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畠山琢次 Takuji Hatakeyama

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畠山琢次 (はたけやま たくじ)は、日本の化学者である。専門は有機合成化学,材料化学。2021年現在、関西学院大学 教授。第17回ケムステVシンポ講師。

経歴

2000 東京大学理学部化学科卒業
2002 東京大学大学院理学系研究科化学専攻修士課程修了(中村栄一教授)
2005 東京大学大学院理学系研究科化学専攻博士課程修了(中村栄一教授)
2005 シカゴ大学化学科 博士研究員(R. F. Ismagilov教授)
2006 京都大学化学研究所 助手(中村正治教授)
2007 京都大学化学研究所 助教(中村正治教授)
2013 関西学院大学理工学部 准教授
2018 関西学院大学理工学部 教授
2021 関西学院大学理学部 教授

(兼任)

2004–2006 日本学術振興会特別研究員(DC2, PD)
2011–2015 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(さきがけ)「新物質科学と元素戦略」領域 研究員
2013–2016 京都大学触媒・電池元素戦略ユニット拠点准教授

受賞歴

2007 有機合成化学協会研究企画賞(カネカ)
2007 京大化研奨励賞
2011 第3回フッ素化学研究奨励賞
2012 第1回新化学技術研究奨励賞
2013 日本化学会第62回進歩賞
2014 International Display Workshops 2014 Best Paper Award
2015 平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞
2017 Chemist Award BCA 2017
2018 Thieme Chemistry Journal Award 2018
2018 Asian CORE Program/Advanced Research Network, Lectureship Award (Singapore)
2019 有機合成化学協会企業冠賞(富士フィルム・機能性材料化学賞)
2020 有機EL討論会 第13回業績賞
2020 第52回市村学術賞 貢献賞
2020 The Society for Information Display 2020 Special Recognition Award
2021 長瀬研究振興賞

研究業績

  1. タンデムヘテロFriedel-Crafts反応の開発

ホウ素やリンなどのヘテロ元素を含むπ共役化合物は,材料科学分野において広く研究されてきたが,合成上の制約から,そのほとんどはヘテロ元素を分子骨格の外周部に有するものであった。これに対し畠山氏は,独自に開発した「タンデムヘテロFriedel-Crafts反応1,2を駆使し,ヘテロ元素を分子骨格の内部(縮環部)に有する新たなπ共役化合物群の創出に成功している3

2. 多重共鳴効果を用いた狭帯域発光材料の開発

有機発光材料のフロンティア軌道は主として原子間に存在するため,LUMO– HOMO間の電子遷移(S1–S0遷移)は結合の伸縮を伴う。その結果,発光スペクトルは伸縮振動との振電相互作用に応じたバンド幅を持つ。例えば,ピレンに代表される多環芳香族炭化水素類は高い蛍光量子収率を示すため,その誘導体が有機ELディスプレイの青色発光材料として用いられてきたが,剛直な分子骨格にも関わらず半値幅40 nm前後の幅広な発光スペクトルを示す。これは,純粋なRGB発光が必要なディスプレイ光源として大きな弱点となってきた。これに対し畠山氏は,ホウ素と窒素の多重共鳴効果により,HOMOとLUMOを隣接する炭素に交互に局在化させることで,伸縮振動を完全に抑制した狭帯域発光を実現した。その中でも,2016年に開発された「DABNA」4は,半値幅25–30 nmの狭帯域青色発光に加えて,100%近い蛍光量子収率と安定性を兼ね備えていることから,国内外の企業で様々な誘導体が開発•実用されており,スマートフォンやテレビの性能向上に貢献している。また,2019年には,無機発光材料をも凌駕する超狭帯域発光と優れた熱活性化遅延蛍光(TADF)特性を示す「ν-DABNA」5の開発に成功している。

関連文献

  1. Hatakeyama, T.; Hashimoto, S.; Seki, S.; Nakamura, M. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 18614–18617. DOI:10.1021/ja208950c
  2. Hatakeyama, T.; Hashimoto, S.; Nakamura, M. Org. Lett. 2011, 13, 2130–2133. DOI:10.1021/ol200571s
  3. Review: S.; Hatakeyama, T. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, 94, 950–960. DOI:10.1246/bcsj.20200372
  4. Hatakeyama, T.; Shiren, K.; Nakajima, K.; Nomura, S.; Nakatsuka, S.; Ni, J.; Ono, Y.; Ikuta, T. Adv.  Mater .2016, 28, 2777–2781. DOI:10.1002/adma.201505491
  5. Kondo, Y.; Yoshiura, K.; Kitera, S.; Nishi, H.; Oda, S.; Gotoh, H.; Sasada, Y.; Yanai, M.; Hatakeyama, T. Nat. Photonics 2019, 13, 678–682. DOI:10.1038/s41566-019-0476-5

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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