[スポンサーリンク]

ケミカルバイオロジー

バリー・ハリウェル Barry Halliwell

[スポンサーリンク]

バリー・ハリウェル (Barry Halliwell、1949年10月18日-)は、イギリスの生化学者である。シンガポール国立大学ヨンルーリン医学部バイオケミストリー学科特別教授。2021年クラリベイト「引用栄誉賞」受賞者(写真出典:シンガポール国立大学ヨンルーリン医学部

経歴

1971 オックスフォード大学卒業(B.A. バイオケミストリー)
1973 オックスフォード大学卒業(D.Phil バイオケミストリー)
1973 オックスフォード大学リサーチフェロー
1974 ロンドン大学バイオケミストリー講師
1985 ロンドン大学バイオケミストリーリーダー
1986 ロンドン大学にてD.Sc取得(動植物におけるフリーラジカル反応のバイオケミストリー)
1988 ロンドン大学薬理学科教授(医学的生化学)
1998 シンガポール国立大学バイオケミストリー客員教授
2000 シンガポール国立大学ヨンルーリン医学部バイオケミストリー学科長
2000年以降、シンガポール国立大学にて様々な要職を歴任されています。また、2019年にはインペリアルカレッジの客員教授にも就任されています。

受賞歴

2008 フリーラジカルバイオロジー学会Lifetime Achievement Award
2011 ケン・バウマンリサーチ賞
2011 Antioxidants & Redox SignalingによるRedox Pioneer
2012 アメリカ科学振興協会フェロー
2013 シンガポール大統領サイエンスアンドテクノロジーメダル
2021 クラリベイト「引用栄誉賞」:ヒトの病気におけるフリーラジカルと抗酸化物質の役割を含む、フリーラジカル化学における先駆的な研究

研究業績

生物学におけるフリーラジカルと抗酸化物質の役割に関する分野では大変有名で、執筆されたレビュー論文は数多く引用されています。また、ハリウェル教授の著書 Free Radicals in Biology and Medicineはこの分野の権威のある世界的な教科書とされています。近年では、アルツハイマー病や脳障害といった病気へのフリーラジカルと抗酸化物質の役割の解明に注力しており、人間の食べ物に含まれる最も重要な抗酸化物質を特定し、それがどのように病気を誘発したり防ぐかを理解することに興味を持っているそうです。

鉄塩存在下におけるヒドロキシラジカル発生のスーパーオキシド依存性

過酸化水素とスーパーオキサイドラジカルは反応を起こしてヒドロキシラジカルを発生させ、細胞にダメージを与えますが、発生反応には遷移金属イオンが触媒として作用します。そこで種々の条件でハーバー・ワイス反応を試行し、キレート配位子の構造や組み合わせによって反応の活性が変わることを明らかにしました。

生体内でヒドロキシラジカルが生成する反応式

硫化水素の寿命への影響

カロリー制限は、生物の寿命を延ばし健康に良い影響を与える方法だとが判明していますが、低濃度の硫化水素がそれを介在する重要な役割を持っているかもしれないと言われています。そこで、ゆっくりと硫化水素を放出するH2Sドナードラックを線虫C. elegansに暴露し寿命を調べました。すると、H2SドナードラックがC. elegansの寿命を延ばし健康も促進することが確認されました。ただ、H2S放出ドナーはカロリー制限を完全に模倣しておらず、別の方法で老化を調節しているのかもしれないことも示唆されました。

aとb: H2SドナードラックFW1251を各濃度で線虫に暴露した時の生存日数の変化 cとd: H2SドナードラックFW1256を各濃度で線虫に暴露した時の生存日数の変化 e:FW1256を500 μM暴露させたときの生存の延長割合を示したボックスプロット図(出典:原著論文

名言集

コメント&その他

2021年9月現在、トムソン・ロイターで165のh-indexを持ち、ハリウェル教授は生物と生化学の分野で世界中で最も引用されている研究者の一人とされています。

関連動画

参考文献

関連書籍

[amazonjs asin=”B0145ATV8C” locale=”JP” title=”Free Radicals in Biology and Medicine (English Edition)”] [amazonjs asin=”3642068510″ locale=”JP” title=”Cigarette Smoke and Oxidative Stress”]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. トーマス・ズートホーフ Thomas Sudhof
  2. 安積徹 Tohru Azumi
  3. サン・タン San H. Thang
  4. ジェフリー·ロング Jeffrey R. Long
  5. 相田 卓三 Takuzo Aida
  6. フランシス・アーノルド Frances H. Arnold
  7. 秋田英万 Akita Hidetaka
  8. レザ・ガディリ M. Reza Ghadiri

注目情報

ピックアップ記事

  1. がんをスナイプするフェロセン誘導体
  2. 光触媒の力で多置換トリフルオロメチルアルケンを合成
  3. 第25回 溶媒の要らない固体中の化学変換 – Len MacGillivray教授
  4. 光触媒でエステルを多電子還元する
  5. 高分子化学をふまえて「神経のような動きをする」電子素子をつくる
  6. クリーンなラジカル反応で官能基化する
  7. 向山水和反応 Mukaiyama Hydration
  8. 全薬工業とゼファーマ、外用抗真菌薬「ラノコナゾール」配合の水虫治療薬を発売
  9. 徒然なるままにセンター試験を解いてみた
  10. コープ転位 Cope Rearrangement

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年9月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー