[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

杉安和憲 SUGIYASU Kazunori

[スポンサーリンク]

 

杉安和憲(SUGIYASU Kazunori, 1977年10月4日〜)は、超分子化学を専門とする日本の化学者。京都大学 教授。第46回ケムステVシンポ講師。

 

経歴

2000年3月 九州大学工学部応用物質化学科 卒業
2005年3月 九州大学大学院工学府物質創造工学専攻 博士課程修了 博士(工学)(新海征治 教授)
2005年4月-2007年6月 マサチューセッツ工科大学化学科 博士研究員(Tim Swager 教授)
2007年7月-2007年12月 物質・材料研究機構 NIMSポスドク研究員(竹内正之 GL)
2008年1月-2021年11月 物質・材料研究機構 主任研究員を経て主幹研究員
2021年12月-現在 京都大学 教授

受賞歴

2012年 若い世代の特別講演証(日本化学会第92春季年会)
2013年 高分子研究奨励賞
2016年 科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞
2016年 高分子学会関西支部 ヤングサイエンティスト講演賞
2018年 Friedrich Wilhelm Bessel Research Award (フンボルト財団)
2019年 高分子学会学術賞
2021年 物質・材料研究機構 理事長賞研究奨励賞

研究業績

高分子は、モノマー分子が共有結合によって連結された重合体である。これに対して、モノマー分子が水素結合や配位結合、ファンデルワールス相互作用などの弱い分子間相互作用によって連結された分子集合体を『超分子ポリマー』と呼ぶ。分子間相互作用の可逆性を特徴として、超分子ポリマーは、リサイクル性や自己修復能を有する新しいポリマー材料として期待されている。

超分子ポリマーの精密合成

超分子ポリマーの構造と機能の相関が明らかにされるにつれて、その精密合成法が求められるようになった。しかしながら、上記の特徴の通り、超分子ポリマーの成長は平衡論に支配された自発的かつ可逆的なプロセスであるため、その制御は非常に難しく、超分子ポリマーの精密合成手法は確立されていなかった。ごく最近まで、超分子ポリマーの長さを制御することや、ブロック超分子ポリマーを合成することは大きな難題として残されていた。このような中、われわれのグループは速度論に支配されたユニークな超分子重合を発見し、そのメカニズムを応用することによって、高分子化学におけるリビング重合に類似した手法を超分子ポリマーに対して開発することに成功した [1-3]

超分子ポリマーの新物性の開拓

超分子ポリマーはサステイナブルなポリマー材料として期待されている。これまでに報告されている超分子ポリマーの多くはアモルファス性の物質である。これに対して共有結合性の高分子では、結晶性と非晶性、階層性、ミクロ相分離やブレンドなどを制御することによって様々な特性を有する材料が開発されている。われわれのグループは、高分子材料科学からヒントを得て、超分子ポリマーの材料化に挑戦している。最近、超分子ポリマーの等温結晶化において、結晶性高分子でよく見られる球晶が形成されることを見出した。また、結晶化温度に依存して超分子ポリマーの球晶成長が著しく影響を受けること、さらにはこうして超分子ポリマーの接着特性を制御し得ることことを実証した[4]。このように高分子と超分子の類似点や相違点を明確にしながら、超分子ポリマーの特長を生かした階層性超分子材料の開発を目指している[5]

名言集

コメント&その他

関連動画

関連文献

[1] Ogi, S.; Sugiyasu, K.; Manna, S.; Samitsu, S.; Takeuchi, M. “Living supramolecular polymerization realized through a biomimetic approach” Nat. Chem. 2014, 6, 188–195. DOI: 10.1038/NCHEM.1849

[2] Fukui, T.; Kawai, S.; Fujinuma, S.; Matsushita, Y.; Yasuda, T.; Sakurai, T.; Seki, S.; Takeuchi, M.; Sugiyasu, K. “Control over differentiation of a metastable supramolecular assembly in one and two dimensions” Nat. Chem. 2017, 9, 493–499. DOI: 10.1038/NCHEM.2684

[3] Sasaki, N.; Kikkawa, J.; Ishii, Y.; Uchihashi, T.; Imamura, H.; Takeuchi, M.; Sugiyasu, K. “Multistep, site-selective noncovalent synthesis of two-dimensional block supramolecular polymers” Nat. Chem. 2023, 15, 922–929. DOI: 10.1038/s41557-023-01216-y

[4] Shimada, T.; Watanabe, Y.; Furuya, T.; Nishida, K.; Samitsu, S.; Wakayama, Y.; Sugiyasu, K. “Spherulites of supramolecular polymers formed from undercooled melts, and their adhesive properties” Chem. Lett.2004, 53, upad030. DOI: 10.1093/chemle/upad030

[5] Shimada, T.; Watanabe, Y.; Kajitani, T.; Takeuchi, M.; Wakayama, Y.; Sugiyasu, K. “Individually separated supramolecular polymer chains toward solution-processable supramolecular polymeric materials” Chem. Sci. 2023, 14, 822–826. DOI: 10.1039/d2sc06089b

関連書籍

関連リンク

京都大学 杉安研究室
杉安研究室 Xアカウント

Macy

投稿者の記事一覧

有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

関連記事

  1. 友岡 克彦 Katsuhiko Tomooka
  2. 槌田龍太郎 Ryutaro Tsuchida
  3. 安達 千波矢 Chihaya Adachi
  4. マット・ショアーズ Matthew P. Shores
  5. ジェームス・ツアー James M. Tour
  6. ジョナス・ピータース Jonas C. Peters
  7. エリック・フェレイラ Eric M. Ferreira
  8. 谷池俊明 Toshiaki Taniike

注目情報

ピックアップ記事

  1. 可視光を吸収する配位子を作って、配位先のパラジウムを活性化する
  2. 嘉部 量太 Ryota Kabe
  3. リンと窒素だけから成る芳香環
  4. ネイティブ・ケミカル・ライゲーション Native Chemical Ligation (NCL)
  5. ネオジム磁石の調達、製造技術とビジネス戦略【終了】
  6. 徹底的に電子不足化した有機π共役分子 ~高機能n型有機半導体材料の創製を目指して~
  7. 可視光によるC–Sクロスカップリング
  8. 英会話とプログラミングの話
  9. 磁性液体:常温で液体になる磁性体を初発見 東大大学院
  10. 熱を効率的に光に変換するデバイスを研究者が開発、太陽光発電の効率上昇に役立つ可能性

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年9月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー