生越 友樹(おごし ともき, 1976年5月)は、日本の有機・高分子・超分子化学者である。京都大学教授。
京都大学の中條善樹教授のもと、有機無機ハイブリッド材料の研究により博士号を取得し、学振PDとして大阪大学 原田明先生のもとでシクロデキストリンを用いたホスト-ゲスト材料化学の研究に従事されました。その後、金沢大学の中本・山岸研究室の助手として着任し、2008年、ピラーアレーン合成の論文を発表され、世界中の超分子研究者から注目されるようになりました。中本・山岸研究室の助教、准教授を経て2015年には金沢大学で教授に昇進されました。2019年に京都大学教授として移られ現在に至っております。
2009年 高分子研究奨励賞(高分子学会)、2012年 進歩賞(日本化学会)、2014年 科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞(文部科学省)、2020年 日本学術振興会賞(日本学術振興会)など、数々の賞を受賞されています。
また、生越 友樹先生には、第14回 ケムステバーチャルシンポジウム「スーパー超分子ワールド」でご講演いただきますので、興味のある方はご登録のほどお願いいたします!!
経歴
1995年3月 愛知県立岡崎北高等学校卒業
1996年4月 京都大学工学部工業化学科入学
2000年3月 京都大学工学部工業化学科卒業 指導教官:中條善樹教授
2000年4月 京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻修士課程入学
2002年3月 京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻修士課程修了 指導教官:中條善樹教授
2002年4月 京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻博士後期課程入学
2005年3月 京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻博士後期課程修了(学位:博士(工学))指導教官:中條善樹教授
2002年4月-2005年3月 日本学術振興会特別研究員(DC1) 京都大学大学院 工学研究科 高分子化学専攻(中條善樹教授)
2005年4月-2006年10月 日本学術振興会特別研究員(PD) 大阪大学大学院 理学研究科 高分子科学専攻(原田明教授)
2006年11月-2007年3月 金沢大学大学院自然科学研究科物質工学専攻 助手
2007年4月-2008年3月 金沢大学大学院自然科学研究科物質工学専攻 助教
2008年4月-2010年2月 金沢大学理工研究域物質化学系 助教
2010年3月-2015年7月 金沢大学理工研究域物質化学系 准教授
2013年10月-2017年3月 JST さきがけ「超空間制御と革新的機能創成」研究領域
(早稲田大学 黒田一幸総括)さきがけ研究者(兼任)
2015年8月-2017年9月 金沢大学理工研究域物質化学系 教授
2017年5月-2018年1月 オランダ アムステルダム大学客員教授
2017年10月-2019年2月 金沢大学新学術創成研究機構ナノ生命科学研究所 教授
2019年3月- 京都大学大学院工学研究科 合成・生物化学専攻 教授
2019年7月- 金沢大学新学術創成研究機構ナノ生命科学研究所 特任教授(クロスアポイントメント)
受賞歴
2008年 優秀講演賞(学術) 日本化学会第88回春季年会(日本化学会)
2009年 第23回若い世代の特別講演会証 日本化学会第89回春季年会(日本化学会)
2009年 平成20年度高分子研究奨励賞(高分子学会)
2010年 平成22年ヤングサイエンティスト講演賞(高分子学会関西支部)
2011年 HGCS Japan Award of Excellence 2010(ホスト-ゲスト・超分子化学研究会)
2012年 第61回進歩賞(日本化学会)
2013年 2013 Cram Lehn Pedersen Prize in Supramolecular Chemistry International Symposium on Macrocyclic and Supramolecular Chemistry (王立化学会RSC)
2014年 平成26年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞(文部科学省)
2015年 2014年Polymer Journal論文賞-日本ゼオン賞(高分子学会)
2016年 平成28年度(第12回) 野副記念奨励賞 (基礎有機化学会)
2016年 Banyu Chemist Award(BCA)2016(公益財団法人 MSD生命科学財団)
2017年 Lectureship Award MBLA 2016(公益財団法人 MSD生命科学財団)
2019年 金沢大学功労表彰(国立大学法人金沢大学)
2019年 花王科学賞<化学・物理学分野>(公益財団法人 花王芸術・科学財団)
2020年 第17回(令和2(2020)年度)日本学術振興会賞(日本学術振興会)
研究業績
日本発のホスト分子:ピラーアレーンの開発
ベンゼン環をパラ位でメチレンを介して環状にした分子であるピラーアレーンを開発しました。環状分子は、クラウンエーテル、カリックスアレーン、シクロデキストリン、など様々に有名なものが存在しますが、生越先生の開発されたピラーアレーン類も現在世界中の研究者に利用されるものになっており、800報を超える論文が報告されています。
他の環状分子と比較しても、ピラーアレーン分子には優れた特徴があります。ベンゼン環が直立した3次元的立体構造や、高い構造対称性と剛直性のため、溶液中の1:1のホストゲストケミストリーだけではなく、ピラーアレーン分子を高秩序に集合化させた分子集合状態の形成が可能なこと、その状態での機能発現が可能なことが挙げられます。また、水酸基を介して様々な官能基の導入が可能である。クラウンエーテルやカリックスアレーンは柔軟な構造をしており、シクロデキストリンは3次元で剛直な立体構造を有するものの構造対称性は低く、選択的な官能基導入が困難です。ククルビットウリルも3次元で剛直な立体構造を持ちますが、官能基導入が困難です。ピラーアレーン分子は既存の環状分子を凌駕する、もしくは相補的な性質を持ちます。
名言集
- 「ちょっと考えてすぐに思いつくようなアイディアは、2年待ったら他から論文が出てくる。真にオリジナルなアイディアが必要。」
(このような発想が、ピラーアレーンをホストゲスト化学のみならず分子集合体系へと発展させたものと思われます。)
コメント&その他
関連動画
関連文献
[1] Ogoshi, T.; Kanai, S.; Fujinami, S.; Yamagishi, T.; Nakamoto, Y. para-Bridged Symmetrical Pillar[5]arenes: Their Lewis Acid-Catalyzed Synthesis and Host-Guest Property, J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 5022–5023. DOI: 10.1021/ja711260m.
最近の総説(2015年までの総説は過去のケムステーション記事(こちら)か生越先生のHPを参照ください)
[1] Ogoshi, T.; Yamagishi, T.; Nakamoto, Y. Pillar-Shaped Macrocyclic Hosts Pillar[n]arenes: New Key Players for Supramolecular Chemistry. Chem. Rev. 2016, 116, 7937-8002. DOI: 10.1021/acs.chemrev.5b00765 [2] Kakuta, T.; Yamagishi, T. ; Ogoshi, T. “Supramolecular Chemistry of Pillar[n]arenes Functionalised by Copper(I)-Catalysed Alkyne-Azide Cycloaddition “Click” Reaction. Chem. Commun. 2017, 53, 5250-5266. DOI: 10.1039/C7CC01833A [3] Murray, J.; Kim, K.; Ogoshi, T.; Yao. W.; Gibb. B. C. The Aqueous Supramolecular Chemistry of Cucurbiturils, Pillar[n]arenes and Deep-Cavity Cavitands. Chem. Soc. Rev. 2017. 46, 2479-2496. DOI: 10.1039/C7CS00095B [4] Song, N.; Kakuta, T.; Yamagishi, T.; Yang, Y. W.*; Ogoshi, T. “Molecular-Scale Porous Materials Based on Pillar[n]arenes” Chem, 2018, 4, 2029–2053. DOI: 10.1016/j.chempr.2018.05.015[5] Kakuta, T.; Yamagishi, T.; Ogoshi, T. “Stimuli-Responsive Supramolecular Assemblies Constructed from Pillar[n]arenes” Acc. Chem. Res. 2018, 51, 1656–1666. DOI: 10.1021/acs.accounts.8b00157 [6] Fa, S.; Kakuta, T.; Yamagishi, T.; Ogoshi, T. Conformation and Planar Chirality of Pillar[n]arenes. Chem. Lett., 2019, 48, 1278-1287. DOI: 10.1246/cl.190544 [7] Ogoshi, T.*; Kakuta, T.; Yamagishi, T. “Applications of Pillar[n]arene-Based Supramolecular Assemblies” Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 2197–2206. DOI: 10.1002/anie.201805884
[8] Fa, S.; Kakuta, T.; Yamagishi, T.; Ogoshi, T. “One-, Two-, and Three-Dimensional Supramolecular Assemblies Based on Tubular and Regular Polygonal Structures of Pillar[n]arenes” CCS Chem. 2019, 1, 50–63. DOI:10.31635/ccschem.019.20180014
関連書籍
Ogoshi, T.*; Kakuta, T.; Yamagishi, T.
“Pillar[n]arenes: Synthesis, Structure, and Applications”
In “Encyclopedia of Polymer Science and Technology”, Wiley, DOI: 10.1002/0471440264.pst649 (2016).
Pillararenes (Ed.: T. Ogoshi), The Royal Society of Chemistry (Monographs in Supramolecular Chemistry), Cambridge, 2016
http://pubs.rsc.org/bookshop/collections/series?issn=1368-8642
DOI: 10.1039/9781782622321
など他多数。