[スポンサーリンク]

ケミカルバイオロジー

佐藤しのぶ ShinobuSato

[スポンサーリンク]

佐藤しのぶ (さとう しのぶ)は、日本の化学者である。専門はバイオ分析化学。2021年現在、九州工業大学工学研究院物質工学研究系 准教授。第23回ケムステVシンポ講師。

経歴

2000年3月 九州大学工学部 卒業
2002年3月 九州大学大学院工学府 修士課程 修了
2002年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC1、~2005年3月)
2005年3月 九州大学大学院工学府 博士課程 修了
2005年4月 日本学術振興会 特別研究員(PD、~2008年3月)
2008年4月 九州工業大学バイオマイクロセンシング技術研究センター 助教
2010年4月 九州工業大学バイオマイクロセンシング技術研究センター 研究職員
2011年6月 九州工業大学工学研究院物質工学研究系 助教
2012年11月 九州工業大学工学研究院物質工学研究系 准教授

受賞歴

2004年 日本化学会第84春季年会学生講演賞
2004年 九州分析化学奨励賞
2010年 ナノ学会第9大会 若手優秀発表賞
2010年 日本分析化学会第60年会 若手講演賞
2011年 第二十二回バイオ・高分子シンポジウム 若手研究者奨励講演賞
2011年 日本分析化学会奨励賞
2018年 2018年度女性Analyst賞(日本分析化学会)
2018年 Nanoscale Horizons Award
2018年 2017年「分析化学」論文賞

研究業績

  1. 電気化学的遺伝子検出を利用した癌の早期診断【遺伝子の異常メチル化検出の試み】

テロメラーゼは、がんで特異的に発現している蛋白質であるが、RNA蛋白質であるため、非常に不安定なものです。テロメラーゼの触媒活性因子であるhTERT遺伝子の異常メチル化によって、テロメラーゼが発現することが知られています。そこで、私たちはhTERT遺伝子の異常メチル化を電気化学的ハイブリダイゼーションアッセイ法1,2で検出することで、前がん病変からがんへの変異を迅速にとらえること、さらに術後の予後診断に利用できるのではないかと考えました。

検出指示薬として、2本鎖DNAに選択的に結合するFNDを設計・合成しました。検出方法は、以下の通りです。メチル化遺伝子に相補的な遺伝子(24 塩基)を金電極表面に固定化したDNAチップを調整します。このチップに、前処理された口腔がん、白板症(前がん病変)、健常者由来の臨床サンプルを作用させます。この処理前後で電気化学測定を行い、電流増加率を評価します。メチル化頻度の高いDNAをとらえるプローブ固定化電極での応答で評価したところ、がん(OSCC)、白板症(oral leaukoplakia),健常者(healthy volunteers)で、明瞭な差が得られました。2これより前がん病変からがんの早期診断の可能性が示されました。

  1. テロメラーゼをマーカーとした癌診断システム(ECTA)の構築

がんで特異的に発現しているテロメラーゼの活性測定法は、DNAを増幅するPCRが必須ですが、臨床サンプル中の夾雑物の影響により、DNAが増幅されず、正しく評価できないことがしばしばありました。私たちは、DNAチップを用いて、わずか30分でテロメラーゼ活性を評価するシステムを構築しています。3 テロメラーゼが存在すると、チップ上のDNAが伸長され、伸長されたDNAが4本鎖DNA構造を形成します。私たちは4本鎖DNAを認識し、電気化学シグナルを示すフェロセン化ナフタレンジイミド(FND)を開発し、これによる口腔がんのスクリーニングを達成しました(九州歯科大学との共同研究)。電気化学システムでは、PCRを行うことなく、電極近傍の反応変化を観察できるため、夾雑物の影響を受けることなく、テロメラーゼを迅速かつ高感度に検出することができます。この測定法では、がんでは30%以上の電流増加を示しましたが、健常者の電流増加は20%以下でした。本システムでは、閾値をROC解析によって設定し、感度、特異度を算出したところ、それぞれ93, 86%と高い正診断性をもつことが分かりました。4また、口腔がんの進行度別に評価したところ、腫瘍サイズ2 cm以下のStage I, IIでは100%, 2 cm以上のStage III, IVでは95%でがんと判定することができました。本結果からも、ECTAは、口腔がんの初期スクリーニングに適していると予想されます。4

関連文献 (ACS StyleDOIをつけたものを推奨しております。)

  1. Sato, S.; Tsueda, M.; Kanezaki, Y.; Takenaka, S. Detection of an aberrant methylation of CDH4 gene in PCR product by ferrocenylnaphthalene diimide-based electrochemical hybridization assay. Anal.Chim. Acta2012, 715, 42-48, DOI: 10.1016/j.aca.2011.12.010.
  2. Haraguchi, K.; Sato, S.; Habu, M.; Yada, N.; Hayakawa, M.; Takahashi, O.; Yoshioka, I., Matsuo, K.; Tominaga, K.; Takenaka, S. Oral Cancer Screening Based on Methylation Frequency Detection in hTERT Gene Using Electrochemical Hybridization Assay via a Multi-electrode Chip Coupled with Ferrocenylnaphthalene Diimide. Electroanal. 2017, 29, 1596-1601, DOI: 10.1002/elan.201700028.
  3. Sato, S.; Kondo, H.; Nojima, T.; Takenaka, S. Electrochemical Telomerase Assay with Ferrocenylnaphthalene Diimide as a Tetraplex DNA-Specific Binder. Anal. Cnem. 2005, 77, 7304-7309, DOI: 10.1021/ac0510235.
  4. Mori, K.; Sato, S.; Kodama, M.; Habu, M.; Takahashi, O.; Nishihara, T.; Tominaga, K.; Takenaka, S. Article Navigation Oral Cancer Diagnosis via a Ferrocenylnaphthalene Diimide–Based Electrochemical Telomerase Assay. Clin. Chem. 2013, 59, 289-295, DOI: 10.1373/clinchem.2012.191569.

関連動画

関連リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ディーター・ゼーバッハ Dieter Seebach
  2. ジョアン・スタビー JoAnne Stubbe
  3. 城戸 淳二 Junji Kido
  4. 布施 新一郎 Shinichiro Fuse
  5. 中村栄一 Eiichi Nakamura
  6. bassler ボニー・L.・バスラー Bonnie L. Bassler
  7. バリー・トロスト Barry M. Trost
  8. 中西 和樹 Nakanishi Kazuki

注目情報

ピックアップ記事

  1. なぜ電子が非局在化すると安定化するの?【化学者だって数学するっつーの!: 井戸型ポテンシャルと曲率】
  2. 金属内包フラーレンを使った分子レーダーの創製
  3. 第18回次世代を担う有機化学シンポジウム
  4. 化学の資格もってますか?
  5. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑨:トラックボールの巻
  6. 分子間エネルギー移動を利用して、希土類錯体の発光をコントロール!
  7. 実例で分かるスケールアップの原理と晶析【終了】
  8. ネッド・シーマン Nadrian C. Seeman
  9. 【予告】ケムステ新コンテンツ『CSスポットライトリサーチ』
  10. オーヴァーマン転位 Overman Rearrangement

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年12月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

モータータンパク質に匹敵する性能の人工分子モーターをつくる

第640回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所・総合研究大学院大学(飯野グループ)原島崇徳さん…

マーフィー試薬 Marfey reagent

概要Marfey試薬(1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-アラニンアミド、略称:FD…

UC Berkeley と Baker Hughes が提携して脱炭素材料研究所を設立

ポイント 今回新たに設立される研究所 Baker Hughes Institute for…

メトキシ基で転位をコントロール!Niduterpenoid Bの全合成

ナザロフ環化に続く二度の環拡大というカスケード反応により、多環式複雑天然物niduterpenoid…

金属酸化物ナノ粒子触媒の「水の酸化反応に対する駆動力」の実験的観測

第639回のスポットライトリサーチは、東京科学大学理学院化学系(前田研究室)の岡崎 めぐみ 助教にお…

【無料ウェビナー】粒子分散の最前線~評価法から処理技術まで徹底解説~(三洋貿易株式会社)

1.ウェビナー概要2025年2月26日から28日までの3日間にわたり開催される三…

第18回日本化学連合シンポジウム「社会実装を実現する化学人材創出における新たな視点」

日本化学連合ではシンポジウムを毎年2回開催しています。そのうち2025年3月4日開催のシンポジウムで…

理研の一般公開に参加してみた

bergです。去る2024年11月16日(土)、横浜市鶴見区にある、理化学研究所横浜キャンパスの一般…

ツルツルアミノ酸にオレフィンを!脂肪族アミノ酸の脱水素化反応

脂肪族アミノ酸側鎖の脱水素化反応が報告された。本反応で得られるデヒドロアミノ酸は多様な非標準アミノ酸…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー