance map」を生成し、たんぱく質内でアミノ酸がどれだけ近くに配置されているかを示す。

3.AI解析

ニューラルネットワークを使ってアミノ酸配列とDistance mapを反復的に洗練し、重要な要素を特定する。このニューラルネットワークには「トランスフォーマー」と呼ばれる技術が使われており、大量のデータから重要な情報を効果的に抽出する。

4.仮説構造の生成

AlphaFold2は、アミノ酸のパズルを組み立てるようにして、仮のたんぱく質構造を予測する。ステップ3を何度も繰り返し、3回目のサイクルで最終的な構造に到達する。構造の各部分がどの程度正確であるかをAIが確率的に算出する。

研究者たちが「CASP」(Critical Assessment of protein Structure Prediction)という競技会で予測したたんぱく質の構造は、AlphaFoldが現れるまでは精度が良くても40%程度だった。しかし、ハサビスのチームが作り上げたAlphaFoldは、この精度を大幅に上回り、60%近い精度を達成した。AlphaFold2では90%もの予測精度を達成している。

NobelPrize.orgより画像を改変して利用 [The Nobel Prize in Chemistry 2024 They cracked the code for proteins’ amazing structures]

 

関連文献

  1. John Jumper, Richard Evans, Alexander Pritzel, Tim Green, Michael Figurnov, Olaf Ronneberger, Kathryn Tunyasuvunakool, Russ Bates, Augustin Žídek, Anna Potapenko, Alex Bridgland, Clemens Meyer, Simon A. A. Kohl, Andrew J. Ballard, Andrew Cowie, Bernardino Romera-Paredes, Stanislav Nikolov, Rishub Jain, Jonas Adler, Trevor Back, Stig Petersen, David Reiman, Ellen Clancy, Michal Zielinski, Martin Steinegger, Michalina Pacholska, Tamas Berghammer, Sebastian Bodenstein, David Silver, Oriol Vinyals, Andrew W. Senior, Koray Kavukcuoglu, Pushmeet Kohli & Demis Hassabis, Highly accurate protein structure prediction with AlphaFold. Nature 2021, 596, 583-589. DOI: 10.1038/s41586-021-03819-2

関連リンク

spectol21

投稿者の記事一覧

ニューヨークでポスドクやってました。今は旧帝大JKJ。専門は超高速レーザー分光で、分子集合体の電子ダイナミクスや、有機固体と無機固体の境界、化学反応の実時間観測に特に興味を持っています。

関連記事

  1. 菅裕明 Hiroaki Suga
  2. マーティン・カープラス Martin Karplus
  3. 井上 佳久 Yoshihisa Inoue
  4. モーテン・メルダル Morten P. Meldal
  5. 石谷 治 Osamu Ishitani
  6. アダム・コーエン Adam E. Cohen
  7. スティーブ・ケント Stephen B. H. Kent
  8. クリストファー・ウエダ Christopher Uyeda

注目情報

ピックアップ記事

  1. 2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル保護基 Teoc Protecting Group
  2. 銀を使ってリンをいれる
  3. 香りの化学2
  4. 【10月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】 題目:有機金属化合物 オルガチックスを用いたゾルゲル法とプロセス制御ノウハウ(2)
  5. 昭和電工、青色LEDに参入
  6. ダン・シェヒトマン博士の講演を聞いてきました。
  7. 高分子界の準結晶
  8. 武装抗体―化学者が貢献できるポイントとは?
  9. マーティン・バーク Martin D. Burke
  10. 女優・吉岡里帆さんが、化学大好きキャラ「DIC岡里帆(ディーアイシーおか・りほ)」に変身!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年10月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP