谷口透(たにぐちとおる)は、赤外円二色性(VCD)スペクトルや紫外-可視円二色性(ECD)スペクトルを活用し、分子の構造解析を研究している有機化学者である。
北海道大学大学院先端生命科学研究院 講師
第31回ケムステVシンポ 講師
経歴
2002年 北海道大学理学部 卒業
2005年-2006年 コロンビア大学化学科 visiting scholar
2007年 北海道大学大学院理学研究科博士課程 修了(博士:理学)
同年 コロンビア大学化学科 博士研究員
2008年 ハーバード大学化学・化学生物学科 博士研究員
2010年 北海道大学大学院先端生命科学研究院 助教
2019年 北海道大学大学院先端生命科学研究院 講師
受賞歴
2012年 天然物化学談話会奨励賞
2012年 天然有機化合物討論会奨励賞
2015年 日本化学会進歩賞
2015年 高分子研究奨励賞
2019年 Banyu Chemist Award (BCA)
2020年 Thieme Chemistry Journals Award
研究業績
VCD(赤外円二色性)とECDを用いた有機分子の立体構造解析
キラル分子は、左回りの円偏光と右回りの円偏光に対して異なった振る舞いをする。この差を検出するのが円二色性であり、ECD(紫外-可視円二色性)やVCD(赤外円二色性)がある。このうち、VCDは分子振動に基づくシグナルを検出することから、全てのキラル分子に利用可能な分光法である。また理論計算の信頼性が高いため、実測VCDスペクトルと理論計算VCDスペクトルを比較するだけで解析対象分子のキラリティーとコンフォメーションを解明できる簡便な手法である1-4。特にカルボニル基などの強い伸縮振動を持つ官能基があると明瞭なVCDスペクトルが観察されやすいが1、最近では赤外吸収が弱い柔軟な酸化脂質などの立体決定にも成功している4。
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我々はVCDを用いた天然物・合成分子の構造解析方法論を開発するとともに、その方法論の実践によって各種分子のキラリティーとコンフォメーションを解明してきた。またTDDFTによるECD計算法の開発初期から、ECDを用いた構造解析研究も継続している。
コメント&その他
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関連文献
- Taniguchi, T.; Monde, K. Exciton Chirality Method in Vibrational Circular Dichroism. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 3695-3698.
- Taniguchi, T.; Nakano, K.; Baba, R.; Monde, K. Analysis of Configuration and Conformation of Furanose Ring in Carbohydrate and Nucleoside by Vibrational Circular Dichroism. Org. Lett. 2017, 19, 404-407.
- Taniguchi, T.; Suzuki, T.; Satoh, H.; Shichibu, Y.; Konishi, K.; Monde, K. Preparation of Carbodiimides with One-Handed Axial Chirality. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 15577-15581.
- Taniguchi, T.; Ida, N.; Kitahara, T.; Agbo, D. O.; Monde, K. Stereochemical Analysis of Flexible Oxidized Lipids by VCD Spectroscopy. Chem. Commun. 2022, 58, 6116-6119.