谷野圭持 (たにのけいじ)は、日本の有機化学者である。北海道大学大学院理学研究院化学部門 教授。
経歴
1981年 3月 神奈川県立横浜緑ヶ丘高校 卒業
1985年 3月 東京工業大学 理学部 卒業
1987年 3月 東京工業大学 大学院理工学研究科 修士課程 修了
1989年 5月 東京工業大学 大学院理工学研究科 博士課程 中退
1989年 6月 東京工業大学 理学部 助手(桑嶋 功 教授)
1994年 6月 学位取得 博士(理学)(東京工業大学)
1998年11月 北海道大学 大学院理学研究科 助手(宮下 正昭 教授)
1999年 8月 北海道大学 大学院理学研究科 助教授
2006年 4月 北海道大学 大学院理学研究院 教授(現職)
受賞歴
2000年 有機合成化学奨励賞
2007年 Mukaiyama Award(有機合成化学協会)
2011年 名古屋シルバーメダル
2013年 日本化学会 学術賞
2013年 北海道大学研究総長賞
研究業績
有機金属および遷移金属錯体を用いた新奇反応開発、天然物の全合成
構造的なユニークさに加えて、天然からの十分な供給が困難で、薬理学的研究や構造活性相関研究が立ち遅れていたこれら生物活性天然物の全合成を独自に開発した有機合成方法論を基軸に達成している。
スナギンチャクから単離・構造決定された多くの連続不斉炭素を有し、高度に縮環された骨格特徴とするノルゾアンタミン。新規作用機序の骨粗鬆症治療薬のリード化合物として期待されている[1] (化学者のつぶやき: ノルゾアンタミンの全合成)。
ジャガイモの水耕栽培液から単離・構造決定された6-5縮環骨格上の架橋した4員環と高度に酸素化された7員環を特徴とするソラノエクレピンA。収穫に深刻な影響を与えるジャガイモシストセンチュウの根絶に寄与することが期待されている[2] (身のまわりの分子: ソラノエクレピンA (solanoeclepin A))。
多数の不斉点と高い反応性官能基がトランス縮環型シクロペンタン骨格に密集した海洋性アルカロイドであるパラウアミンの2例目の全合成を報告している[3] (ケムステスポットライトリサーチ: 海洋天然物パラウアミンの全合成)。
放射性病原菌Nocardia brasiliensisの培養液から単離・構造決定されたAnti-syn-antiに縮環した三環性ジテルペノイドにアミノ酸と糖が結合したハイブリッド分子バラシルカルジン。既存薬とは異なる機序で免疫抑制作用を示すことが示唆されていて、医薬品候補化合物として期待されている[4] (化学者のつぶやき: 3回の分子内共役付加が導くブラシリカルジンの網羅的全合成)。
名言集
コメント&その他
関連動画
関連文献
- Miyashita, M.; Sasaki, M.; Hattori, I.; Sakai, M. Tanino, K. Science 2004, 305, 495-499. DOI: 10.1126/science.1098851
- Tanino, K.; Takahashi, M.; Tomata, Y.; Tokura, H.; Uehara, T.; Narabu, T.; Miyashita, M. Nat. Chem. 2011, 3, 484-488. DOI: 10.1038/nchem.1044
- (a)Namba, K.; Takeuchi, K.; Kaihara, Y.; Oda, M.; Nakayama A.; Nakayama, A.; Yoshida, M.; Tanino, K. Nat. Commun. 2015, 6 Article number: 8731. DOI: 10.1038/ncomms9731 (b) Namba, K.; Kaihara Y.; Yamamoto, H.; Imagawa, H.; Tanino, K.; Williams, R. W.; Nishizawa, M. Chem. Eur. J. 2009, 15-6560-6563. DOI: 10.1002/chem.200900622
- Yoshimura, F.; Itoh, R.; Torizuka, K.; Mori, G.; Tanino, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 17161-17167. DOI: 10.1002/ange.201811403
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