陰山 洋(KAGEYAMA Hiroshi, 1969年4月16日 – )は、日本の固体化学者である。低温合成法を利用した独自の複合アニオン材料の創成などで顕著な業績を挙げている。2021年現在、京都大学 教授。
経歴
1993 京都大学理学部(化学教室)卒業
1995 京都大学大学院理学研究科化学専攻修士課程 修了
1998 京都大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程修了,博士(理学)
1998 東京大学物性研究所・助手
2003京都大学大学院理学研究科化学専攻・助教授
2007 京都大学大学院理学研究科化学専攻・准教授
2010 京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻・教授
京都大学物質-細胞統合システム拠点・連携教授
受賞歴
2001年 井上研究奨励賞
2005年 JPSJ注目論文賞
2007年 平成19年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞
2007年 JPSJ注目論文賞
2007年 第1回日本物理学会若手研究奨励賞
2008年 第13回日本物理学会論文賞
2010年 粉体粉末冶金協会 研究進歩賞
2012年 JPSJ注目論文賞
2013年 平成24年度大阪スマートエネルギービジネスコンペ 最優秀賞
2013年 19th International Conference on Solid State Ionics 最優秀ポスター賞
2014年 第10回日本学術振興会賞
2016年 粉体粉末冶金協会 研究進歩賞
2017年 第34回日本化学会学術賞
2019年 第35回井上学術賞
研究業績
厳密な基底状態をもつ2次元量子スピン系の発見
Shastry-Sutherlandが1981年に理論的に考察した厳密なスピン1重項基底状態をもつモデルを実現する銅酸化物SrCu2(BO3)2を発見した [1]。また、量子化された磁化プラトーなど様々な量子現象を見出した [2]。
平面4配位をもつ鉄酸化物の合成
低温トポケミカル反応をもちいてペロブスカイト酸化物SrFeO3を平面4配位をもつSrFeO2に変換することに成功した [3]。4配位の金属ではじめてスピン転移を見出した [4]。
複合アニオン化合物の創製と機能開拓
低温トポケミカル反応によって強誘電体としてしられるチタン酸水素化物BaTiO3を酸水素化物BaTiO2.4H0.6に変換、ヒドリドの反応性・拡散性を示した [5]。その活性に着目したアニオン交換反応を提唱 [6]や触媒機能を開拓した [7]。ヒドリド(H–)の新しい性質として高い圧縮率を発見し [8]、その特色を活かした革新的な固体電解質の開発 [9]も行っている。この他にも、重金属の選択的吸収 [10]、安定な可視光応答性のある酸塩化物光触媒の発見 [11]、応力を利用したアニオン欠損の制御法の提唱 [12]、など複合アニオン化合物の研究の世界の第一人者であり、世界初のレビュー論文 [13] も執筆している。
名言集
コメント&その他
関連動画
関連文献
- H. Kageyama et al., Phys. Rev. Lett. 82, 3168-3171 (1999). DOI: 10.1103/PhysRevLett.82.3168
- K. Kodama et al., Science 298, 395-399 (2002). DOI: 10.1126/science.1075045
- Y. Tsujimoto et al., Nature 450, 1062-1065 (2007). DOI: 10.1038/nature06382
- T. Kawakami et al., Nat. Chem. 1, 371-376 (2009). DOI: 10.1038/nchem.289
- Y. Kobayashi et al., Nat. Mater. 11, 507-511 (2012). DOI: 10.1038/nmat3302
- T. Yajima et al., Nat. Chem. 7, 1017-1023 (2015). DOI: 10.1038/NCHEM.2370
- Y. Kobayashi et al., J. Am. Chem. Soc. 137, 15315-15321 (2015). DOI: 10.1021/jacs.5b10255
- T. Yamamoto et al., Nat. Commun. 8, 1217 (2017). DOI: 10.1038/s41467-017-01301-0
- G. Shenghan et al., Nat. Commun. 12, 201 (2021). DOI: 10.1038/s41467-020-20370-2
- T. Yajima et al., Nat. Commun. 7, 13809 (2016). DOI: 10.1038/ncomms13809
- H. Fujito et al., J. Am. Chem. Soc. 138, 2082-2085 (2016). DOI: 10.1021/jacs.5b11191
- T. Yamamoto et al., Nat. Commun. 11, 5923 (2020). DOI: 10.1038/s41467-020-19217-7
- H. Kageyama et al., Nat. Commun. 9, 772 (2018). DOI: 10.1038/s41467-018-02838-4