眞鍋史乃 (まなべしの)は日本の有機化学者。星薬科大学薬学部/東北大学大学院薬学研究科医薬品開発研究センター・教授。第35回ケムステVシンポ「有機合成が拓く最先端糖化学」講師。
経歴
1992年 3月 東京大学大学院薬学研究科製薬化学専攻博士課程前期修了(古賀憲司教授)
1993年 12月 米国コロンビア大学化学科・Staff Associate(Gilbert Stork 教授)
1996年 3月 東京大学大学院薬学研究科製薬化学専攻博士課程後期修了(古賀憲司教授)
1996年 4月 東京大学薬学部・教務補佐員(古賀憲司教授)
1996年 10月 理化学研究所・基礎科学特別研究員(小川智也主任研究員)
1999年 10月 科学技術振興事業団・CREST研究員(中原義昭教授)
2000年 4月 理化学研究所・研究員(伊藤幸成主任研究員)
2004年 4月 独立行政法人理化学研究所・先任研究員
2007年 4月 独立行政法人理化学研究所・専任研究員(所内規程変更による)
2019年 10月 東北大学大学院薬学研究科医薬品開発研究センター・教授(クロスアポイントメント:現在に至る)
2020年 4月 星薬科大学薬学部・教授(現在に至る)
受賞歴
- 令和2年度 第13回社団法人有機合成化学協会企業冠賞 カネカ・生命科学賞「複合糖質の均一合成による高機能化合物創成研究」
- 平成28年度 日本学術振興会科学研究費審査日本学術振興会表彰
- 平成24年度 第5回資生堂女性研究者サイエンスグラント
- 平成19年度 The 4th Japanese-Sino Symposium on Organic Chemistry for Young Scientists, Outstanding Research Presentation Award
- 平成14年度 平成14年度日本薬学会奨励賞
- 平成14年度 日本薬学会第27回反応と合成の進歩シンポジウムポスター賞
- 平成10年度 公益社団法人有機合成化学協会 中外製薬研究企画賞
研究業績
糖鎖迅速合成法の開発と生物活性糖鎖の合成
生体高分子であるペプチドや核酸は、自動合成による供給が可能となっている。糖鎖は、構造の複雑性や合成の難しさから自動合成には至っていない。
高極性、可溶性の短いポリエチレングリコール鎖を支持担体として、糖鎖迅速合成手法を開発した1,2。精製の簡便化、基質切り出しを伴わない高分子担体上での反応モニタリング法の開発3を行い、生物活性を持つ複雑な骨格の糖鎖4やN-結合型糖鎖ライブラリーの合成を行った5。
C-結合型タンパク質翻訳後修飾: C-Man-Trp の合成と病変との関係の解明
タンパク質Trp へのマンノースの付加は翻訳後修飾として広く見出される。
C-mannosyl tryptophan (C-Man-Trp)の初の全合成を行い6、共同研究により、卵巣がんの既存のバイオマーカーよりも優れていることを見出した。
エンド開裂反応の存在の証明と合成への応用
Fischer による最初のグリコシル化反応以来、一般的なグリコシル化反応では、アノマー位の脱離基を活性化し、環状オキソカルべニウムイオンを中間体とする。ピラノシドに2,3-trans カーバメート基を導入する7とアノマー炭素と環内酸素との間の結合が切断され(エンド開裂)、鎖状カチオンが生じた後、再環化する経路にて異性化することを見出した8,9。エンド開裂は、1980年代にその存在が議論されたものである。高い立体選択性で、1,2-cis アミノ糖を構築できるのみならず、既存のグリコシド立体配置を変換することができる10。
抗体・薬物複合体開発
抗体・薬物複合体は、抗体の高機能化を行うことができる。間質が豊富であるために治療が困難である固形がんに対する抗体・薬物複合体の新規リンカー開発11、糖鎖部位でのsite-specific な付加による均一構造の抗体・薬物複合体合成の手法を開発した12。
参考文献
- H. Ando, S. Manabe, Y. Nakahara, Y. Ito, J. Am. Chem. Soc. 123, 3848–3849 (2001).
- H. Ando, S. Manabe, Y. Nakahara, Y. Ito, Angew. Chem. Int. Ed. 40, 4725–4728 (2001).
- S. Manabe, Y. Ito, J. Am. Chem. Soc. 124, 12638–12639 (2002).
- S. Hanashima, S. Manabe, K. Inamori, N. Taniguchi, Y. Ito, Angew. Chem. Int. Ed. 43, 5674–5677 (2004).
- S. Hanashima, S. Manabe, Y. Ito, Angew. Chem. Int. Ed. 44, 4218–4224 (2005).
- S. Manabe, Y. Ito, J. Am. Chem. Soc. 121, 9754–9755 (1999).
- S. Manabe, K. Ishii, Y. Ito, J. Am. Chem. Soc. 128, 10666–10667 (2006).
- S. Manabe, K. Ishii, D. Hashizume, H. Koshino, Y. Ito, Chem. Eur. J. 15, 6894–6901 (2009).
- H. Satoh, S. Manabe, Y. Ito, H. P. Lüthi, T. Laino, J. Hutter, J. Am. Chem. Soc. 133, 5610–5619 (2011).
- S. Manabe, H. Satoh, J. Hutter, H. P. Lüthi, T. Laino, Y. Ito, Chem. Eur. J. 20, 124–132 (2014).
- H. Fuchigami, S. Manabe, M. Yasunaga, Y. Matsumura, Sci. Rep. 8, 14211 (2018).
- S. Manabe, Y. Yamaguchi, K. Matsumoto, H. Fuchigami, T. Kawase, K. Hirose, A. Mitani, W. Sumiyoshi, T. Kinoshita, J. Abe, M. Yasunaga, Y. Matsumura, Y. Ito, Bioconj. Chem. 30, 1343-1355 (2019).