[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

下嶋 敦 Shimojima Atsushi

[スポンサーリンク]

下嶋 敦(Shimojima Atsushi, 1973年 – )は、日本の化学者である。専門は無機合成化学。2020年現在、早稲田大学理工学術院 教授。

経歴

1995年 早稲田大学 理工学部 応用化学科 卒業
1997年 早稲田大学大学院 理工学研究科 応用化学専攻 修士課程修了
1997年-1999年 昭和電工株式会社 総合研究所 研究員
2002年 早稲田大学大学院 理工学研究科 応用化学専攻 博士後期課程修了 博士(工学)(黒田一幸教授)
2002年-2005年 日本学術振興会 特別研究員PD
この間、カリフォルニア大学サンタバーバラ校訪問研究員 (Prof. Galen D. Stucky)
2005年-2006年 CREST研究員(代表者:黒田一幸教授)
2006年 東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻 助手
2007年 同 助教
2008年 同 准教授
2013年 早稲田大学 理工学術院(先進理工学部 応用化学科)准教授
2017年 同 教授

受賞歴

2006年 日本セラミックス協会進歩賞

研究業績

シロキサン(Si–O–Si)系無機材料の開発と機能性の開拓

シロキサン(Si–O–Si)系を中心とする無機ナノ材料、無機–有機ナノ複合材料の合成研究を展開している。環境、エネルギー、医療など幅広い分野への応用が期待されるナノ多孔性材料を主要なターゲットとし、分子設計されたシラン/シロキサン化合物の精密な反応制御や自己組織化プロセスにより新しい多孔性材料の合成を数多く報告している1-6)。最近では、以下に示すような分子〜ナノレベルの構造制御に基づく新たな機能開拓にも取り組んでいる7-9)。

1. 自己修復機能
ガラスやセラミックスなどの無機材料の修復には一般に高温を必要とするが、シリカ源と界面活性剤の自己組織化によって形成されるラメラ構造の薄膜が温和な条件下でクラック修復能を発現することを見いだし、保護コーティング等への応用可能性を拓いた(下図)7)。

2. フォトメカニカル機能
アゾベンゼンやジアリールエテンで修飾されたケイ素アルコキシドやシロキサンオリゴマーを分子設計し、自己組織化によって配列制御することで、光によって形や構造が変化する有機シロキサン系フォトメカニカル材料を創製した(下図)8,9)。無機骨格を有するため、従来の有機材料と比較して耐熱性の向上や機械的特性の幅広い制御が可能であり、光駆動アクチュエータなどへの応用に貢献すると期待される。

名言集

コメント&その他

関連動画

関連文献

[代表的な論文]
  1. Shimojima, K. Kuroda, “Alkoxy- and Silanol-Functionalized Cage-Type Oligosiloxanes as Molecular Building Blocks to Construct Nanoporous Materials”, Molecules, 25, 524–534 (2020). (Review) DOI: 10.3390/molecules25030524
  2. Saito, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, “Synthesis of Zeolitic Macrocycles Using Site-Selective Condensation of Regioselectively Difunctionalized Cubic Siloxanes”, Inorg. Chem., 57, 14686–14691 (2018). DOI: 10.1021/acs.inorgchem.8b02402
  3. Sato, Y. Kuroda, H. Wada, A. Shimojima, K. Kuroda, “Preparation of Siloxane‐based Microporous Crystal from Hydrogen Bonded Molecular Crystal of Cage Siloxane”, Chem. Eur. J., 24, 17033–17038 (2018). DOI: 10.1002/chem.201804441
  4. Wada, K. Iyoki, A. Sugawara-Narutaki, T. Okubo, A. Shimojima, “Diol-Linked Microporous Networks of Cubic Siloxane Cages”, Chem. Eur. J., 19, 1700–1705 (2013). DOI: 10.1002/chem.201202883
  5. Koike, T. Ikuno, T. Okubo, A. Shimojima, “Synthesis of Monodisperse Organosilica Nanoparticles with Hollow Interiors and Porous Shells Using Silica Nanospheres as Templates”, Chem. Commun., 49, 4998–5000 (2013). DOI: 10.1039/C3CC41904E
  6. Shimojima, Z. Liu, T. Ohsuna, O. Terasaki, K. Kuroda, “Self-Assembly of Designed Oligomeric Siloxanes with Alkyl Chains into Silica-Based Hybrid Mesostructures”, J. Am. Chem. Soc., 127, 14108–14116 (2005). DOI: 10.1021/ja0541736
  7. Itoh, S. Kodama, M. Kobayashi, S. Hara, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, “Spontaneous Crack Healing in Nanostructured Silica-Based Thin Films”, ACS Nano, 11, 10289–10294 (2017). DOI: 10.1021/acsnano.7b04981
  8. Guo, K. Matsukawa, T. Miyata, T. Okubo, K. Kuroda, A. Shimojima, “Photoinduced Bending of Self-Assembled Azobenzene–Siloxane Hybrid”, J. Am. Chem. Soc., 137, 15434–15440 (2015). DOI: 10.1021/jacs.5b06172
  9. Kajiya, S. Sakakibara, H. Ikawa, K. Higashiguchi, K. Matsuda, H. Wada, K. Kuroda, A. Shimojima, “Inorganic–Organic Hybrid Photomechanical Crystals Consisting of Diarylethenes and Cage Siloxanes”, Chem. Mater., 31, 9372–9378 (2019). DOI: 10.1021/acs.chemmater.9b02941

関連書籍

関連リンク

spectol21

投稿者の記事一覧

ニューヨークでポスドクやってました。今は旧帝大JKJ。専門は超高速レーザー分光で、分子集合体の電子ダイナミクスや、有機固体と無機固体の境界、化学反応の実時間観測に特に興味を持っています。

関連記事

  1. フランク・グローリアス Frank Glorius
  2. フレデリック・キッピング Frederic Stanley Ki…
  3. クレイグ・クルーズ Craig M. Crews
  4. ラッセル・コックス Rusesl J. Cox
  5. リヒャルト・エルンスト Richard R. Ernst
  6. ジャック・ドゥボシェ Jacques Dubochet
  7. 日本学術振興会賞受賞者一覧
  8. ウィリアム L ジョーゲンセン William L. Jorge…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ジョージ・チャーチ George M. Church
  2. 1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリニウムクロリド:1,3-Bis(2,4,6-trimethylphenyl)imidazolinium Chloride
  3. オリンピセン (olympicene)
  4. リチウムイオン電池の特許動向から見た今後の開発と展望【終了】
  5. 十全化学株式会社ってどんな会社?
  6. 芳香族化合物のC–Hシリル化反応:第三の手法
  7. ヒュッケル法(後編)~Excelでフラーレンの電子構造を予測してみた!~
  8. 理研:23日に一般公開、「実験ジャー」も登場--和光 /埼玉
  9. 【インドCLIP】製薬3社 抗エイズ薬後発品で米から認可
  10. アトムエコノミー Atom Economy

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP